島根・宍道湖の天然うなぎは腹が黄色い。汽水湖が育んだ力強い旨みを堪能するうなぎ旅
絶品のうなぎを求めて日本各地を巡っている編集部が今回狙いを定めたのは、島根県。ターゲットは宍道湖の天然うなぎ。ついでに、水の都と呼ばれる街の景観も楽しもうという腹づもりだ。そんな“欲張りうなぎ旅”。ズバリ。美味美景、バッチリ堪能できました!
宍道湖の天然の恵み…黄色いうなぎを食す!
米子鬼太郎空港へ降り立つ。米子はもちろん鳥取県。でも地図で見るとわかるが、すぐ西側が島根県と隣接し、中海、宍道湖というふたつの大きな湖が広がっている。
いずれも淡水と海水が混ざり合う汽水湖だが、そのふたつを抱く、地形的にも興味をそそられる水の都、松江市が今回の目的地。その地が育んだうなぎの味、そしてできれば宍道湖の天然うなぎにもお目にかかりたいと企んでいるのだ。

松江市中央に東西に広がる宍道湖は面積約79キロ平方メートル、周囲45kmの日本で7番目に大きい湖だ。東側にある中海を通じて日本海の海水が流れ込む汽水湖で、淡水魚と海水魚が共存する豊かな生態系の中でうなぎやしじみなども育まれている。穏やかな湖面は空を映して表情を変え、稀有な景観を示す。日本屈指の夕景スポットとも言われている
最初に訪れたのは『山美世(やまみせ)』。空港からは車で10分。テレビCMで有名になった通称”ベタ踏み坂”こと、急勾配の江島大橋を渡ってすぐ、中海に浮かぶ大根島にある。2階席からは湖面が見渡せ、早くも気分があがる。
いただいたのは「蒲焼御膳」だ。島根の焼き方は、蒸しを入れずに炭火でじっくり焼き上げる、いわゆる「地焼き」だ。キャラメル色にこんがりと焼かれたうなぎは肉厚の特大サイズで迫力充分。口に運べば、表面は香ばしく、中はふわっとジューシーで上質な脂が溢れ出す。うんうん、いいねえ。実にいい。
蒲焼御膳6000円

『山美世(やまみせ)』蒲焼御膳 6000円
さて、松江に入って翌日、宍道湖北岸の道を走らせ訪れたのは『福吉』だ。こちらでは、養殖も宍道湖産の天然うなぎも(事前に電話予約すれば確実)両方いただけるのだ。ご自身も漁協の会員で自ら獲りに出ることもあるという店主の福田栄吉さんが、調理前の宍道湖産天然うなぎを見せてくれた。
「養殖は腹が白く、背が黒いけど、天然は腹が黄色く、背が茶色がかっているんだよ」。
昔に比べれば獲れなくなったというが、小さなエビをはじめ、汽水湖ならではの豊富なエサを食べた天然物は、身が締まって香りが違うそうだ。
若い頃関東で修業したという福田さんは背開き。蒸さずに強火で地焼きする。みりん代わりに出雲独特の調理酒”地伝酒”を使うタレは、甘辛くもサラリとしている。
うな丼(特)天然6000円

『お食事処 福吉(ふくよし)』うな丼(特)天然 6000円 バリッと地焼きされ、引き締まった身にはしっかりした旨みがある
さて、いよいよ実食。表面がバリっと焼かれたうなぎは、確かに香りよく、ぷりぷりっとした独特の弾力があって旨みを感じる。脂はのっているんだけど、くどさはなく、淀みなく力強いおいしさだ。
いやはや、宍道湖の恵みに感謝である。ちなみにすぐ近くにある『アラスカ』は姉妹店。こちらでも『福吉』のうなぎ、いただけます。
キャラメル色にこんがり焼かれ力強いおいしさ『山美世(やまみせ)』@松江
創業は大正3年で、100年続く「秘伝のタレ」で仕上げた香ばしいうなぎが自慢だ。脂ののった肉厚のうなぎが厳選され、捌く前の数日間はミネラル豊富な地下水の生簀に泳がされ、クリアな味わいでもある。
空港からは”ベタ踏み坂”を渡って。敷地内には出雲大社にもゆかりがあるという「うなぎ神社」もあるので立ち寄ろう。

「ベタ踏み坂」

「うなぎ神社」
[店名]『山美世(やまみせ)』
[住所]島根県松江市八束町江島1128-10
[電話]0852-76-3198
[営業時間]11時〜15時(14時半LO)
[休日]無休
[交通]米子空港から車で10分
淀みなく力強い!天然うなぎならではの旨さ満喫『お食事処 福吉(ふくよし)』@松江
宍道湖のほとりに佇むお店は2026年で51年目になるという名店だ。うなぎは養殖もあるが、地元宍道湖産の天然うなぎが食べられる。事前に予約で好みを伝えれば、サイズなどの相談も可能。
店主の福田さん自身が漁協に属する漁師ということもあり、お値段も破格である。調理は背割りで地焼き。タレは濃口とたまり醤油に、地伝酒という調理酒を使うのだが、照りとツヤ、旨みを引き出しいい塩梅だ。
うなぎ白焼天然3000円前後/1人前

『お食事処 福吉(ふくよし)』うなぎ白焼天然 3000円前後/1人前 ふっくらした白焼きにはほのかな甘みもあって香りもよい。地元の酒で一杯も最高
天然のうなぎは身が締まってしっかり弾力があり、脂はのってるものの爽やかにして力のある味というか。蒲焼きもいいのだが、白焼きにすると香りのよさや天然ならではの身質もよりわかり、それもまたよし。
宍道湖産の大粒のしじみがいっぱいのしじみ汁も絶品なのでぜひ。

『お食事処 福吉(ふくよし)』店内は昔ながらの風情ある造り
[店名]『お食事処 福吉(ふくよし)』
[住所]島根県松江市秋鹿町3287
[電話]0852-88-2028
[営業時間]11時〜14時、16時〜18時
[休日]水
[交通]一畑電車秋鹿町駅から徒歩4分
『レストランアラスカ』@松江
『福吉』から徒歩1分の距離にある姉妹店にしてレストラン・喫茶店がこちらだ。モーニングに始まり、ハンバーグ定食やラーメン、カツ丼などの丼もの、チョコレートパフェまで楽しめる中で、なんと福吉からの出前でうなぎも食べられちゃうのだ。入っていれば天然物も。喫茶店で本格的なうなぎが食べられるってのが悪くない!
うな丼(並)養殖2500円、クリームソーダ400円

『レストランアラスカ』(手前)うな丼(並)養殖 2500円(奥)クリームソーダ 400円
[店名]『レストランアラスカ』
[住所]島根県松江市岡本町1092-4
[電話]0852-88-3239
[営業時間]8時〜15時
[休日]ほぼ無休
[交通]一畑電車秋鹿町駅から徒歩5分
松江の水辺と名所を往く…時とともに表情を変え、しっとり美しい水の都
松江を訪れた翌朝、朝ご飯をいただいて「いいな」と思った。何がかと言うと、飯粒としじみ汁が旨い。これに加えて島根は酒どころ。夜はその燗酒もよし。うなぎとともにそれらも合わせて堪能することを激しく推奨したい。島根は隠れた米どころで、特に奥出雲の「仁多米」は「東の魚沼、西の仁多」と評されている。
そして早朝、宍道湖にはいく艘もの船が出てしじみ漁をしているのが見える。大粒で肉厚、ふっくらと丸みを帯びた汽水湖ならではのしじみは、旨み成分が抜群に濃いぃのだ。少しくらい深酒してもこれで翌朝すっきり、よくできた循環である。
さて、水の都、松江だ。時間があればまず市役所6階の展望テラスに立ち寄るのをおすすめしたい。キラキラと光を反射する宍道湖の広がりが一望のもと。遠景の山並みとも相まってこの地の空気感が気持ちよく感じられる。

「宍道湖」市役所の展望テラスからは東西に長い宍道湖が気持ちよく見渡せる。水と大きな空と緑に囲まれたヌケのいい景観だ
さらには夕景。東岸には「とるぱ」という鑑賞スポットもあるのだが、宍道湖の夕陽は日本の夕陽百選にも選ばれている。空と湖面が次第に茜色に染まり、背景がシルエットとなる。いつもと違う時間軸に吸い込まれるようなマジックアワーだ。

「宍道湖」西の山に夕陽が沈む。対岸がシルエットになり、茜色に染まる空や湖面が刻一刻と表情を変えていく。湖畔に佇む島根県立美術館周辺も散策のおすすめスポット
そして松江といえば忘れてはならないのが、国宝「松江城」。関ヶ原の戦い後、慶長期に築城された天守は現存する12天守のひとつである。堅牢にして力強い外観もだが、内部の柱や梁、鉄砲狭間などを備えた実戦本位、質実剛健な構えは見どころ満載だ。

「松江城」地上5階、地下1階の天守は創建当時のまま。実戦を意識した質実剛健な造りの名城だ。そそり立つ石垣も大迫力
そして城を囲むお堀を遊覧船でぐるっと巡ることができる。屋根付きの小船で約50分。船上からは城下町らしい風情や森の自然、この街のしっとりとした情緒が実感できる。
今回取材は叶わなかったが、城下町風情が残る町の一角に、素朴な佇まいを見せる『うなぎY』でもうな重をいただいた。
『うなぎY』うな重

『うなぎY』うな重
付けダレの味がさらりと上品で、皮目から香ばしく焼かれたうなぎの旨みがよく感じられる。炊き立ての白飯とは別盛りでバウンドさせながらいただく。食べ進むほどにしみじみ旨い。地元民に愛され続けている味なんだろうなと思った。
大社にて整ったあとは”直会”うなぎといこう
島根・松江へと旅をしたらもう一歩足を伸ばしてぜひ訪れたいところがある。そう出雲大社である。『古事記』の中の国譲り神話に創建が記されているという日本を代表する古社。主祭神は、縁結びの神・福の神として名高い大国主大神だ。

『出雲大社(いずもおおやしろ)』
朝一番に向かい、4つの鳥居をくぐって神域へ。境内にはどこかゆったりした時間が流れ、厳かな神々の気配がするようでもある。二礼四拍手一礼。深くお参りをすると身も心も整うように感じられるから不思議だ。

『出雲大社(いずもおおやしろ)』
さらに西に1kmほどの稲佐の浜へも。神有月に八百万の神々をお迎えする浜だそうだが、抜けるような日本海のブルーがともかく清々しかった。

『稲佐の浜』
さて参拝のあとは直会である。出雲でもぜひ行きたいうなぎ屋がある。出雲市には神西湖という汽水湖もあり、実はここも昔からしじみやうなぎの産地だという。その神西湖のほとりにある一軒家が目的の『鈴屋』だ。
中は畳敷きの和の空間で、大きな窓からは湖面が見える。注文が入ってから炭火でじっくりと焼くうなぎを待つ時間もまた一興。聞けば、何よりうなぎ自体にこだわっているといい、鹿児島産という肉厚のしっかりしたサイズのうなぎが見事。
うな重(特上)7260円

『うなぎ処 鈴屋』うな重(特上) 7260円
バリッと力強く地焼きされ、締まった身が口でほどよくとろける。しっかりした旨みと濃いめの甘辛タレがよく合って、力強い旨さだ。
どこか悠久の時の中を行くような松江・出雲の旅。その中でいただくうなぎはやはり格別なのだった。
『出雲大社(いずもおおやしろ)』@出雲
主祭神は”だいこくさま”としても馴染み深い大国主大神で、あらゆる「良縁」を結ぶ神様として信仰を集めている。境内には多くの見どころがあり、八足門から垣間見える壮大な御本殿しかり、神楽殿にある日本最大級の大注連縄も圧巻だ。石造りの巨大な一の鳥居をくぐった先の神門通りには様々な店が並び、門前の街歩きが楽しい。

『出雲大社(いずもおおやしろ)』
[名称]『出雲大社(いずもおおやしろ)』
[住所]島根県出雲市大社町杵築東195
[電話]0853-53-3100
[交通]一畑電車出雲大社前駅から徒歩5分
『稲佐の浜』@出雲
旧暦10月、全国八百万の神々が出雲に参集されると言われる”神有月”。そのときに神々をお迎えする浜と言われ、「神迎神事」が執り行われる地でもある。国譲り神話、国引神話で知られ、「日本の渚・百選」にも選ばれている浜でもあり清々しい風が吹き抜ける。夕方には美しい夕景も望まれる。
[名称]『稲佐の浜』
[住所]島根県出雲市大社町杵築北2844-73
[交通]一畑電鉄出雲大社前駅から徒歩24分
炭火でじっくり焼き上げられた力強い旨さ『うなぎ処 鈴屋』@出雲
出雲大社から車で15分ほど。神西湖のほとりにある昔ながらの和の佇まいがいい古民家。鹿児島県産を主とする肉厚で健康なうなぎを厳選しており、炭火でじっくり丁寧に焼き上げる。外はパリッと中はふわっとジューシーな焼きも見事で、力強い旨さには惚れ惚れ。うなぎたっぷりの「ひつまぶし」もまた豪快にいただける。

『うなぎ処 鈴屋』
[店名]『うなぎ処 鈴屋』
[住所]島根県出雲市湖陵町差海1876-4
[電話]0853-43-2082
[営業時間]11時〜15時(14時最終入店)
[休日]火
[交通]JR山陰本線江南駅から車で6分
撮影/西崎進也、取材/池田一郎
※写真や情報は当時の内容ですので、最新の情報とは異なる可能性があります。必ず事前にご確認の上ご利用ください。
※画像ギャラリーでは、島根県の絶景と絶品うなぎ料理の画像をご覧いただけます
※月刊情報誌『おとなの週末』2026年8月号発売時点の情報です。

