「泣きながら予約したけど初診は3カ月後」希死念慮があっても…精神科の“初診の壁”に翻弄される患者と「解決策」

精神的な不調を抱える人が頼るはずの精神科で、「初診は3カ月先」「新規の患者は受け入れていない」といった状況が広がっている。
3年ほど前にうつ病を発症した荻野さんは、自ら病院を探したものの、新規患者の受け入れを断られることが多かったという。「私が電話したのは5件ぐらい。早くて2週間先、長いと3カ月先という病院もあった」と振り返る。SNS上でも「泣きながら予約したけど初診は3カ月後と言われた」「新規の患者は受け付けてくれなかった」といった声が相次いでいる。
『ABEMA Prime』では、精神科の予約が取りづらい背景や、診療体制のあり方について考えた。
■「たまたま当日キャンセルがあった」偶然に救われた体験

夫がうつ病になり、精神科の予約を取ろうとした経験を持つichiさんは、当時の状況をこう説明する。「2人目の出産後、夫が育休から仕事復帰するとき、まず体の不調が出た。その後、気分の落ち込みや睡眠の問題、さらに死にたい・消えたいという希死念慮が出た」。
そこで、予約を受け付けている病院に電話するも、「『3カ月待ちだが大丈夫か』と言われた。病状を伝えて、『希死念慮があるので早く受診したい』と伝えたら、『それなら1カ月後』と言われた」。
ひとまず1カ月後の予約を取ったが、それまで待てないと判断し、数日後に再度電話をかけたという。「ダメ元で『早められないか』と聞いたところ、偶然その日にキャンセルが出て、『今日だったら受けられる』と診察してもらえた」と語る。
ichiさんは、住んでいる地域では新規予約を受け付けている病院自体が少なかったと明かす。
■電話とネット予約、対面とオンライン診療の違い

府中こころ診療所の院長で精神科医の春日雄一郎氏は、「精神科の役割は2つある。1つは重症になるのを防ぐ予防。もう1つは重症になったときの対応。これは分けて考えたほうがいい」と説明する。重症の場合は精神科救急のルートがあり、東京都では「東京都保健医療情報センター(ひまわり)」などの相談窓口もあるが、あまり知られていないという。
初診が取りづらい理由については、「初診は最低30分という長めの枠が必要になる。再診の患者がすでに多い場合、枠がないこともある。うつ病だと経過が1年、2年かかることも当然にある」と述べる。
予約の手段についても課題がある。春日氏は「電話には弱点があって、切迫していてもなかなか伝わらず、疲弊して終わってしまう場合もある。最近はネット予約もあり、東京などでは比較的早く予約を取れることが多くなっているが、その場合は切迫感が伝えにくい。どちらも一長一短だ」と話す。オンライン診療についても、「対面でないと伝わらない場合もある」と指摘した。
■「精神科医でなくてもできること」の認知が必要

コラムニストの小原ブラス氏は、「日本では精神科と心理師の違いがあまり知られていない。本当は心理師でできるようなものも、よくわからないから精神科に相談するというケースが多いのではないか。素人に切り分けをさせてしまっている状況に問題がある」と指摘する。
コラムニストの河崎環氏も「投薬レベルであれば精神科医でなければできないが、その前段階で相談ができるということが周知徹底されていない。10代の子のちょっとした悩みや、更年期の相談を、いきなり精神科医にする必要はないということを、意外と知らない」と語る。
ichiさんは「私自身も心理師として働いているが、職種全体がもっとハードルを低く、身近な立ち位置として頑張っていかないといけない。重症になる前につながれるところが、公に安心して数多くあるといい」と提言する。
夫の体調が悪化していく中で、心理師でありながらも精神科に予約すべきか迷ったといい、「その状況が客観的にどうなのかを相談できる機会があれば、もう少し早く回復できたかもしれない」と振り返った。
春日氏は最後に、「クリニックにおいては、“動ける精神科”を意識している。初診枠を少しでも取れないか、人を雇用することも含めて考えている。学校ではスクールカウンセラーがいるが、案外知られていない。相談できる人はいるということを知っておいてもらえたら」と呼びかけた。
(『ABEMA Prime』より)
