■「10万円ケータイ」が飛ぶように売れる秘密

シニア・デザインマネージャーのSilas Grant氏は、10万円を越す高価格なプレミアム携帯「Nokia 8800 Sirocco」のデザインコンセプトの講演を行った。

Nokia 8800 Siroccoは大自然から端末のインスピレーションを受けており、アートをキーワードにしているという。携帯電話というデジタル製品に職人が手がけたような高級感を与えるためには、プレミアム感のある素材を利用することが重要だという。たとえば皮のように使い込むほどに味わいが出る素材も、その候補の一つだという。

8800 Siroccoは本体にステンレス素材を採用、ディスプレイ表面はミネラルグラスを使い傷がつきにくいという。また金属素材採用による重量感、スライドボディーを開け閉めするときの金属音、Brian Eno氏によるオリジナル着信音など「本物と認められる」「隅々までこだわりのある」端末に仕上げたという。パッケージや付属品なども高級感あるものになっており、価格に見合うだけの価値のある製品であることが、高い価格ながら世界中で高い人気を誇っている理由とのことだ。

Nokia 8800 Siroccoは大自然にインスピレーションを受けたという職人による工芸品〜素材や仕上げに妥協を許さないこだわりの製品が同社の考えるプレミアムモデルだ


■日本メーカーが見習う点

日本国内では海外メーカーの端末よりも日本メーカーの端末が常に売り上げのトップに位置づけされている。機能も高く使い勝手も良いから売れているというのが日本における定説だ。ではなぜこのような端末が海外では売れないのだろうか? 日本メーカーの端末が決して機能が劣っているわけではないはずだ。一方で販路が弱いという声も聞くが、では品切れとなるほど人気になるという話もあまり聞かれない。

「その国で求められている端末の要素とは何か?」、最初の講演で再三訴えられていたことが日本メーカーの海外での現状を表しているように感じられた。

たとえば現在、海外で発売されている日本メーカーの3G端末のいくつかは日本で発売されているものと全く同一のモデルだ。機能も高く製品としては見劣りのしないものが多い。しかし機能がいいというだけで、海外の発売国で高いシェアを取っているとは言いがたい。実際にその国で求められているニーズと微妙にずれている点が売り上げに結びついていないのではないだろうか?

ここ数年、海外の端末デザインは薄型やスライド式が流行になっている。そのような状況で折りたたみ式であり厚みのある端末は、たとえ性能がよくとも消費者は「所有したい」とは思わないだろう。また画面サイズが大きくとも、片手で簡単に開けられなくては操作感が悪いと感じられてしまうかもしれない。一方で単純に機能面を比べてみると、Windows Mobileなどのスマートフォンのほうが、高機能なのは事実だ。ちなみにスマートフォンは海外では10機種程度が常時発売されるなど、すでに一般的な商品になっている。携帯電話が音楽機能を売りにしても、音楽ファイルをOSレベルで自在に扱えるスマートフォンのほうが「多機能音楽携帯電話」として使い勝手は高いわけだ。

端末の質感という点でも、外装をメタリックにして高級感を出した日本メーカーの端末もある。しかし最近では8800 Siroccoのようなプレミアム携帯だけではなく、普及価格帯でもステンレスやアルミなど金属素材を多用し、重厚感のある端末も増えてきている。世界的にヒットしたMOTORAZRも今では手ごろな価格で買える金属携帯だ。仮に高級モデルを目指すならば、これらの端末と対等に渡り合えるだけの「本物素材」を採用することが必要となるだろう。中途半端に高級らしさを出すレベルでは、本物を知ってしまった消費者の琴線に触れることはできないということだ。

もちろん、日本と同じデザイン・性能で、海外でヒットした日本メーカーの製品もある。繰り返すが日本メーカーの製品が海外メーカーと比較して決して劣っているわけではない。日本メーカーが海外でシェアをあげるには、機能以前に海外のユーザーが何を求めているのか、その基本をより深く掘り下げる必要があるのではないか、ということである。

「海外はローエンド志向」「日本の端末は機能が高く、高価格だから売れにくい」と弁明されることがあるが、海外では8800 Siroccoのような高価格端末やスマートフォンを利用するユーザーの数も多いことをみれば、この言い訳は、すでに通用はしないだろう。

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山根康宏
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