生身の人間につながらない…便利なはずの「デジタル化」の陰で悲鳴、高齢者や障害者を阻む「見えない壁」
行政手続きや企業サポートが次々とオンライン化・自動音声化される中、その便利さから取り残される人たちがいる。
「デジタルデバイド(情報格差)」について、弁護士ドットコムニュースが読者から体験談を募集したところ、多くの切実な声が寄せられた。
スマホやパソコンを使えることが「当たり前」になりつつある一方で、高齢者や障害者など、デジタル機器を使いこなすことが難しい人もいる。
効率化の陰で、必要な手続きやサービスから取り残される人たちの声を紹介する。
●「人間という選択肢がない」高齢者には高すぎる壁
特に目立ったのが、困ったときに「人間に聞く」という選択肢がなくなりつつあることへの戸惑いだ。
電話をかけても自動音声が流れ、ウェブサイトを見ても「よくある質問」しかない。トラブルを解決したくても、そもそも相談相手にたどり着けないという。
「父が亡くなり、85歳の母へライフラインの名義変更の手続きをしました。今はどこへの連絡も生身の人間につながることがまずありません。選択肢に人での対応がないのがあまりにも高齢者に不親切だと感じます」(神奈川県・60代女性)
「サービスセンターに電話すると、『該当する数字を押してください』と言われますよね。でも自分がどの位置で何が問題なのか判断できないから連絡しているわけです。電話の自動音声で困っていることへ働きかけもなく無慈悲に切られる」(東海地区・50代女性)
若い世代からも同様の不満が寄せられた。
「コールセンターがない。オペレーターに問い合わせられない。メール等のウェブ受付もない。よくある質問を見ろ、で終わってる」(大田区・10代女性)
●操作がわからず「支援金」を受け取れなかった
さらに深刻なのが、オンラインでの手続きが前提となったことで、本来受けられるはずだった行政サービスや支援からこぼれ落ちてしまうケースだ。
「手続きのオンライン化が進んでいるため、操作がわからず期限が切れ、受けられるはずだった支援金を受けられなかった。役所関係、子ども支援などの手続きは簡潔にしてもらいたい」(地域・年代・性別不明)
金銭的な支援だけではない。「参加したい」という気持ちがあっても、オンライン登録そのものが壁になることもある。
「大会のボランティア登録がすべてオンライン。登録方法がわからず、途中で断念した」(愛知県・50代女性)
本人ではなく、家族が代わりに手続きをしたという体験談も寄せられた。
「母方の祖父がコロナ禍でワクチン接種が必要になったとき、市の公式LINEから申し込みが必要だったため、スマホを持たない祖父の代わりに孫の私が申し込みをした」(関西・20代女性)
●画面が見えない、目的のページにたどり着けない
デジタル化の壁は、単に「操作に慣れていない」という問題だけではない。
視覚障害や加齢による視力の変化などによって、そもそも画面を見ることが難しい人もいる。
「視覚障害で画面が見えないので、お店のタッチパネルには苦労してます。クレジットカードやマイナ保険証でも、タッチパネルでの暗証番号が入力できなくて問題になることがあります」(東京都・29歳男性)
「若い頃から強度の近視と飛蚊症(ひぶんしょう)があり、数年前からはさらに老眼が重なり、パソコンやスマホの細かい字を見続けるのが負担です。スマホの使用を避けたい、使うのが難しい人はスルーされている感じがします。高齢者や障害者などスマホ操作が難しい人も困らないシステムが必須です」(京都市・50代女性)
紙からアプリへの移行によって、これまで簡単に確認できていた情報にたどり着くことさえ難しくなったという声もある。
「ペーパーレス化に伴い、カードの明細が携帯のアプリになり、目的の画面に到達するまでに非常に苦労します。操作中に変な広告が入ってきて、画面がどこかにいってしまいます。ここまでデジタル化されているから、詐欺などに騙されてしまう人が増えると思います」(愛知県・50代女性)
読者から集まった声から見えてくるのは、「使えない人」が例外として切り捨てられれば、必要な支援やサービスそのものにアクセスできなくなるという現実だ。
オンライン化や自動化を進める一方で、人による対応や別の手段も残しておく。年齢や障害の有無、デジタル機器への習熟度にかかわらず、必要なサービスにたどり着ける仕組みが求められている。
