今年、女子高校生殺害事件の被告に懲役27年の判決が言い渡された。判決への不満から男が法廷内に乱入する事態も起き、SNS上では「刑が軽すぎる」との声が相次いだ。

【映像】「二度と戻りたくない」受刑者が刑務所で生活している様子(実際の映像)

 日本の刑事司法をめぐっては、受刑者への処遇が手厚すぎるのではないかという意見が根強くある一方、再犯防止の観点から処遇の在り方を見直す動きも出ている。『ABEMA Prime』では、日本の刑務所と受刑者処遇の在り方について考えた。

■「加害者に優しい国は被害者にもっと優しい」

 刑務所での勤務経験があり、元法務官僚、龍谷大教授の浜井浩一氏は、日本の矯正行政が目指すモデルとしてノルウェーを挙げる。「世界で最も人道的で受刑者に優しい処遇をしているのがノルウェーだが、ノルウェーではそういう議論は起きない」。

 浜井氏はかつてNHKでノルウェー刑務所を取り上げた番組に携わった際、「こんなに受刑者を甘やかして大丈夫なのか、被害者は納得するのか」と問われた経験があると明かす。「台本にはなかったが、私が答えたのは『加害者にこれだけ優しい国は被害者にもっと優しい』ということだ。加害者に対して支援をすることが被害者を損なうことにはつながらない。社会全体が困っている人に優しくなるというのが最終的な目標だ」と語る。

 また、加害者に厳しくすることが被害者のためになるという発想については、「そういう議論には乗るべきではない。加害者に対して厳しくすることが被害者のためになるという社会は、我々が目指している社会とは少し違う。被害者がそう思わないで済む社会を目指すべきだ」と主張する。

 日本では近年、刑務所での処遇が「拘禁刑」を軸とした社会復帰型にシフトしつつある。浜井氏は、それにあわせて「被害者の心情伝達制度」が同時に導入されたと説明する。「被害者が受刑者に伝えたいことがあれば刑務官が聞き取りをし、受刑者に伝え、その反応も被害者に返す仕組みだ。ただ、良い結果も悪い結果もある。受刑者が『そんなことは知らなかった』と反応した場合も、そのまま被害者の家族に伝えることになるのでやりきれない気持ちになることもある」と、制度の難しさも示す。

■「圧倒的に人間の尊厳を失われるから、二度と刑務所には戻りたくない」

 株式会社TSUNAGUの代表で、元受刑者の松浦未来氏は、刑務所での経験を「圧倒的に人間の尊厳を失われる場だったからこそ、二度とあそこには戻りたくない」と話す。

 元受刑者の山下氏もこの意見に同意し、「刑務所に入って一番最初に感じたのは、職員の言葉遣いや受刑者への接し方があまりにも高圧的だったことだ。街で喧嘩している人たちが怒鳴っているような声がするので受刑者同士が揉めているのかと思ったら、職員が受刑者に対してそういう対応をしていた」と明かす。

 社会に戻るためには、厳しさと社会復帰のバランスを上手く取る方法はないのか。松浦氏は、「厳しい面もあって、優しく話を聞いてくれる人もいて、いいバランスが必要なのかなと思う」と答える。また、刑務所の中には受刑者に寄り添う刑務官もいると明かした上で、「そういう刑務官が他の刑務官に怒られる場面があった。刑務官の中でも上下関係があって、受刑者と私的に会話することが問題視されていた」と語る。

 これについて浜井氏は、「刑務官には法令の原則があり、受刑者と指示・命令以外の会話をしてはいけないという決まりがある。刑務官同士も受刑者の前での会話はできるだけ控えるよう定められていて、そこがコミュニケーションを完全に断ち切っている」と制度的な背景を解説する。

■刑務官の評価指標を変え、再犯率を下げる

 前参議院議員の音喜多駿氏は、厳罰化について、「一定の抑止力はあると思う。ただ、再犯の実態を見ても、経済的事情ややむを得ず戻ってきてしまうケースが多い。だとすれば、刑務官の評価指標、つまりKPIを変えるべきではないか」と提案する。

 「今は異常なし、問題なしというのが良い評価だったと思う。そうではなく、ちゃんと稼げる能力を身につけさせて刑務所に戻ってこないという結果を出した刑務官を優秀とし、給与アップや昇進につなげるという目標設定に変えるのがいい」との考えを示した。

 元経産官僚の宇佐美典也氏は「被害者に優しい社会と加害者に優しい社会という対比で語られることが多いが、日本で本当に加害者に優しいのは刑務官側ではなく一般人側ではないか。物事をなあなあで済ませ、問題があっても見逃そうという雰囲気が加害者を増長させ、大きな犯罪につながっていく。その傾向が日本では強いと思っていて、加害者に優しいのは誰かを考えた方がいい」と述べた。

(『ABEMA Prime』より)