50代の会社員です。定年以降は漠然と再雇用を考えていますが、今からどのようなことを準備すべきでしょうか?

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「定年後は再雇用で働きたいけれど、収入はどのぐらいになるのだろう」と、不安をもちながらもそのまま……という声をよく耳にします。あるいは、まだ関心が向かない方も少なくありません。   老後の資金プランの落とし穴ともいえる、再雇用期間の実情と備えについて確認していきます。

「自分の数字」を知っていますか?

再雇用制度は、会社ごとにその運用や報酬水準が異なり、また仕事内容により個別に決定することもあるため、制度の存在や規定は知っていても「自分」がいくらになるのか、直前まで分からないケースが多々あります。
50代半ばは役職定年を迎える方もおり、両方あわせて「60歳時点でどの程度の年収になりそうか」を、先輩の事例など情報収集し、手堅い金額で予想しておく心構えが必要でしょう。
なお、厚生労働省の調査では、基本給の時間単価が定年到達直前と比べて80%未満になる会社が約77%、50%未満は15.6%存在します(※1)。
また、50代後半になっても、自分の退職金の概算や、将来の老齢年金額を把握していない人が驚くほど多いのです。
退職給付金(退職一時金や企業年金)は、勤務先から発行される残高通知や確定拠出年金の運用会社の加入者画面、老齢年金は「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」でざっくりした老後の収入を確認・シミュレーションできます。
大切なのは、不安を抱えたまま定年を迎えるのではなく、すでに見えている再雇用という大きなライフイベントについて、可能な限り把握し、老後への影響を試算しておくことです。50代は、そのための準備を始めるのに十分間に合う時期といえます。

老後問題は5年早くやって来る

65歳から公的年金受給を予定する方には、60歳以降の再雇用期間の家計収支を、「成り行き」と「対策した」場合で事前に比較しておく必要があるでしょう。以下のケースで試算してみましょう。
 

【条件】

・59歳時点の年収:600万円(手取り額)
生活費等の支出:540万円
・再雇用時の年収:60歳到達直前の60%=360万円(手取り額)
→これまでの生活水準を継続する場合、年間180万円を預貯金等から取り崩すこととなる

180万円×5年間=900万円

現状の成り行きのままだと60歳時点で支給される退職金あるいは、預貯金など老後用の資金900万円が「老後前」に消えていく計算になります。
再雇用されるから少し切り詰めれば大丈夫だろう、という根拠のない思い込みをしていませんか?
教育費や住宅ローンの完済など大きな支出を終える時期も考慮し、再雇用期間中の収入予測と不足額の拠出計画を早めに立てましょう。
そのためにも、この期間以降の生活水準やライフプランにも思いを巡らし、60歳以降全体で納得のいく家計収支の見込みを持つことが大切です。

キャリアとマネー、2つのプランは表裏一体

老後資金は預貯金だけではありません。退職一時金、企業年金、個人年金保険、企業型確定拠出年金(企業型DC)、iDeCoNISA投資信託や株式などの金融資産や配当、不動産収入などさまざまです。
将来活用できる資産を一覧にし、「いつまで増やすのか。いつから、いくら使うのか」といった効果的なお金の使い方を、90代まで考えてみてください。なお、健康であれば働き続けることで収入を増やす方法があります。
「〇歳で預貯金が尽きてしまう」のであれば、65歳以降も再雇用やパートなど無理のない範囲で就労収入を得続けることで収支改善を図るのは、確実性のある選択肢です。
実際に70歳までの就業確保措置が、企業の努力義務となりました。何らかの措置を導入した企業は全体の約32%、その内約80%が65歳までと同様の再雇用制度を用意しています(※2)
また、課題が具体的に見えてくれば、再雇用以外の働き方(複業や転職、独立)に早めに転身することも考えられます。
この課題には、家計維持だけでなく、自身の定年後の「働き方」という視点も含まれます。第二のキャリアプランに深く絡んでくるのです。
50代はまだ資産形成の時間も残されています。NISAや個人向け国債などを活用し、自分のリスク許容度にあわせた老後資金の積み増しにも、十分取り組める時間があります。まずは、以下の4つを書き出してみてください。


(1) 再雇用期間の予想家計支出
(2) 再雇用期間の予想収入(厳しめに設定)
(3)一時金・企業年金など60歳退職時の給付見込額(企業型確定拠出年金、iDeCoを含む)
(4) 60歳時点の預貯金・個人年金保険の年金額・生命保険満期額・NISA等の金融商品残高

(1)から(2)(3)(4)を差し引き、残った金額と65歳以降の公的年金見込額(厚生老齢年金、基礎老齢年金※)で老後の家計収支が赤字転落しないことが必要です。もちろん、(4)は今後積み上げていく余地があります。
※50歳以上の「ねんきん定期便」には、60歳時点まで就労した場合の年金予想額や、繰上げ繰下げ受給時の試算が記載されています。
ざっくりした見通しがあるだけでも、必要な準備や働き方の選択肢が具体化してきます。定年はゴールではなく、まだまだ働ける気力・体力のある方が多くいます。
今できる準備に向けて、一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。「知らない不安」を「正体のわかった不安=準備できる課題」に変えていきましょう。
 

出典

(※1)中央労働委員会 令和7年賃金事情等総合調査
(※2)厚生労働省 令和6年高年齢者雇用状況等報告
執筆者 : 伊藤秀雄
FP事務所ライフブリュー代表
CFP®️認定者、FP技能士1級、証券外務員一種、住宅ローンアドバイザー、終活ドバイザー協会会員