記事のポイント
GoogleはW杯を活用し、AIモードやAI Overviewsを通じて「Google検索は何でも質問できるAI体験」であるという認識への転換を図っている。
ChatGPTやパープレキシティ、クロード、SNS検索の台頭で検索市場の競争が激化し、Googleは検索シェア維持に向けたブランド戦略を強化している。
W杯中継でAI検索を活用した解説を展開し、ライト層にもAI検索の実用性を体感させながら、2026年を通じてユーザー認識の変革をめざしている。


Googleのワールドカップ・ブランドキャンペーンは、ライブスポーツ最大の祭典に賭けた、ありふれたマーケティング施策のひとつではない。それは、ある兆候をも示している。

このテック大手は現在、大会期間を通じて、スペイン代表のラミン・ヤマル、元アメリカ代表ゴールキーパーのティム・ハワード、そしてFOXの解説者で元スウェーデン代表のスター、ズラタン・イブラヒモビッチの声を起用したブランドキャンペーンを展開している。放送は、リニアテレビ、YouTube、有料ソーシャルチャネルで行われている。

Google検索・マップ担当マーケティングバイスプレジデントのレベッカ・マイケル氏によると、このキャンペーンは、LLMであるGeminiがAIモードやAI Overviewsといった機能に統合されたいま、ユーザーがGoogleを単なる検索以上のことに使えると気づかせることを意図しているという。

「過去数年間で、Googleの検索機能は完全に進化を遂げた。しかし、人々には長年にわたり特定のスタイルで質問してきた習慣がある。今回のキャンペーンは、そうした認識を変え、視野を広げてもらうためのものだ」とマイケル氏は述べた。

「Google検索では本当に何でも尋ねられるということを、人々に理解してほしい。段落まるごとでも、複雑な質問でも、意識の流れのままでもいい」。

テック大手の定石となったテレビとソーシャル



テック大手がパブリックイメージを向上させるためにテレビやソーシャルメディアに頼るというのは、使い古された常套手段である。ブランドを構築する段階になると、テック系の破壊的企業(ディスラプター)が普段見せる、放送メディアや印刷媒体に対する軽視の姿勢は脇に置かれる傾向がある。

たとえばOpenAIとアンソロピック(Anthropic)は2026年初め、ユーザー向けAIプロダクトの本命として自らを位置づけようと、スーパーボウルの巨大なリーチを取り込もうと試みた

とはいえ、Googleがこうした戦略に頼る必要を感じていること自体が、これらの企業が登場して以来、検索の世界がいかに大きく変わったかを浮き彫りにしている。ChatGPT、パープレキシティ(Perplexity)、クロード(Claude)は、ますます多くのWebユーザーに利用されており、パブリッシャーは、Google検索トラフィックに依存しない未来へ向けて公然と備えを進めている。

一方で、若いユーザーは日常的な調べ物の最初の手段として、ますますソーシャルメディアプラットフォームを利用するようになっている。

「34歳の人々は、検索エンジンよりもソーシャルメディアで製品を調べる傾向が強い」と、調査会社GWIのシニアデータアナリスト、クリス・ビア氏は語った。

GWIのデータによれば、検索エンジンへのAI機能の追加は、ユーザーにおおむね受け入れられている。27%がAI Overviews付きの検索エンジンを毎日利用しており、43%は検索結果の品質に対する信頼は損なわれていないと答えている。

これはAIによるハルシネーション(幻覚)という本質的なリスクがあるにもかかわらずだ。だが、ユーザーが2022年以前よりも大きな選択の幅を享受しているという事実は変わらない。

その結果、スタットカウンター(Statcounter)の推計によると、Googleの検索エンジン利用シェアは、2024年末に10年ぶりに89%まで落ち込んで以来、90%の水準を行ったり来たりしている。

2026年を通じた重点目標に「認識の変革を」



Googleはこの脅威を認識している。「質問を投げかけられる選択肢やツールはたくさんある。そして我々は、それをGoogle検索でも同じようにできるのだと人々に知ってほしいのだ」とマイケル氏は述べた。

同氏は具体的な予算の内訳を明かすことは控えたものの、Google検索に対するユーザーの認識を変えることは、この夏だけでなく2026年を通じた重要な目標だと語った。

「何が可能なのかを人々に伝えたい」と同氏は説明した。

ワールドカップで証明するAI検索の実用性



もちろん、Googleがサッカーに乗り出すのはこれが初めてではない。同社のピクセル(Pixel)ブランドは、米国のNWSLとイギリスのWSLのスポンサーであり、Googleは米国サッカー連盟のスポンサーも務めている。

「Googleは、ワールドカップが絶大な訴求力を持つことを認識している。新しい検索体験の認知度を高めるだけでなく、それに対するより前向きな認識を確立したいと考えているのだ」と、モロク(Moroch)の統合検索ディレクター、ブライアン・パパス氏は述べた。

この最新キャンペーンは、NBCのNBA中継のために初めて開発された手法を借用している。FOXの試合解説者たちが、GoogleのAI検索機能を使って視聴者に追加の背景を提供するというものだ。

マイケル氏はこのアプローチについて、米国のワールドカップ視聴者や、ヨーロッパや南米の熱心なファンほどの専門知識を持たないライト層のファンに響くことを期待している。同時に、これは進化を遂げたGoogleのAI機能の「実用性」を証明する手段でもある。

「試合で何が起きているのか疑問に思うことがあるだろう。そのとき、Google検索がより多くの背景情報を教えてくれる、という発想だ」と同氏は述べた。

パパス氏は、Googleの反撃は、市場をリードする地位を守るために同社が打ち出す最後のキャンペーンにはならないだろうと示唆した。

「これらのブランドキャンペーンが、今回のアップデートを肯定的なものとして大衆に納得させるのに有効かどうかは、まだわからない。今後、このようなパートナーシップが増え、その目的を達成するためによりアグレッシブなメッセージングが展開されることが予想される」。

[原文:Google's World Cup brand counterattack highlights shifting search behavior]

Sam Bradley(翻訳、編集:藏西隆介)