ワサビ田で栽培方法を学ぶ石塚さん(左)と佐藤さん(茨城県大子町で)

写真拡大

 【茨城・常陸】大子町地域おこし協力隊の石塚和人さん(25)と佐藤望夢さん(25)は、生産者が1人となった町特産「八溝わさび」の後継者として茨城唯一のワサビ産地を守る。幼なじみで互いを知り尽くした2人。静岡や長野に並ぶ産地を目標に二人三脚で着実に歩みを進める。

 「八溝わさび」は、同町上野宮の八溝山麓で、八溝川湧水群の清水を生かして育てる沢ワサビ。棚田のように水を流す「畳石式」と呼ばれる方法で、農薬や肥料を使わずに育てる。水温は13〜15度と1年を通して温度差が小さい豊かな湧水が、香りと辛みに優れたワサビを生む。

 同地区は1960年代にワサビの生産が始まった。85年ごろ、地域おこしをきっかけに15人ほどで栽培を始めたが、高齢化で担い手は1人となり、ワサビ田は2009年に3アールまで縮小した。

 転機は石塚さんと佐藤さんの協力隊着任。石塚さんは農業を志す中でワサビ栽培に関心を持ち、佐藤さんを誘って静岡県を訪ねた。ワサビ農家から話を聞き、美しい景観に触れ「茨城でこの景色をやりたい」と決意。今の師匠である戸辺洋一さんと出会った。

 「一番は景色に引かれた。茨城でワサビを栽培したいと改めて思った」と石塚さん。地元の笠間市から大子町へ1年間通った後、協力隊に応募。石塚さんは25年6月、佐藤さんは26年5月に着任した。

 初めてワサビ田を見た佐藤さんは「この景色を1人で作ったという驚きがあった。だからこそ守りたい」と感じた。ワサビ田は山深く、獣が出ることもあるため「作業は1人より安心できるし、倍の速さ」と二人三脚で進める佐藤さん。1株ずつ手で苗を植え、最盛期に近い8アール前後まで作付けを戻した。

 ワサビは、町内の飲食店に卸し、ワサビ丼やピザの食材として味わえる。古民家カフェ「ダイゴカフェ」は、ワサビとアボカドを合わせた奥久慈わさび丼が人気だ。飲食店向けと個人向け販売が中心だが、道の駅などへ出荷も視野に入れる。

SNS発信 加工販売も視野

 「戸辺さんが守り続けてきたものを受け継いでいく。そのストーリーや人としての思い、全てが付加価値になる」と目を輝かせる石塚さん。ワサビをPRしようと、ホームページの作成や交流サイト(SNS)で動画配信も担う。

 生産量拡大に加え、加工や販売、観光資源の活用も視野に入れる。後継者を増やすため、町内でワサビ栽培に関心を持つ人と情報交換し、「組合のような形になれば、静岡や長野と戦える」と仲間づくりにも力を入れる。

 ※地方版掲載記事を電子版限定で全国公開しました。