MBS

写真拡大

“かばんのまち”兵庫・豊岡市の工房がターゲットに

“かばんのまち”兵庫県豊岡市でかばんを製造する「豊岡工房」。そのブランドを悪用した広告YouTubeに出回り、憤りの声が上がっています。

【画像を見る】ブランドに“タダ乗り”「豊岡製かばん」装った偽のYoutube広告

実際に注文してみると、送り状に記載されていたのは中国南部の都市の名前。取材班が実際に訪ねてみると有力な情報が…

とある中国メーカーのかばんを個人が購入し、それを「豊岡工房」と騙って販売していた可能性が浮かび上がってきました。

Youtube広告で「かばん製造を終了…原価割れで最後の大放出」

YouTube広告
「誠に遺憾ながらお知らせがございます。兵庫県豊岡市に所在する本工房が1世紀以上に渡り培ったかばん産業の技術と誇りをかけ、ある伝説のバックパックの製造を終了することを決定いたしました」

Youtubeで流れる広告

日本有数のかばんの産地として知られる兵庫県豊岡市の工房が経営難に陥り、かばんの製造を終了するので原価割れで「最後の大放出」をするとうたっています。

YouTube広告
「私たちは1つの職人としてのジレンマに直面しました。耐久性と実用性を追求しすぎた結果、平均数十年買い替え不要の一生物になってしまったのです。リピーターがほぼ発生しないためビジネスモデルとして成立しにくく、工房は深刻な経営難に陥りました」

動画のリンクからホームページに飛ぶと、「豊岡工房の本物バッグ」と銘打った通常3万2450円のかばんが80%オフの6490円。

さらに2点目は2500円、3点目はなんと1500円で販売されています。

「うちが作っているものではない」豊岡市のかばんメーカーは怒り

しかし、これに憤るのが豊岡市のかばんメーカーです。

(小田清 小田忠之社長)「うちが作っているものではないですね。正直いろいろ問い合わせもいただいていまして、大変迷惑をしている」

来年で創業120年を迎える小田清。長年、地場産業であるかばんや革製品の卸売りを手掛けてきましたが、12年前に自社のかばんブランドとして「豊岡工房」を立ち上げました。

豊岡市内の工房で熟練の職人が裁断から縫製・仕上げまでを担っています。

豊岡市内の店舗や公式サイトなどで販売していて、価格を下げることはほとんどないと言います。

(小田清 小田忠之社長)「大切に売っているブランドなのですが、それを勝手に使われている。腹立たしいです」

日本語は一切見当たりません」サイトで注文すると…

「豊岡工房」を騙って販売されているかばんとは?確かめるため、サイトで注文してみました。

かばんは折りたたまれた状態で二重の袋に包まれていました。袋の中には逆さまになったリュックが入っていました。

タグを見てみると、どこにも「豊岡工房」とは書かれていません。

(記者リポート)
中国語でしょうか。カンガルーのマークと漢字が書かれています。日本語らしき文字は一切見当たりません」
「チャックを開くと、中にポケットがいくつかあり、収納は比較的多そうな印象です」

荷物もたっぷり入り充分使えそうです。

この道40年以上の職人「デザインも縫い方も違う」

このかばんを「豊岡工房」の職人に見てもらいました。

(豊岡でかばんを40年以上製造 竹部豊さん)「思ったよりしっかり縫われています。粗悪品ではないですね」

ただ、豊岡工房にはないデザインで縫い方も違うと話します。

(豊岡でかばんを40年以上製造 竹部豊さん)「(縫い目の間隔が)5mm以上ある。わざと大きくする場合もあるんですけれど、こういう(素材の)ものはあまりしないですね」

このかばんはどこで製造され、誰が販売しているのか。送り状やロゴに記されている中国南部の都市を取材すると…

発送元の中国・シンセン市へ

広東省・シンセン市。AIなど先端技術の開発拠点として急成長する都市で、「中国のシリコンバレー」とも呼ばれています。

届いたかばんの発送元として記載されている場所は、市の中心部から車で約30分のところにありました。

(記者リポート)「こちらに書かれている住所と同じ場所を見つけました。様々な会社が入っているビルのようです」

ここには主にAI関連やネット通販会社が入っているようです。

依頼主は「DAVID」カンガルーのロゴの正体は…?

送り状に依頼主として記載されていた「DAVID」、そしてカンガルーのロゴのブランドについて知る人がいないか聞くと…

―――近くにかばんを販売している会社や革製品を扱う会社は?
「分かりません」

管理事務所を訪ねると…

―――この会社を知りませんか?。
(管理事務所のスタッフ)「担当者の名前は『DAVID』ですか?会社名はないんですか?それだけでは分かりません」

この住所で有力な手掛かりは得られませんでした。

中国革製品の都」“生産地”の中国・広州市へ

次に向かったのは、タグに「生産地」と記されていた広州市。車で走ること約2時間半。

(記者リポート)「産地と書かれていた住所とみられる場所にやってきました。ずらりと並ぶ商店がかばんを作る際に使われる革製品を扱っていて、革の市場となっています」

中国メディアによりますと、ここは「中国革製品の都」と呼ばれる場所で、一帯には8万を超える企業や商店が集まっています。

「海外のお客さんも中国国内のお客さんもいます。もちろんもうかっていますよ。もうかっていないと続けていませんよ」

かばんなどの革製品は年間7億個以上生産されていて、約7割が世界各地に送り出されると言います。

記者が訪れた店ではかばんが1つ50元、日本円で約1200円という安さで売られていました。

「聞いたことがない」「このエリアにかばん工場はない」

この“かばんの街”で、あのブランドを知る人はいるのでしょうか?

「聞いたことがありませんし、知りません」
「通販サイトでのブランド名なのかもしれませんよ。製造元は別の名前かもしれないですね」

ブランドを知る人はいない上、そもそもこのエリアにかばん工場はないとも話しました。

中国の通販サイトでは「日本円で2000円程度」で販売

こうした中、似た名前の店を発見。

―――この会社はここですか?
「いいえ、私たちは革を販売している会社で、かばん製造はしていません」

しかし、ここで有力な情報が…

―――カンガルーのロゴは見たことがありますか?
「あるような気がします。お客さんがかばんを持ってきたことがあって、そのかばんについていたような気がします」

中国の通販サイトを見ると、このブランドは確かに存在していて、現地では日本円にすると2000円程度で販売されていることが分かりました。

「個人で購入し日本で転売しているのではないか」

このブランドの販売代理店の1つに連絡してみると…

―――「威森袋鼠」というブランドのかばんを販売していますか?
(販売会社スタッフ)「はい」
―――広州のブランドですか?
(販売会社スタッフ)「はい。ブランドは広州ですが、現在は河北省です。以前は広州でも生産していましたが、今は何でも値上がりしていますよね。コストパフォーマンスを考えた結果移転したのです」

このブランドは日本での販売はしていないため、個人で購入し日本で転売しているのではないかと話しました。

広告での販売について聞くと…「いまの世の中はそういうものです」

勝手に「豊岡工房」をうたい販売されていることを告げると…

(販売会社スタッフ)「しかたありません。いまの世の中はそういうものです。うちのタグが残っているだけまだマシです。多くはうちのバッグを使って、自社ブランドとして売り出し、包装もタグも全部変えてしまいますから」

“ブランドのただ乗り”に豊岡市長も怒り

先人たちが築き上げてきたブランドにただ乗りされている現状。豊岡市長はMBSの取材に対し、国に対策を働きかけたいと話しました。

(豊岡市 門間雄司市長)
「大切にいまかばん産業を育んできていることを逆に利用をされて、その善意にかこつけたような偽広告の表示表現ということについては、さらに怒りが増幅しているというのが正直なところです」
「こういった偽物の販売についての罰則も含めて、しっかりと国の法整備の中で取り組んでいただくようなことにならないかと、今後働きかけを強めていければと思っています」

(2026年8月7日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」内『特命取材班スクープ』より)