「道幅が狭かったので左側ギリギリまで寄せてから、ハザードランプをつけて車を停めました。すると相手は追い越す際に横に並んで怒鳴り散らしてきたんです」

 そのとき、目を覚ました友人がゆっくりと上半身を起こした。そして、隣の車の運転手をぎょろ目で一瞥してから低いガラガラ声で一言。

「なんやワレ!」

 かわいい軽自動車の中から、突然に身を起こした“おっかない関西人”みたいな男性の一言に、今まで大声で喚いていた運転手の顔が青ざめていったのだとか。

「“やっ、やばい……”と顔に書いてあるようで、一瞬での変化に笑いそうになりました。友人が窓を開けようとした途端に、あおり運転の車はタイヤを鳴らして急発進していきました」

 運転手はよほど慌てたのか、右側の縁石に乗り上げ、植え込みのつつじに突っ込んだそうだ。そして、土煙を上げながら走り去ったという。

「この出来事をきっかけに、奥様は車で出かけるときには、友人を助手席に乗せていくことにしたみたいです」

<取材・文/chimi86>

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◆■もしあおり運転に遭ったら

今回の遠山さんのエピソードは、たまたま“おっかない関西人”に見える友人が同乗していたおかげで、大事に至らずに済みました。ただ、これは決して推奨できる対処法ではありません。

警察庁は「危険!『あおり運転』はやめましょう」と題したページで、あおり運転を受けた場合の対応を明確に示しています。サービスエリアやパーキングエリアなど交通事故に遭わない場所に避難すること、車外に出ないこと、そしてためらわずに110番通報すること。加えて、ドライブレコーダーの装着も、悪質・危険な運転の抑止に有効だと呼びかけられています。

◆■軽自動車は「生活の足」

改めて数字を見てみると、軽四輪車は全国で3,227万台が保有され、国内の自動車保有台数のおよそ4割を占めています。全国軽自動車協会連合会の集計(令和7年12月末現在)では、100世帯あたりの普及台数は長野県が104.5台で7年連続の全国1位。鳥取、島根、佐賀を含めた4県が「1世帯に1台以上」に達しています。一方、東京都はわずか12.2台。地域差は8倍以上です。日本自動車工業会の調査でも、人口密度の低い地域を中心に約8割が「軽から普通自動車に変えると不都合がある」と答えており、地方にとっては暮らしの必需品であることがうかがえます。

そして、そのハンドルを握っているのは、64%が女性。買い物、送り迎え、通勤--日常のあらゆる場面で、軽自動車は静かに走り続けています。

「軽だから舐めていい」も「関西弁だから怖い」も、どちらも運転席の中身とは関係のない思い込みにすぎません。ハンドルを握れば、そこにいるのはただの一人の人間。あおる側にとっても、あおられる側にとっても、忘れてはいけない当たり前のことなのかもしれません。

<再構成/日刊SPA!編集部>

【chimi86】
2016年よりライター活動を開始。出版社にて書籍コーディネーターなども経験。趣味は読書、ミュージカル、舞台鑑賞、スポーツ観戦、カフェ。