女性を妊娠までさせ…”独身偽装”男に損害賠償命令「システム障害だ」判決文が明かす”呆れた嘘”
交際わずか6日後から始まった「金銭の無心」
既婚者であるにもかかわらず、独身であると偽って異性と交際を続ける”独身偽装”。当事者の人生を根底から破壊するこの卑劣な行為が、いま社会問題として大きな注目を集めている。
6月23日、東京地裁で一つの”独身偽装”トラブルに対する判決が下され、30代の男性に対し約460万円の損害賠償が命じられた。
日本テレビ(日テレNEWS)や毎日新聞などの報道によれば、被害女性(30代)は約2年にわたりこの男性と交際。二人は結婚の約束を交わし、不妊治療まで行っていた。その結果、女性は待望の妊娠を果たす。しかし、いつまで経っても、結婚話が進まないため、女性が男性を問い詰めた結果、男性に妻子がいることが発覚。追い詰められた男性は玄関で土下座して謝罪。女性は、弁護士を立てて男性を提訴した。
今回FRIDAYデジタルは判決文を独自に入手。内容を見てみると、男のあまりにも”呆れた嘘”の数々が克明に記されていた。
’22年8月、原告であるA子さんは知人の紹介で被告男性と出会った。交際開始にあたり、A子さんは「不倫は絶対に嫌」と釘を刺したが、男は「離婚しており独身である」と平然と嘘をついた。
そして交際からわずか6日後、男はこんな口実で金の無心を始めている。
〈財布を紛失し、仕事が多忙でキャッシュカードの再発行もできなくなったとして、原告に現金を貸して欲しい旨述べるようになり〉(判決文より。以下、〈 〉内は判決文)
A子さんはこれを信じ、同年末までに複数回にわたって合計約40万円を貸し付けた。さらに同年12月、2人は同棲用のマンションを探し、仮契約を結ぶが、ここでも男は〈財布を紛失したため手付金30万円を支払うことが出来ない状態〉と言い出し、A子さんに支払いを肩代わりさせた。同じ頃、〈取引先への香典が払えない〉とさらに10万円を借金。交際数ヵ月で、A子さんは男に計80万円ほどを貢がされる形となったのである。
「海外転勤」「指輪に6ヵ月」あの手この手で結婚を引き延ばし
男はカネを無心する一方で、巧みにA子さんに「結婚」を意識させていた。交際1年の記念日にはプロポーズすると宣言し、A子さんの両親とも食事をして〈真剣に交際している〉と挨拶。自ら婚姻届に署名・押印までしていたが、住所欄については〈同棲を開始したタイミングで住所を記入する〉とごまかして未完成のままにし、決して役所に提出しようとはしなかった。
さらに判決文からは、男がいかにして入籍を引き延ばし続けたか、その場当たり的な嘘の数々が読み取れる。
結婚指輪を注文したが〈その引渡し迄に6ヵ月程度かかる〉と言いわけを。さらに、このころ職場でアメリカへの転勤があることを伝えていたが、突如として〈転勤先が、アメリカではなく、カナダになる可能性がある〉〈信用調査が通過せず、転職が上手くいっていない〉〈転職先のプロジェクトが頓挫した〉〈プロジェクト担当者及び日本のトップが首になった〉などと、到底事実とは思えない理由を次々と並べ立てたのである。
しびれを切らしたA子さんが貸付金の返済や結婚について説明を求めると、男は〈転職の話に決着がついてから入籍するのが筋〉と言いくるめた。そして、体に負担のかかる顕微授精などの不妊治療にも同意し、クリニックには『私たちは事実婚関係にあります』の欄にチェックを入れた申立書などを提出。そして’24年7月、A子さんはついに妊娠した。
しかし、妊娠判明後も、結婚の話は一向に進まない。不信感を募らせたA子さんは’24年9月、せめてこれまで貸し付けたカネを一度清算してほしいと男に要求し、男は期日までの返済を約束した。
ところが、期限を過ぎても入金はない。問い詰めるA子さんに対し、男はこんな言いわけをした。
〈送金額が大きいため、後輩に立ち会ってもらい(中略)送金した〉〈銀行のシステム障害で入金がされていなかった〉
これに疑念を抱いたA子さんが、男の言う”立ち会った後輩”に直接連絡を取ったことで事実が発覚する。後輩がA子さんに明かした真実はこうだ。
〈A子が妊娠して精神的に不安定になり、被告に対して400万円の慰謝料を請求しており、300万円は振り込んだが、100万円足りないので、貸して欲しいと頼まれた〉
なんと男は後輩に対して、A子さんから不当な慰謝料を請求されているといった大嘘をつき、同情を引いてその後輩からも100万円を借りていたのである。借りた100万円はその後、A子さんへの「返済」としてネットバンキングで送金されている。
つまり、男は自らの身勝手な嘘を隠すために、後輩まで騙して100万円を借り入れ、そのカネをA子さんに送金。泥沼の借金工作を行っていたのだ。
ついにバレた「既婚」の事実と、法廷での身勝手な主張
度重なる不審な言動と嘘に限界を迎えたA子さんは’24年10月、知人を同席させて2人で男を問い詰めた。報道によれば、知人から「(男のこれまでの嘘を)全部知っているよ」と切り出された男はついに観念。現在も妻と子供がいる既婚者であり、離婚もしていないことを白状し、最後は玄関で土下座したという。
同棲用マンションの契約も、転職の話もすべて虚偽。結婚を信じて不妊治療に取り組み、ようやく授かった新しい命。しかし、その父親となる男は交際直後からカネを無心し、息を吐くように嘘を重ねる妻子ある既婚者だったのである。「既婚者とは交際しない」と伝えていたにもかかわらず、独身と偽られて妊娠に至り、その直後に既婚者だと明かされた一連の不法行為によって、A子さんは抑うつ状態になってしまった。
その後、舞台は法廷へと移る。貞操権侵害や婚約不履行を訴えるA子さんに対し、被告側はこんな反論を展開した。
〈真実夫婦として共同生活を営む意思で求婚した事実はなかった〉〈A子が精神的に不安定であったため、別れ話を切り出すことができなかった〉
自らの責任を被害者に転嫁する身勝手な主張に終始したのである。
この自己中心的な主張を、裁判所が認めるはずもなかった。
判決では、2人が交際当初から結婚を前提に不妊治療などを進めてきた事実から、
〈原告A子と被告との間で、法的保護に値する婚約が成立したものと認められる〉
と認定。男性側が既婚者であった点についても、
〈婚約時に、相手方に配偶者がいることを知らなかったものとの関係においては、配偶者のある者との婚約も法的保護に値するものと解するのが相当である〉
として、相手が既婚者だと知らずに結んだ婚約は法的に保護されるとの判断を示した。そのうえで、男の言い分を、
〈原告A子の心情への配慮を欠いた身勝手な主張に終始しており、被告が何らかの正当な理由なく原告A子との婚約を破棄したことは明らかである〉
と厳しく非難し、慰謝料400万円などを含む計約466万円の支払いを命じた。
「財布を紛失した」「システム障害だ」──幼稚な嘘で塗り固められた男の行動は、1人の女性の人生と心を深く傷つけた。しかし現状の法律ではこのような”独身偽装”に対して直接的な刑事罰を問うことはできない。きわめてやるせない事件である。
現在、女性はシングルマザーとして女の子を育てているという。

