『VIVANT』との明暗で探る『GTO』続編の真価 視聴率は苦戦も「若手発掘とIP活用」に見るテレビ局の試み
2026年夏ドラマの目玉である『VIVANT』と反町隆史主演『GTO』の続編。前者は勢いを見せる一方、後者は話題性・数値ともに苦戦が目立つ。28年ぶりの復活となった『GTO』が抱える時代ギャップや学園ドラマの壁とは? コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。
【写真】『GTO』の打ち上げに参加、当時と変わらない風貌の反町隆史と松嶋菜々子。他、肩に手を回しラブラブデートをする反町隆史と松嶋菜々子なども
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2026年夏ドラマ最大のトピックスと言えば"2つの大型続編"でしょう。放送前から『VIVANT』(TBS系、日曜21時)と反町隆史さん主演版『GTO』(カンテレ・フジテレビ系、月曜22時)の続編が注目を集めていました。
しかし、『VIVANT』が今年のドラマ最高の視聴率や歴代最高のTVer配信再生数を記録し、Xで4週連続世界トレンド1位を記録した一方、『GTO』は記録もSNSの動きも話題になることがあまりありません。
まったく違うジャンルであり、比較する必要性こそないものの、どちらも第1弾が成功を収めた作品であり、主演俳優と作品のコンセプトは変わっていないだけに、なぜここまで明暗が分かれているのか。その背景には連続ドラマ続編の成否を左右する2つのポイントがあります。
「28年間の変化」をどのように扱うか
1つ目の背景は前作終了からのブランク。『VIVANT』は2023年夏に放送されたため3年のブランクであり、番宣番組での振り返り、再放送や短縮版の動画配信などでフォローできるレベルでした。
一方、反町さん版の『GTO』は28年ぶりの連ドラ。同じジャンルで、同じ主演俳優が演じるドラマとしては、さすがに時間が空きすぎました。
その間、人々の価値観や世間のムードは変わり、主人公・鬼塚英吉(反町隆史)のキャラクターと生徒へのアプローチは賛否真っ二つ。子どものようにはしゃぎ、ストーカーのように生徒の問題にかかわっていく姿に、「変わってなくてうれしい」「やっぱり心に響く」と「時代に合わない」「ダメな大人に見える」という声に二分されています。
また、ブランクの28年間で学校を取り巻く状況が大きく変わり、「生徒の問題をどう描くか」という難しさが増しました。続編では、教師フィードバック制度やタブレットを見てばかりの生徒などの描写があるほか、各話のエピソードとしては不登校生徒への対応、クラスメイトへの恋、教師のセクハラ容疑、貧困家庭の退学問題が描かれています。
ただ、鬼塚のキャラクターを重視しているためか、生徒の問題や解決方法にリアリティを追求するようなムードはありません。前作との整合性を優先させたものの、長い時間が経過したことで「変えるべきところは変えなければいけない」というバランスの難しさがうかがえます。
一方、『VIVANT』の続編初回は"第11話"として放送されました。これは「前作の最終話に続く物語」という制作サイドからのメッセージであり、それができたのは豪華キャストと海外ロケが売りの作品であるにもかかわらず、3年で続編を実現させられたことが大きいのでしょう。
若年層より中高年に響く学園ドラマ
2つ目の背景は賛否の"賛"が28年前の前作を見た人にほぼ限られていること。40代以上には好意的な人がいる一方で、前作を見ていない30代以下は「自分とは関係のないドラマ」という見方に留まっている感があります。
もともと学園ドラマのメイン視聴者層は30代以下であり、だからこそ主に長期休みのある夏に放送されてきました。その30代以下は視聴率に直結するリアルタイム視聴より配信視聴の割合が高い世代ですが、第1話以降TVerの配信再生数が公表されず伏せられていることも苦戦を裏付ける形になっています。
では今なおリアルタイム視聴の割合が高い40代以上の人々はどうなのか。反町さん版の『GTO』と言えども、学園ドラマで40代以上の人々を集め続けるのは難しく、実際に視聴率は夏ドラマの中でも下位に低迷しています。つまり、見ている40代以上の人は高評価ながら、学園ドラマであることからその数は多くないということでしょう。
ここまであげてきた「前作終了からあまり期間を空けずに続編を放送できるか」「前作を見ていない下の世代を取り込めるか」の2点が連続ドラマ続編の成否を左右する前提条件であり、それが『GTO』続編の難しさにつながっています。
リアルにこだわった生徒役に注目
しかし、『GTO』続編が失敗作かと言えばそうではないでしょう。
過去のヒット作はテレビ局の財産であり、今まではそれを放置していましたが、今後はいかに活用していくかが求められています。IP(知的財産)ビジネスの観点で言えば、テレビ局の理想はオリジナルであることは間違いないでしょう。
ただ、『GTO』のような原作漫画のある作品は出版社との連携を深め、信頼関係を築き、次のビジネスにつながるなどのメリットがあります。たとえば前作の配信再生が伸びる、原作漫画が読んでもらえる、グッズが売れる。また、実際にドーナツやアパレルとの企業コラボやスペシャルイベント『1年B組大集合!みんなで作る真夏の学園祭~Great Time in Odaiba~』が開催されるなどの成果もありました。
そして『GTO』を語る上でもう1つ忘れてはいけないのが、生徒を演じる若きスター候補たち。
学園ドラマは視聴率確保のために、それなりの知名度がある20代の若手俳優を起用するのが定番でしたが、『GTO』は「15~17歳限定オーディション」を実施。リアルな高校生にこだわり、400人超の応募から28人が選ばれました。
しかもその中には、これまで子役として活躍してきた稲垣来泉さん、及川桃利さん、大島美優さん、柴崎楓雅さんらが含まれていることも注目のポイント。「教室のリアリティを表現しつつ、将来のスター候補が切磋琢磨する」という点で意欲的なキャスティングであり、ここからどれだけ主演俳優が誕生するのかを見届ける楽しみもあります。
これらの点で、視聴率や配信再生、Xの反響は期待されたほどではないかもしれませんが、それでも『GTO』続編は意義深い作品なのでしょう。脚本の遊川和彦さん、演出の中島悟さんら28年前から変わらないスタッフが中盤から終盤にかけてどんな策を用意しているのか。もしネット上をにぎわせるような斬新な展開やシーンがあれば、まだまだ風向きが変わる可能性はありそうです。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月30本前後のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』『どーも、NHK』などの批評番組に出演し、番組への情報提供も行っている。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。
