日本ユーザー絶賛の仁川空港ラテ、韓国SNSでは「買わないで」の声…“団結して不買”の主張と現実のズレ

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韓国旅行の何気ないおすすめ投稿が、思わぬ方向に広がっている。

発端は、日本の投稿者がX(旧ツイッター)に投稿した一杯のドリンクだった。

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仁川空港に行ったら「絶対これ」として紹介されたのは、COFFEE@WORKSのバニラビーンズラテ。カップの底にバニラビーンズがたっぷり沈んだ写真も相まって、投稿は大きな注目を集めた。

コメント欄には、「次に韓国へ行ったら絶対飲む」「空港の楽しみが一つ増えた」「バニラビーンズがこんなに入っているのはすごい」といった好意的な反応が相次いだ。

韓国語でも「韓国人なのに飲んだことがない」「写真を見ると本当にバニラビーンズが多い」と驚く声があり、タイ語や英語でも「韓国に行きたくなった」「習慣になりそう」といった反応が見られた。

日本人旅行者にとっては、韓国旅行の始まりや終わりに楽しめる“空港の一杯”。とくに仁川空港という場所もあって、投稿はグルメ情報として自然に拡散されたように見える。

この投稿の反響は大きく、表示回数は2日で1300万件を超えた。

相次ぐ労災で批判されてきたSPCグループ

ところが、その流れに韓国語で別の文脈を差し込む引用投稿が現れた。

(写真=COFFEE@WORKS)

「ここを運営する企業は、5年間で死亡を含む産業災害事故を1000件ほど起こしたブラック企業です。韓国人は団結して不買しています。協力してくれますよね?」

こうした趣旨の投稿が拡散され、COFFEE@WORKSが韓国食品大手SPCグループの運営するコーヒーブランドであること、そしてSPCグループが労働災害問題でたびたび批判されてきたことが改めて注目された。

同じように、「韓国の代表的なブラック企業」「多くの韓国人が不買運動をしている」として、購入しないよう呼びかける反応もあった。

たしかに、SPCグループをめぐる労働災害問題は軽い話ではない。

2022年10月には、系列会社SPLの平沢(ピョンテク)製パン工場で労働者が機械に挟まれて死亡する事故が発生した。

その後も系列工場での事故は続き、2023年8月にはシャニー城南工場で作業中に重傷を負った労働者が死亡。2025年5月には始華(シファ)工場で50代労働者が作業中に死亡した。

さらに2026年4月にも、同じ始華工場で20代と30代の労働者2人が作業中に指を大きく負傷する事故が起きた。労組や市民団体は、SPC本社前で会見を開き、「繰り返される事故は偶然ではない」として再発防止策を求めている。

SPC側も安全経営強化を掲げてきたが、事故が繰り返されたことで、韓国社会ではそのたびに不買運動が再燃してきた。当時、当選者だった李在明(イ・ジェミョン)大統領も事故現場を訪れ、「同じ企業で事故が繰り返されるのは深刻な問題」と安全管理の強化を求めたことがある。

こうした経緯を考えれば、韓国の一部ユーザーがCOFFEE@WORKSの商品に違和感を覚えたこと自体は理解できる。日本人投稿者が悪意なく紹介したドリンクであっても、その背後にある運営企業を知る人にとっては、単なる「おいしそうなラテ」では済まないのだろう。

ただし、ここで見落とせないのは、SPCへの不買運動が韓国でどれほど実効性を持って続いているのかという点だ。

本当に「団結して不買」している?

引用投稿では、「韓国人は団結して不買している」という言い方がされていた。だが、韓国メディアの分析を見ると、実態はそこまで単純ではない。

韓国の『日曜新聞』は、韓国型不買運動の持続期間を扱った記事で、南陽乳業や日本製品不買運動など長期化した事例と比較しながら、SPCへの不買運動は相対的に短かったと指摘している。

メディアは、「SPCは何度も安全事故が繰り返され、不買運動も繰り返されてきたが、長期化しなかった代表例に挙げられる」と解説した。

その理由として挙げられているのが、SPC系ブランドの日常性だ。

(写真=COFFEE@WORKS)

メディアは「事故が繰り返されるたびに不買運動も再燃したが、SPCの市場での地位に大きな変化は見られなかった」とし、「業界では、パリバゲットやバスキンラビンス、ダンキンなどSPC系列ブランドが日常的な消費と密接に結びついているため、消費者が長期間にわたって不買を続けるのは容易ではなかったと分析している」と伝えた。

買わないという意思表示はできても、生活のなかで長く避け続けることは簡単ではない。つまり、「不買運動がある」のは事実だが、「韓国人が団結して不買している」とまでいえるかは、かなり微妙だ。

ここに、今回の騒動の奇妙さがある。

日本の投稿者は、仁川空港で飲めるおいしそうなラテを紹介しただけだった。そこに対し、韓国の一部ユーザーが「買わないで」と協力を求めた。

しかし、実際の韓国社会ではSPC系ブランドは依然として日常に深く入り込んでおり、不買運動も長く続きにくいと分析されている。

もちろん、SPCをめぐる労働災害問題を軽視していいわけではない。死亡事故や負傷事故が繰り返されてきた以上、企業の安全管理や責任を問う声が出るのは当然だ。

ただ、その問題意識が、何も知らずに旅行グルメを紹介した外国人投稿者にまで向けられるとき、少し違った違和感も生まれる。

しかも、韓国メディアではSPC不買運動が長期化しにくい事例として分析されている。にもかかわらず、SNS上では「韓国人は団結して不買している」と、あたかも韓国社会全体の意思であるかのように語られた。

一杯のバニラビーンズラテをめぐって見えたのは、正義感の強さだけではない。韓国SNS上で強く語られる不買と、実際には長続きしにくい消費行動との距離でもある。