8月15日の靖国参拝を見送り、皇室典範改正は大急ぎ…高市首相の“矛盾”について識者は「安倍首相と比較するとその差は歴然」と指摘
前編【過去には靖国参拝をしないと「相手がつけあがる」と強気発言も…高市首相が“終戦の日”に参拝見送り 識者は「信念というより“保守票が欲しかっただけ”と批判されても仕方がない」】からの続き──。8月13日、秋篠宮さまは東京・元赤坂の赤坂東邸で記者会見に臨まれた。その際、7月17日に改正皇室典範が成立したことを巡って極めて注目すべき質疑応答が行われた。6月の記者会見で天皇陛下が「国民の皆さんの理解が得られるものとなることを望んでおります」と発言されたことに対し、秋篠宮さまは「もっともだと、その通りだと私は思っています」と述べられたのだ。(前後編の後編)
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さらに記者からは、皇室典範の改正では「天皇家の“人生にまつわる制度設計”」が議論されたにもかかわらず、「皇室の方々の境遇やお気持ちが議題として明確に示されず、国民にも明確に伝わっていない」ことについて質問が出た。

これに秋篠宮さまは「私も生身の人間なんですよね。ですから、いろいろと思うところはもちろんあります。なかったらおかしいと私は思いますけれども」と、率直にお気持ちを表明された。
一方で、「どうやって発信することができるか、それから伝えていくことができるか、さらにそれが法律ともし関わってきた場合どうするか、その辺の関係というのは非常に難しいと思います」と“象徴天皇制”との兼ね合いについて言及され、「私としてはなかなかそのことについて、お話しすることができないというのが現状です」と締めくくられた。
改正皇室典範が成立した7月17日、高市早苗首相は官邸で記者団の“ぶら下がり取材”に応じ、次のようにコメントした。
「皇族数が減少しているという現状に鑑み、総理就任以来、一刻の猶予もならない喫緊の課題であると認識してまいりました。長年にわたった検討に結論を出し、改正の実現に至ったということは感慨深く、大変なご尽力をいただきました、衆参正副議長及び全体会議に参加された議員の皆様に、特に感謝と敬意を表したく存じます」
昭和100年記念式典の問題
秋篠宮さまのご発言と、高市首相のコメントを改めて比較してみると、非常に興味深い。担当記者が言う。
「多くの国民は高市さんに『物価高を早く何とかして』、『給料の手取りを増やしてほしい』と求めてきました。しかし『一刻の猶予もないので、急いで皇室典範を改正して下さい』と要望していた国民はどれほどいたでしょうか。そもそもマスコミ各社の世論調査で『女性天皇に賛成』という回答は60%から80%に達しています。男系天皇の維持が大前提という国会での議論とは大きく乖離していたように思われ、天皇陛下は『国民の理解』を求められました。しかし国民の意見が議論に十分反映されたとは言えなない状況のまま、国会で改正案は可決されました。そのため批判的な意見が急増し、内閣支持率にも影響を与えたのです。さらに今回、秋篠宮さまが率直なお気持ちを表明されたことで、『一体、誰のための改正だったのか』という国民の素朴な疑問が再燃していると言えます」
政治アナリストの伊藤惇夫氏は、「このような状態になってしまうと、やはり4月に実施された『昭和100年記念式典』で、天皇陛下のお言葉がなかったことに改めて注目せざるを得ません」と指摘する。
昭和天皇との奇妙な共通点
「戦前の日本では昭和天皇が『君臨すれども統治せず』の立憲民主制における大原則を遵守され、それを見越した軍部が天皇の統帥権を悪用して議会を無視、戦争に突き進んだという歴史があります。記念式典で高市さんは式辞を述べました。一方の天皇陛下はご臨席されたにもかかわらず、お言葉はありませんでした。戦前の昭和天皇が置かれていたお立場と奇妙に似通っている印象を受けてしまいます」(同・伊藤氏)
8月13日、ロシアのプーチン大統領は北方領土の択捉島を初めて電撃的に訪問した。高市首相は会見を開き「断じて許容できません」と強く抗議した。
この会見における高市首相の発言で、伊藤氏は「話し合いのチャンネルをちゃんと開けてですね、対応してきたわけでございます」の部分に注目する。
「高市さんは中国との関係が冷え切っていることについても、『対話のチャンネル(窓口)は常にオープンです』と説明します。これは一種の消極的姿勢なのですが、国内では『毅然とした態度で素晴らしい』と評価する声が少なくなかったのです。しかし、こうした“高市外交”は限界を露呈しつつあると言えるかもしれません。なぜなら“高市外交”の基本姿勢は『対立している国には何もしない』だからです。外交で最も重要なものは、利害が対立している国に対しても水面下では必死に意思疎通を図ることでしょう」
“安倍外交”との大きな差
伊藤氏は「同盟国のトップであるトランプ大統領やメローニ首相と笑顔で握手するのが無意味とは言いません。しかし対中関係や対露関係を前進させることの重要性とは比較にならないと思います」と言う。
「私は何度も“安倍外交”を批判してきましたが、安倍さんが外交に力を入れ、成果を上げてきたこともよく承知しています。例えば日露関係では『安倍さんはプーチン大統領にダマされている』と批判しましたが、両国の距離が近かったのは間違いありません。さらに安倍さんは2013年12月に靖国神社を参拝し、日中関係は極端に冷え込みました。しかし粘り強く水面下での協議を重ね、翌14年に日中首脳会談を実現しています。他にも19年にはテヘランでイランの最高指導者アリ・ハメネイ師と会談しました。『単なるパフォーマンスであり、外交成果はなかった』との厳しい批判もありましたが、会談が実現したという点は評価できると思います。一方の高市さんは、そうした意味での外交をやっていません。トランプ大統領の横でぴょんぴょん跳ねていたのが印象的ですが、やはり安倍さんとの差は大きいと言わざるを得ないのです」
改正皇室典範の問題でも同じことが指摘できる。果たして高市首相は「天皇家のご意向」を把握しようと極秘で周囲から話を聞くとか、“密使”を皇室に派遣するとか、様々なアプローチを尽くしたのだろうか──?
靖国神社の参拝は見送り
「もし皇族の皆さまのお考えやご意向を把握していなかったとなると、一体誰のための改正なのかという疑問が浮上します。ネット上では『これでは不敬罪だ』という投稿も目立つと教えてもらいましたが、その指摘は決して間違っていないと思います。高市さんの『チャンネルは開かれています』という説明は、対話に消極的であることも意味します。プーチン大統領とも習近平国家主席とも、そして天皇陛下ともコミュニケーションを取ろうとしていない──という可能性があるわけです。そうした高市首相の姿勢は最終的に『国民とも対話しない』ことにつながりかねないと憂慮します」(同・伊藤氏)
国民との対話を避けている高市首相に対し、「言うだけ番長」、「口だけ番長」との批判が集まっている問題がある。それは終戦の日に靖国神社の参拝を見送ったことだ。高市首相は常に「自分が首相になったら靖国神社に参拝する」と強い意欲を示してきた。
「やる」と断言してきた参拝は見送り、国民が心の底から希望していたとは言いがたい皇室典範は実現させてしまう。
この“矛盾”を前編【過去には靖国参拝をしないと「相手がつけあがる」と強気発言も…高市首相が“終戦の日”に参拝見送り 識者は「信念というより“保守票が欲しかっただけ”と批判されても仕方がない」】では詳細に報じている──。
デイリー新潮編集部
