公開練習で笑顔を見せるバレーボール男子日本代表の深津英臣【写真:鉾久真大】

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アジア選手権に向けた公開練習で取材対応

「気持ち」だけでは通用しない――。挫折を通して痛感したベテランは技術を磨き、返り咲きを果たした。

 バレーボール男子日本代表のセッター・深津英臣、36歳。約7年ぶりにA代表に戻ってきた司令塔を復活に導いたのは、たゆまぬ研究と努力だった。

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「なんか『お父さん』みたいに言われることが多くて」

 最年長の深津は、代表での現在の立ち位置をこう表現して笑う。

「この間、ご飯行ってる時に誰かに言われたんですよ。その時は『あ、そうなの?』みたいな感じでちょっと流しちゃったんですけど」

 食べ物を取り分けるわけでもない。「何もしてないですよ。ただ座ってみんなのことを見てて……。後輩が取り分けてくれます(笑)」。“お父さん扱い”を受ける理由を「まあ、どこに行っても全体を見ている感じに見られているのかもしれないですね」と自己分析した。

 初めて代表入りしたのは2013年。「僕、もっと違うキャラだったので、若い頃は。テレビで踊ったりとか、そういうキャラだった」と懐かしそうに振り返る。

 2015年には正セッターの座を掴み、ワールドカップでも手応えを得た。しかし、直後にバレー人生に大きな影響を与える挫折が待っていた。今から10年前の2016年。リオ五輪の出場権を懸けた最終予選だ。

「本当に何も覚えてないですよ。それぐらい自分がいっぱいいっぱいになって、自分が潰れて。『うわ、俺全然自分のプレーできてないじゃん』ってずっと思いながら大会終わっちゃったんで」

 何もできなかった。悔しい。情けない。2勝5敗で7位に終わり、五輪の切符を逃した。「ここで結果を残せないんだ。ここで自分のプレーができないんだ」。不甲斐なさはなかなか消えてくれない。2017年には代表キャプテンも務めたが、2018年の世界選手権は代表落ち。その後も落選が相次いだ。

気づいた自分に足りなかったこと「気持ちだけでバレーをやっていた」

 何がダメだったのか。課題を明確にしようと自分と向き合った。そして気づいた。「気持ちだけでバレーをやっていた」。国内リーグではそれでもある程度カバーできた。優勝もできた。しかし、世界は違った。

「この舞台に来ると、ファーストに来なきゃいけないのは技術なんだ。どれだけ気持ちが強くても、情熱があっても、それがないと何もできないんだ」

 自分には何が足りないのか。上手いセッターと自分は何が違うのか。国内外、男女問わず、好きなセッターの映像をかき集め、研究を重ねた。五輪3大会に出場した元女子日本代表の竹下佳江さんもその1人。“世界最小最強セッター”から体の向きやボールを迎える体勢を学んだ。

 幾多の選手を分析した上で、特に追求したのが、「足の使い方」だ。

「足のステップと、足からボールに力を伝える体の連動性はすごくこだわってやってきました」

 磨き上げた技術を武器に、今年約7年ぶりにA代表に復帰。2日まで行われたネーションズリーグでは、正セッターとして史上初の予選ラウンド12戦全勝に大きく貢献した。次に迎えるは9月4日から13日まで福岡・北九州市で開催される「買取大吉アジア男子バレーボール選手権大会 福岡 2026」。優勝すれば2028年ロサンゼルス五輪の出場権を獲得できる今年度の最重要大会だ。

 10年前に勝ち獲れなかった五輪の切符。「あそこで出せなかった力をここで出したい。そういう気持ちがすごく強いですね」。あのときと違い、今は気持ちだけではない。雪辱を果たす準備はできている。

(THE ANSWER編集部・鉾久 真大 / Masahiro Muku)