加熱する「巨人VS阪神」のデッドヒート…随所で目立つ“橋上采配”に「監督は生え抜きのエースか4番」という巨人の伝統は変わるか
光る橋上采配
8月11日、同率首位で迎えた「伝統の一戦」は、読売ジャイアンツが8月13日の第3ラウンドも落とし、3タテを食らってしまった。阪神タイガースの強力打線をまざまざと見せつけられたわけだが、両チームによる接戦はシーズン最終盤まで終わらない、というのが大方の予想である。
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「阪神は中継ぎ陣が登板過多になっています。8月11日、オリックス二軍との試合で、ケガから9月上旬の復帰が伝えられていたセットアッパーの石井大智(29)をベンチ入りメンバーから外しました。一軍経験のある選手を相手にしたライブBP(実戦形式の投球練習)では力強いボールを投げており、9日から一週間の間に実戦登板を経験させ、一軍昇格させる予定でした。大事を取っての予定変更ではありますが、阪神はドリス(38)、岩崎優(35)も調子を落としています」(在阪記者)
それに対し、巨人は阪神3連敗後もチームの士気は落ちていない。これも橋上秀樹監督代行(60)の手腕によるものだろう。「ここぞ」という勝負所では坂本勇人(37)、丸佳浩(37)といったベテランを起用するが、若手の登用にも積極的だ。とくに、ファームから昇格してきた選手はすぐにスタメンで使う。この手法が、チームを首位戦線に引き上げた感がある。

「15日の中日戦、8失点で9敗目となり、翌日に登録を抹消された竹丸和幸(24)ですが、すでに8勝を挙げています。8日のヤクルト戦では浦田俊輔(23)が3安打3打点で今季7度目の猛打賞となりました。浦田と松本剛(33)の1・2番コンビも好調で、1番バッターを固定できなかった近年の課題も解消されました。竹丸と浦田、チーム内に新人王候補が2人もいるなんて贅沢な話です」(スポーツ紙記者)
チーム内に新人王争いのライバルがいるのも、若手を抜てきする橋上采配によるものだ。しかし、見事にチームの士気を高めた橋上代行の今後のことを聞くと、関係者の多くが黙り込んでしまう。
「チームの調子が良いのだから、このまま正式に……」と、球団史上初の“外様指揮官”の誕生に期待する声も少なくないが、まだ何も決まっていないというのが実情のようだ。
去る7月16日のオーナー会議後のこと。議場となったホテルの部屋から出てきた巨人・山口寿一オーナー(69)は報道陣に囲まれると、橋上監督代行について、
「よくやってもらっていると思っています。予期しない展開で監督代行を受けてもらったんですけど、本人もご覧の通りで、ベンチの監督のイスには座らない。あくまでコーチの一人の監督代行として、他のコーチともよく話し合いながらチーム運営をしている。当初私が想像していたよりもよくやってくれていると思います」
と、そのマネジメント能力の高さを評価していた。しかし、来季以降の監督人事という核心を突いた質問には、
「それは全く何もないですね。またそういったことをすべき時期でもないと思っていますけどね。何も言えることはないと」
生え抜きの4番かエースにしか監督を託してこなかった「巨人の伝統」もある。仮に逆転優勝した場合はもちろんだが、クライマックスシリーズで勝ち上がって日本シリーズ進出を決めたとき、フロント幹部は「来季」について、もっと決めづらくなるだろう。
伝統球団の方針を変えた
チームの好調さを振り返ると、若手登用以外にも、これまでの巨人とは異なる橋上采配が見えてきた。一例が投手の管理だ。
去る7月9日のことだ。東京ドームでの阪神戦で、1勝1敗で迎えた3戦目の先発マウンドを任されたのは則本昂大(35)。初回こそゼロに抑えたが、2回に前川右京(23)に逆転2ランを献上し、3回も死球を挟んで3連打を浴び、スコアは1対5。だが、橋上代行は則本の続投を選択した。4回にも1失点、5回にも2失点。点差は7まで広がったが、その間、橋上代行は則本を代える様子は全く見せなかった。
本来の調子を取り戻すための我慢だったかもしれないが、これまでの巨人であれば、「捨てゲーム」は作らない。それは昭和、平成のプロ野球界を牽引してきたという球団の自負であり、巨人戦のチケット入手が困難とされた時代もあったからだ。
「今年、この試合にしか球場に来られないお客さんもいる」
「初めて観戦するお客さんもいるかもしれない」
そんなファンを前に、「捨てゲーム」などとんでもない。最後まで勝利をあきらめない――これが球界の盟主として、伝統球団として培われた野球観だった。しかし、
「則本が5回まで投げてくれたおかげで、リリーフ陣を消耗させずに済みました。橋上代行は、次の試合以降も連投で投げられない投手を作りません。投手陣のマネジメントにも長けています」(前出・スポーツ紙記者)
と、好意的な意見が多く聞かれた。また、13日に再昇格したが、キャベッジ(29)のファーム再調整に驚いた関係者も多かった。降格の理由は打撃不振だったが、橋上代行は記者団にこう語っていた。
「(キャベッジの)頭の中を整理させる。いろんな数字を見せながらウィーラー(打撃コーチ)とともに(本人とも)話をしました。得点圏での相手の配球の意図を踏まえながらできるか。改善してくれることを祈っています」
指摘されたのは、キャベッジの得点圏打率の低さ。二軍降格が決まった8月3日時点では1割8分2厘で、7月の打点はわずか2。首脳陣が再調整に踏み切ったのは当然だが、勇気のいる決断でもあったはずだ。このとき、キャベッジに代わって昇格したのはルーキーの皆川岳飛(23)。対戦投手の目線で「キャベッジと皆川のどちらに脅威を感じるか」と聞かれれば、不振とはいえ、一発の脅威を秘めた外国人スラッガーのほうだ。おそらく、これまでの歴代巨人監督であれば、スタメンから外すことはあっても、シーズン中、それもペナントレース佳境の8月に再調整に踏み切る決断はできなかっただろう。
「全員野球」で
「7月下旬、若林楽人(28)を埼玉西武ライオンズに帰還させる金銭トレードがまとまりました。時期を同じくして、今季からメキシカンリーグで活躍しているエリエ・ヘルナンデス(31)がNPB帰還を働き掛けているとの一報も飛び込んできました。若林のトレードで70人の支配下枠が1人空いたので、ひょっとしたらとも思ったんですが」(前出・同)
その最後の1枠を掴んだのは育成の鈴木大和(27)だった。俊足がアピールポイントの外野手である。一発よりも走塁と守備力が決め手になった。橋上監督代行がよく口にするのは、「全員野球」。それもベンチ入りメンバーだけではなく、70人の支配下登録選手の全てを指しての言葉だ。
また、同率首位で迎えた3連戦を全敗したことで「歴史」が変わった。2001年以降、つまり、21世紀の両チームの対戦成績は阪神310勝、巨人309勝(ともに23分け)。2リーグ制導入以降のトータルではまだまだ巨人のほうが上だが、令和時代は阪神優勢となった。チーム戦力と戦略について見直すときなのかもしれない。今オフ、巨人は歴史的な大転換期を迎えそうだ。
デイリー新潮編集部
