「健康な人に『血便があったら病院へ行って』と伝えたかった」闘病を続ける33歳女性が明かす“SNS発信のワケ”、誹謗中傷は「がん告知に比べたら大したことない」
7月23日、作家の東野圭吾さんが大腸がんで亡くなった。お笑いコンビ・ダウンタウンの松本人志さんも7月17日に大腸がんを公表。いまや、大腸がんは日本人にとっては非常に身近ながんだ。
【写真】現在33歳・ステージIVの大腸がんと闘う「寝り子」さん、抗がん剤のリアル、旅行の様子を投稿している
初期症状が少ないことも知られている。昨年、ステージIVの告知を受けた「寝り子」さん(33)は自らの経験を踏まえて、検査を受けることを呼びかけるべくYouTubeなどSNSでの活動を始めた。
最初の投稿から約1年を迎えた現在、どのような思いで日々の活動をしているのかインタビューした。【全3回の第2回。第1回から読む】
現在はYoutubeやTikTok、インスタグラムで多くの人に知られている寝り子さんだが、もともとSNS発信とは無縁の生活だった。SNSは情報収集のために見るだけで、インフルエンサーに憧れたこともなかった。
「私は本当に恥ずかしがり屋なんです。1人で動画を撮ると、恥ずかしくなって全然喋れないですし……」
そんな寝り子さんがYoutubeを始めたばかりだった昨年8月。公開された「見逃してしまったガンからの大事なサイン」と題された動画は700万回以上再生されている。
「最初は、自分みたいな思いをする人を1人でも減らしたい、本当にそう強く思ったんです。もっと言えば健康な人に『血便があったら病院へ行ってください』って伝えたかった」
また、"寂しさ"もあったと本音も吐露する。病院の待合室は家族で来ている人も多かった。当時32歳だった寝り子さんは独身。交際相手もいないタイミングでのがん告知だった。
「あの時は本当に絶望しました。もし、結婚していて子供がいたら『この子のために生きなきゃ』って思えたのかなとか、家庭をそれまでに持っていなかったことを後悔しなかったと言えば嘘になります。
ただ、それ以上になんというか、病気になって仕事もできなくなって、自分だけが社会から取り残されているような感覚がありました。同世代の人は、みんな働いて、恋愛して、普通に生活しているのに、自分だけ時間が止まってしまったような感じでした」
そして社会との接点を求めて始めたのがTikTokだった。
「何をすればいいのかも分からなくて、とりあえず写真を撮って投稿してみようって」
投稿を始めた頃は、勤務先の会社を休職中で復帰することも考えていたが、治療のことを考え最終的には退職を選んだ。
「働きたい気持ちは今もあります。でも抗がん剤を続けながら仕事をするのは、私には難しかったです。病気になる前も、仕事のストレスはあったと思うので、治療以外のストレスは抱えないようにしようと考えました。
ただ、仕事を辞めると社会とつながっていない感覚があるんです。主婦の方でも、家にいるとそういう気持ちになるって聞きますよね。私は結婚もしていないので、自分の居場所が仕事だったんだなって……」
しかし、ちょっとした思いつきで始めたSNSの投稿は瞬く間に拡散し、フォロワーも増えた。いつしかSNSは寝り子さんにとって職場に代わる新しい居場所になった。
「今は動画を出すことで、いろんな方と話したり、自分のことを知ってもらえたりするので、そのおかげで社会とつながっている感覚があります」
いまでは全国からメッセージが来るようになったという。「誰かの役に立てていると思えることが、すごくありがたいです」と寝り子さんは笑顔を浮かべた。
「印象的なメッセージはたくさんあります。例えばある20代の男性から『動画を見て、血便が出ていたので検査に行きました』とメッセージがきたんです。がんになる一歩手前のポリープが見つかったそうで、『早く取ることができて、本当に良かったです』って。嬉し泣きしました。ほかにも10代の子から『検査に行ってきます』って連絡をもらうこともありますし、私の父親世代の方から『受診しました』って報告ももらいました。どんなきっかけでもいいから病院へ行って早くに見つかったら、それが嬉しいです」
SNSの投稿についたコメントはすべて読んでいるという。
「嬉しかったメッセージはすべてスクショしていますよ。具合が悪い日にはそれを見返すんです。こんなに応援してくれる人がいるんだと、それだけで元気になれます。元気な時にも家族や周りの人に『こんなに褒めてもらったよ』とよく見せています。多分、スクショは1000枚以上あると思います(笑)」
メッセージの中には、同じようにがんの闘病生活をしている人も少なくない。
「同じステージIVの方からも連絡はたくさんきます。『もう何もできないと思っていた』とか『寝り子さんを見て、ちょっと旅行に行ってみようと思いました』とか。私は自分がやりたいことをやっているだけなんですけど、それを見て同じように『外へ出てみます』っていってくださる方がいることは本当にうれしくて」
一方で、SNSには誹謗中傷という負の側面もある。寝り子さんのアカウントも例外ではない。
「美人と書かれたコメントに『どこが?』とか、ラーメンなどを食べていることに対する批判もあります。でも、がんを告知されることに比べたら、誹謗中傷なんて全然大したことないです」と笑って言い退けた。
第3回では、SNSの投稿だけでは窺い知れない寝り子さんのリアルな生活と将来の目標について聞いた。
(第3回につづく)
