街は湖のように… 50年前の「まさか」の水害 背景には“バックウォーター現象” 身近に潜むリスクと対策とは?
住民が「まさか」と話す50年前の水害は、川の水が逆流する“バックウォーター現象”が引き起こしたものでした。このリスクに、どう備えていけばよいのでしょうか?
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1976年、愛知県愛西市に容赦なく流れ込んだ濁流。海抜ゼロメートル地帯にある街は、まるで湖のように…
(住民)
「自分のところは1階なので、手の施しようがない」
半世紀前、愛知県で起きた水害。同じメカニズムによる被害が、いま各地で…
身近に潜む、バックウォーター現象のリスクとは?
「まさか、こんな小さな川が…」
日本最大の“海抜ゼロメートル地帯”にある、愛知県愛西市。平坦な土地には日光川をはじめ9本の川が流れ、農業が盛んな地域です。のどかな光景を一変させたのが、日光川に流れ込む目比川(むくいがわ)。50年前、氾濫したのです。
(旧佐織町職員 服部大三さん)
「まさかですよね、こんな小さな川が」
旧佐織町の職員だった服部大三さん。あの日、堤防決壊の一報を受けて舟で近くに駆け付けました。
(旧佐織町職員 服部大三さん)
「取水口がある(決壊したのは)あの辺り前後。あの辺りが弱かったんでしょうね」
“バックウォーター現象”がもたらした堤防決壊
1976年9月、台風に刺激された前線による大雨で目比川の堤防が決壊。流れ込んだ濁流で、約1500棟が浸水しました。堤防決壊をもたらしたのは…
(名古屋大学 田代喬特任教授)
「いわゆる、バックウォーター現象。日光川という本流があって、本流の水位が高くなると支流(目比川)の水の行き場がなくなり水位が上がってしまい、堤防が土だったので水圧に耐え切れず決壊したのでは」
川の合流地点などで発生する、「バックウォーター現象」。川の色がハッキリ異なって見えることも。
行き場を失った水が引き起こす増水や堤防の決壊により、近年は各地で浸水被害が起きています。
濁流は胸の高さに… あの建物はいま
当時の映像には、舟を使っての救出活動が記録されていました。そこには「アオバ美容院」という名前の建物が…
(桜沢信司気象予報士)
「この写真の建物、コレじゃないですか?」
名鉄勝幡駅の近く、「アオバ美容院」は今、当時の建物の隣に。
(アオバ美容院 青山尚美さん)
Q.この写真の建物はアオバ美容院?
「そうです」
美容院を経営する、青山尚美さん(82)。決壊現場から1.5キロほど離れていても、一晩で胸の高さまで水が…
(アオバ美容院 青山尚美さん)
Q.入口の上に手が付いた?
「そうそう。ボートからね」
海抜ゼロメートル地帯の“ど真ん中”の水害で…
少し高くなったところが船着き場のようになり、青山さんも避難生活中は舟で行き来したと言います。
(アオバ美容院 青山尚美さん)
「2階から荷物を落としてボートの人に受けてもらって、私は下に降りてきてボートに乗って、向こう(少し高くなったところ)まで乗せてもらった。そんな思い出がある。初めての経験」
(名古屋大学 田代喬特任教授)
Q.この辺りまで低い土地が広がっているんですね
「日本で1番広い海抜ゼロメートル地帯のど真ん中。堤防が切れると川の水が一気に低い土地に広がる」
東海豪雨でも機能 “バックウォーター”対策
バックウォーター現象による被害をなくそうと、川の水を逆流させないための対策が。
合流地点につくられた施設の地下には、目比川の水を日光川に排水する巨大な送水管。川の水は普段自然に流れ下っていますが、大雨で増水するとポンプで日光川に排水します。その際、水門は閉められ水が逆流しないようになっています。
(名古屋大学 田代喬特任教授)
「バックウォーターの氾濫を防ぐ意味では、水門と排水機の組み合わせは非常に重要」
(愛西市 土木課 若山銀宏さん)
「東海豪雨の時ちょうど完成した時期で、動かしたと聞いている。幸いにも被害はなかったと認識している」
Q.機能したということ?
「そうですね」
目比川の氾濫は、50年前のあの日以来起きていません。町の中には、当時の水の高さを示す看板も残っていますが、市民の意識は…
(20代)
Q.目比川が氾濫したのは知っている?
「ちょっと分かんない」
(30代)
「最近大きな雨とか台風はあんまりないので、実感が湧かない」
水害から半世紀 リスクをどう伝える?
災害リスクをどう伝えていくかが、課題になっています。
(勝幡小学校 加藤祐子教頭)
「(資料に載っている写真は)この辺りからの写真ではないかと思います」
当時、避難所になりながらも浸水した勝幡小学校。7月、子どもたちに特別な教材を使って、防災の授業が行われました。
(アソビクリエイター 山根隆之介さん)
「防災バックパズルを開発した。実際にどういった災害グッズを入れて備えておけばいいのかを学べるパズルゲーム」
備えについて楽しく学ぶカードゲーム「防災バックパズル」。非常持ち出し袋の形をした9つのマスに、異なる大きさのアイテムをはめたうえで、アイテムによって加点される災害カードを引く。その合計点が高い人が勝ちというルールです。
実際にやってみると…
(アソビクリエイター 山根隆之介さん)
「桜沢さんの得点は27点」
Q.点数は高い方?
「低い方。(勝幡小学校の)ほとんどの生徒は30点超えていた」
突然の豪雨も… 「まさか」を繰り返さないために
ゲームを開発した山根さんは、目比川の対岸の地区出身。決壊の歴史も聞いて育ったと言います。
(アソビクリエイター 山根隆之介さん)
「自分ごととして捉えてほしくて、50年前だから関係ないとかいうことは一切なくて、きょう あす起こってもおかしくないということを、若い子を含めていろんな世代に伝えていけたら」
(勝幡小学校 加藤祐子教頭)
「(ゲームが)きっかけになって、『こういうものが必要だと分かった』と言っていて、お招きしてよかった」
想定外の豪雨が増える中、バックウォーター現象による被害がいつまた起きるかも分かりません。
(名古屋大学 田代喬特任教授)
「ハザードマップは重要だと思うが、土地に対して関心を持ってもらう。ハザードマップがもう少し生々しい、生き生きとした情報として私たちに語りかけてくれると思う。知ってもらった上で、備えに生かすのが大事」
50年前に起きた「まさか」の水害。「まさか」を繰り返さないために、個人が備えていくしかありません。
