「うんちに含まれる微生物入りカプセル」を服用することで食物アレルギーが軽減できる可能性

食物アレルギーは命に関わる事態を引き起こすこともあり、食物アレルギーを持つ当人やその親にとって大きな不安の原因となっています。そんな食物アレルギーを「糞(ふん)便に含まれていた微生物入りカプセル」で改善するという臨床試験の結果が、医学誌のScience Translational Medicineで報告されました。
Fecal microbiome transplant in food allergy in humans and mice identifies a role for bile acid metabolites in oral tolerance | Science Translational Medicine
First-of-Its-Kind Trial Against Food Allergies Yields 'Exciting' Results : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/first-human-trial-of-poop-transplant-to-treat-food-allergies-shows-promising-results
食物アレルギーを治療する方法としては、原因となる食物を医師の指導のもとで少量ずつ摂取させて耐性獲得を目指す経口免疫療法や、皮膚に貼るパッチを用いて耐性獲得を目指す経皮免疫療法などが存在します。
これらの他に、アレルゲンに過剰反応してしまう免疫系を再訓練する方法として、腸内細菌を利用する治療法が注目されています。腸内細菌には健康にいい影響を与えるものもあれば悪い影響を与えるものも存在し、腸内細菌叢(そう)を調整することで免疫反応を変えられる可能性があるというわけです。
ボストン小児病院で行われた新たな第I相臨床試験では、ピーナッツアレルギーを持つ成人に「健康な人の糞便から採取した微生物叢を含むカプセル」を投与しました。このような治療法は便微生物移植(FMT)と呼ばれ、過去の臨床試験ではうつ病・潰瘍性大腸炎・がんなどの治療に効果を発揮する可能性が示されています。

臨床試験にはピーナッツアレルギーを持つ15人の成人が参加しました。これらの被験者はいずれもピーナッツに対して敏感で、医師の監督下で行われた食物負荷試験では、わずか100mg以下のピーナッツタンパク質に反応を示しました。このタンパク質の量は、ピーナッツ1粒を半分ほどに割ったかけらに含まれる量より少ないとのこと。
研究チームは10人の被験者に対し、ピーナッツアレルギーがない健康なボランティアから採取した糞便の腸内細菌を含むカプセルを36個、1〜2日かけて投与するFMTを実施しました。そして残る5人には、事前に腸内細菌叢を変化しやすくするための抗生物質を短期間投与した後、同様にFMTを受けさせました。
FMTの経過はおおむね良好で、軽微な副作用はみられたものの重大な副作用はありませんでした。また、微生物の移植自体にアレルギーを起こした被験者もいませんでした。
FMT後にピーナッツへのアレルギー反応を測定したところ、15人中9人には変化がありませんでしたが、6人(40%)はピーナッツタンパク質の許容量が増加しました。抗生物質の投与なしでFMTを受けた3人は、ピーナッツタンパク質の許容量が約3倍の300mgまで増加したのに対し、事前に抗生物質の投与を受けた3人は、許容量が約6倍の600mgまで増えました。さらに6人のうち1人は、試験したすべての投与量である1043mgまで耐えることができたと報告されています。
研究チームは論文で、「これらの反応はFMTを1回投与した後の著しい改善を示しています。なぜなら、患者が300mgのピーナッツタンパク質の投与に耐えられるようになるには、約6カ月間の経口免疫療法を毎日行う必要があるためです」と述べました。今回の研究では、被験者のピーナッツタンパク質の許容量増加が少なくとも4カ月間続くことも確認されています。

研究チームはFMTが一部の被験者のアレルギー反応を著しく改善した理由を探るため、FMTを受けてから4カ月後の被験者から糞便サンプルを採取し、そこから抽出した微生物を無菌状態のマウスに移植しました。
これらのマウスのアレルギー反応を調べたところ、ピーナッツアレルギーの改善がみられた被験者から採取した微生物を移植されたマウスは、食物アレルギーを発症する可能性が低いことが判明。アレルギーが誘発された場合でも、アナフィラキシーショックからある程度保護されていたとのことです。
さらに調査したところ、バクテロイデス属に含まれる2種類の細菌が免疫細胞を刺激して、アレルゲンに対する過剰反応を抑制することで保護効果を発揮している可能性が示されました。同じプロセスが人間にも起きるかどうかは断言できませんが、適切な細菌株の分離が有効な可能性があります。
今回の臨床試験はあくまで初期段階ですが、毎日続けなければアレルギー反応が再発してしまう経口免疫療法と比べて、短い期間で効果が出るFMTは受け入れやすい選択肢かもしれません。アレルギーに対するFMTの実用化にはより大規模なプラセボ対照試験が必要ですが、今回の有望な研究結果は、今後の研究の基礎になると科学系メディアのScienceAlertは述べました。
