W杯 の広告効果を最大化する「クリエイター活用」とSNSの強力な存在感

記事のポイント
2026年W杯は事前の懸念を覆し、英語・スペイン語中継ともに予想を上回る視聴率を記録した。
開催3カ国の勝ち進みや、ニールセンによる屋外視聴の測定範囲拡大が視聴者数を押し上げている。
残る広告枠は高騰が見込まれる一方、ブランドにはクリエイターやソーシャルメディアなど多様な参入機会が残されている。
建国250周年おめでとう、アメリカ。サッカー・ワールドカップ北中米大会の3つの開催国の1つであるアメリカは、サッカー男子代表チームからちょっとした贈り物を受け取った。
そしてこれは少々サプライズでもあったのだが、本当の贈り物はワールドカップがまさに大成功と呼ぶほかない結果になっているという事実だ。
国際サッカーの統括団体であるFIFA(国際サッカー連盟)にとっても、放映権を持つフォックス(Fox)とNBCユニバーサル(NBCUniversal)にとっても、そして最高水準のサッカーと驚くべき番狂わせを堪能できたサッカーファンにとっても大成功だった。
ワールドカップ開幕までの期間には、埋まらないホテルの客室、スタジアム周辺でのICE(移民・関税執行局)の摘発への懸念、法外なチケット価格をめぐる心配や悪いニュースの報道が相次いでいた。
2026年の試合の視聴率的な成功を踏まえれば、一部のメディアがすでに予測しているとおり、2030年大会の放映権をめぐる争奪戦は熾烈なものになると見て間違いない。
フォックスは2026年の放映権を、非常に安い4億8500万ドル(約728億円)で獲得した。2030年大会はモロッコ、ポルトガル、スペインで開催される予定だが、これらの国々はニューヨークのタイムゾーンより5〜6時間進んでいる(ロサンゼルスならさらに3時間加わる)点は覚えておく必要がある。
つまり、試合は午後の時間帯か、時差のある録画放送となり、おそらく視聴率も低くなるということだ。
なお、日本の場合、現地(サマータイム導入時)との時差は7〜8時間となり、現地の夕方から夜の試合が日本時間の「夜10時〜深夜・早朝」という比較的視聴しやすい時間帯に重なる可能性が高い。(この日本に関する記述は、原文には記載されていない補足情報である)。
予想を覆したワールドカップの視聴率好調
とはいえ、給水タイムなどもありつつ、2026年の大会はフォックスの英語中継とテレムンド(Telemundo)のスペイン語中継の両方で高い視聴率を叩き出した。
たとえば、テレムンドのグループステージの試合は、2022年のカタール大会の2倍超(平均で122%増)となった。アメリカ代表はグループステージ3試合を通じて平均約2200万人の視聴者を集めている(7月1日のノックアウトステージでの勝利の視聴率は、本稿執筆時点では入手できなかった)。
独立系エージェンシーと持株会社系エージェンシーの双方のメディアバイヤーたちは、この「予測を上回る配信(オーバーデリバリー)」にかなり満足していると口を揃える。
そして彼らは、放映権を持つ2社、さらにはこれらの試合を取り巻くソーシャルメディア、インフルエンサー、オーディオ、屋外(OOH)メディアのコンテンツも現在の過熱ぶりを踏まえ、いまから7月19日の決勝までに残された空き枠の広告費を、軒並み引き上げてくるだろうとみている。
「私はワールドカップに向けて慎重ながらも楽観的だったが、いまのところ期待を上回っていると思う」と、ホライズン・メディア(Horizon Media)でスポーツメディア部門のシニアバイスプレジデント兼ナショナル放送ディレクターを務めるアダム・シュワルツ氏は語った。
同氏は当初、FIFAがカーボベルデのような小国まで含めて出場チーム数を拡大したことを懸念していたという(カーボベルデの40歳のゴールキーパー、ヴォジーニャは、グループステージで強豪スペインと引き分けたあと、たちまちソーシャルメディア上のスターになった)。
「この大会に向けてはネガティブな見方もいくらかあったが、それ以外はすべてポジティブだったと思う」。
特にアメリカとメキシコの試合の視聴率は予測を大きく上回った、とシュワルツ氏は付け加えた。「カナダを含む開催3カ国がいずれも順当に勝ち進んでいることは、視聴率に大いに寄与している」と同氏は述べた。
「アメリカとメキシコがさらに勝ち進めば、その効果は続く一方だろう。視聴率の観点で我々が目にしてきた数字はどれも天文学的で、我々が大会前になんとなく予想していたものをすべて吹き飛ばすほどだ」。
開催国の躍進と新たな視聴率測定が追い風に
実名を明かさないことを条件に語ったある持株会社系のバイヤーは、2026年オーディエンスがより大きくなっているのは、ニールセン(Nielsen)が現在の屋外視聴(アウト・オブ・ホーム視聴)のカウント方法を変更したことも一因だと指摘した。つまり、過去のワールドカップはこの視聴率調査企業によってより狭い範囲で測定されていた、という含みだ。
「ニールセンが視聴率を算出する計算式を拡張したことで、これまでならカウントされなかったはずのオーディエンスがカウントされるようになっている。スペイン語と英語、両方のネットワークがその恩恵を受けていると思う」と、このバイヤーは述べた。
もちろん、放映権を持つ側にとっての皮肉は、視聴率が予測を上回ったからといって、ブランドやメディアエージェンシーのところへ戻って、保証していた視聴率以上の対価を要求できるわけではないという点だ。逆に、試合が予測を下回っていたなら、メイクグッド(補償枠)が必要になっていただろう。
「ノックアウトステージ、そして準決勝、決勝へと進むなかで、当然ながら、アメリカが勝ち進むほど、みんなにとって好都合だ」とシュワルツ氏は述べた。
「ヒスパニック側にとってのメキシコも同じことだ。この2チームが快進撃を見せれば、もう言うことなしで、配信量はとんでもないことになる。この2チームが勝ち上がれば、フォックスとテレムンドが手元に残っているであろう土壇場のインベントリー(在庫)にどう向き合うか、という点だけを取っても、すべてが変わるだろう。非常に高額になるだろうし、その枠に付随して別の何かも買わなければならなくなると私は予想している」。
広告主に残された土壇場の機会
本当の魅力は、スポーツがいまなお大規模なオーディエンスをまとめて届けてくれるという希少な価値にある、と説明するのは、フルサービスのエージェンシーであるフューズ・クリエイト(Fuse Create)でメディア担当バイスプレジデントを務めるリタ・スタインバーグ氏だ。
「それはますます見つけにくくなっている。だからこそ、あるコンテンツが数百万人をリアルタイムで一堂に集められるとき、それはいまだに大きな価値を持つ。私の見立てでは、この大会はワールドカップのインベントリーに付随するプレミアムの正当性を裏づけている。とはいえ、バイヤーはそれでもキャンペーン後の配信実績を注意深く見ていくだろう」。
直接スポンサーという正面玄関から入ることを見送った多くの広告主にとって、今回は代替の選択肢がはるかに豊富だった。クリエイターやインフルエンサーの強い存在感と、それに伴って生まれたソーシャルメディア上の話題のおかげだ。
「もっとも強い機会が得られるのは、おそらく、ライブの試合だけでなく、ハイライト、ソーシャルメディア上の会話、オーディオ、クリエイター、リテール、そして地域レベルのアクティベーションなど、より広いファンジャーニー全体にも姿を見せるブランドだろう」と、スタインバーグ氏は述べた。
マーケターにとって、土壇場の機会はまだ残されているのだろうか。先の匿名のバイヤーは、たとえフォックスとテレムンド以外で買う場合でも、多額のプレミアムを払う覚悟があるならば、という条件つきだと指摘した。
「今日、空き枠(アベイラビリティー)を見つけられるかって? ああ、売り切れてはいない。大会の1カ月〜1カ月半前に給水タイムが設けられたからね」と、このバイヤーは説明した。
「ネットワーク各社は、それをある程度まで確実に収益化できてきたはずだ。そのうえ、デジタルやソーシャルのプラットフォームを通じてなら、機会は常にある」。
[原文:Media Buying Briefing: It's a world party at the World Cup, unless you're looking to get in now]
Michael Bürgi(翻訳、編集:藏西隆介)
