「所変われば品変わる」というが、フランスと日本の小学生は使う文具が違う。フランス在住14年で8人の子育てワーキングマザー、トレオレル美智子さんは「こちらの子供は学校で鉛筆やシャーペンを使わず、消しゴムで誤りを消すこともない。そのことで人生の大事なことを学んでいる」という――。

※本稿は、トレオレル美智子『フランス人の気楽な働き方全力の休み方』(フォレスト出版)の一部を再編集したものです。

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■フランスの小学生は鉛筆もシャーペンも使わない

日本の学校で一番使う文房具とは何だろう?

私は、鉛筆かシャープペンシルだと思う。書いて、見て、学ぶ。どの授業でも、試験でも、学生たちにとっては毎日のお供と言っても過言ではない。

そんな学生たちの文房具の使い方の基本中の基本であるところに、実はフランスと日本の違いがある。

フランスでは新学年が開始する際に、学校から「来年度に必要な文房具リスト」が配られる。親たちは、そのリストを片手に、新学年が開始する前日までにリストにある文房具を買い揃える。

私もフランスでこのリストをもらったのだが、ひととおり目をとおした後、戸惑った。なんと、「鉛筆を買わなくてもいい」というのだ。店を訪れても、鉛筆はデッサン用だけ、シャープペンシルなんて売られてもいない。それじゃあ、何で文字を書けばいいのか。

驚いたことに、小学生からボールペンか、万年筆だという。万年筆だなんて、かっこいい! と思ったのもつかぬ間、訳がわからなかった。

頭に浮かんだのは、「じゃあ、間違えられないじゃん……」だった。

■ノートには、間違いの痕をそのまま残す

フランスの小学校では、鉛筆と消しゴムは使わない。そんなことが可能なのか? 実際に学校が始まるまで信じられなかった。だけど子どもたちは本当に毎日、書くものと言えば、ボールペンのみを持って行った。そして、授業中のノート取り、計算練習、下書き、それからテストの回答、これらすべてをペンで行なっていた。

私は、理解が追い付かなかった。そのため、子どもたちの学校のノートを見せてもらった。すると、そこには予想外の光景が広がっていた。

き……汚い。

ノートの中身は間違いだらけだった。いっぱい間違えるのに、鉛筆でないから、消せない。

間違えたところは、ぐるぐると塗りつぶされているか、線を引いて消しているか、修正テープを貼って上から書いているけれど、テープがはみ出ていたり一部消せていないままだったりと、間違えたところはきれいに消えていない。しっかりと、間違えた痕跡があちこちに残っているのだ。

■毎日見続けるノートの状態も、日仏で正反対

フランスの小学生たちのノートは間違いだらけ。ボールペンで書いて間違えて、消さないまま間違いの痕跡があちこちに残っている。

このノートを作成し、この状態を目に焼き付けながら、脳にインプットし続けているんだな。私は、文化の違いにもほどがあると、笑ってしまった。

フランスの子どもたちの学校のノートから考えると、日本の子どもたちのノートは芸術作品とも言えよう。日本の小学校では、鉛筆かシャープペンシルを使い、そこにトップレベルのよく消える消しゴムを備えている。授業で使うノートも、テストでも、間違えた箇所は、その間違えた痕が残らないほどまできれいに消して書き直す。

また日本では、ノートに書く際は、下敷きを使う。実はフランスには、下敷きが存在しない。ボールペンの筆圧がそのまま次のページに伝わり、新しいページは、書く前からぼこぼこである。

フランスの小学生たちのノートは、ぼこぼこで間違いの痕だらけ。一方、日本の小学生たちのノートは、まるでもう1冊の教科書ができあがったかのようにきれい。

フランスと日本ではこれだけの違いを、小学生の頃から毎日味わい続けている。

子どもの頃に味わい続けたことは、人生において大きな影響を与える。私はここから、何に気づくことができるのだろう、ここから得られることは何だろうと考えた。

出所=文部科学省HP

人生も、失敗だらけでいい

日本には、「失敗を許さない」という考え方が根強くあるように思う。それは、世間が、というよりも、一人ひとりの中に強く存在しているのではないだろうか。

芸能人が仕事上やプライベートで大変な失敗をすれば、復帰は難しい。会社では、大きなミスをすれば、責任をとって立場を降り、その出来事はずっと付いて回る。

私自身は子どもの頃、「受験に失敗したら、人生が終わる」と思っていた。離婚をすれば、次の結婚には非常に不利で、再婚は無理だと思っていた。

過去の失敗は、黒歴史。失敗は人生を大きく変えてしまうから、失敗をしないように生きなければいけない。私は、自分に言い聞かせてきた。

一方、フランスでは、失敗はして当たり前のものだと認識されている。失敗は、黒歴史ではなく、普通の歴史であり、特に色は付かない。

学校の成績が良くなければ、落第してやり直す。大学でも、学部を何度でも替えて、やり直す。転職も何度もする。カップルも夫婦も、「くっついては別れて」を死ぬまで繰り返す。

人生で堂々と何度も失敗を繰り返しているが、まったく恥じた様子はない。失敗を繰り返すことは珍しくはない。標準だ。

写真=iStock.com/MichikoDesign
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人生に「消しゴム」はいらない

失敗を、全然責めない心。これはもしかすると、あの小学校から続いた「汚いノート」に培われたのかもしれない。

トレオレル美智子『フランス人の気楽な働き方全力の休み方』(フォレスト出版)

フランス人は、間違えたところを、まるで最初から間違えなかったかのように、跡形もなく真っ白に消そうとは思わない。彼らは、間違えたという痕跡と共に、生き続けている。

間違えたのは事実。そもそも、間違えたことは、ダメなことじゃない。だから、そこにいつも堂々と残っている。

フランスでも日本でも、日々失敗は起こり続けている。

私たちは子どもの頃、とてもよく消える消しゴムで毎日、間違えたところを真っ白に消してきた。だが、人生に伴うあらゆる失敗を、きれいに消すことができる消しゴムは、この世に存在しない。

私がフランスで見た学校のノートは汚かった。だけど今、失敗と共に堂々と生きているフランス人たちの人生を見ていると、明るくて楽しそうで、きれいだ。そんな様子を見ていて強く思う。

失敗を許さない風潮の強い日本にも、フランス人たちの失敗に対する考え方が少しでも広がったら、どれだけ救われる人がいるだろうか。どれだけ毎日が楽しくなるだろうか。

あなただけの失敗だらけの人生ノートと共に、堂々と楽しく明るく生きていこう。人生に消しゴムはいらない。強く濃くよく見えるボールペンで、失敗も、未来も、しっかり書き残し続けていこう。

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トレオレル美智子(とれおれる・みちこ)
フランス在住14年の8人子育てワーキングマザー。1986年滋賀県生まれ。一度目の結婚で二児を設けるが、良き妻、良き母でいようと尽くした結果、夫がモラハラDV化し、親族らにより強制離婚。東京でシングルマザー生活を送る。後にフランス人と再婚して渡仏。5人を出産し、7人の母として暮らしていたところ、フランス語が話せないまま突然またもやシングルマザーとなる。職なし、貯金ゼロ、公共料金の払い方も知らないところから、日仏辞書を片手に訪ね歩き生活を立て直す。子どもには不自由な思いをさせないようにと、働きながらも家事の手を抜かず、自分のことを後回しにしていたが、それを知ったフランス人マダムから「どうして自分の人生を楽しまないの!」と怒られる。「休む」ことを目的に働くのではなく、「楽しむ」ことを目的に一日中行動するようになる。その結果、仕事もプライベートもペースを崩すことなく両方が充実し、フランス人と三度目の結婚。その中で出会ったフランス人たちの些細な一言や行動に対してインタビューを重ね、「フランス人の楽に幸せに成功し続ける生き方」をメソッド化。オンライン・リアル(日本)での講演やセミナーを多数実施している。
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(トレオレル美智子)