[6.29 W杯決勝T1回戦 日本 1-2 ブラジル ヒューストン]

 延長戦も視野に入っていた。日本代表の森保一監督は1-1の同点に追いつかれたあとの後半21分にMF堂安律、MF中村敬斗を下げてDF菅原由勢、DF鈴木淳之介を投入。両ウイングバックをそのまま入れ替えた。

「交代の意図としては、ブラジルがシンプルにサイドからクロスということで、戦術的に明確なことをしてきていた」。ブラジルは後半開始から中盤のMFルーカス・パケタに代えてFWエンドリッキを投入し、4-4-2にシステムを変更。両サイドバックも使ったサイドからのクロスを徹底してきた。

 ブラジルのサイド攻撃に押し込まれる日本は後半11分、センターバックであるDFガブリエル・マガリャンイスの左クロスからボランチのMFカゼミーロにヘディングシュートを決められ、失点。「実際、1失点目はクロスからだった。そういう部分も含めて、ブラジルがやろうとする意図を止めて、かつ自分たちの流れに持っていくということで交代のカードを切った」と説明した。

 ブラジルのカルロ・アンチェロッティ監督に対し、後手に回った感もあったが、左ウイングバックに入った鈴木淳はブラジルの右ウイングであるFWラヤンらにファウル覚悟で粘り強く対応。右ウイングバックの菅原もブラジルのキーマンであるFWビニシウス・ジュニオールに周囲と連動しながら対応した。ブラジルも同じタイミングでFWマテウス・クーニャに代えてFWガブリエル・マルティネッリを投入し、4-3-3気味の布陣に戻したこともあり、試合は前半同様の膠着状態に。森保監督は後半33分、MF伊東純也、MF鎌田大地に代えてFW町野修斗、MF田中碧を投入した。

 鎌田の交代は内転筋を痛めた影響もあり、間違いなく誤算だった。それでも1-1の展開が続く中、もう1枚の交代カードは切らずにいた。FW上田綺世やFW前田大然には明らかに疲労の色も見えていたが、我慢を続けた。

「試合の終盤の考え方としては、延長を見据えて交代カードを1枚残しながら、延長に入ったら(交代枠の)プラス1もうまく使いながら戦っていくことは準備していた」。延長戦になれば、6枚目の交代枠も使える。延長で勝負をかけるプランを描いていたが、後半アディショナルタイム5分に失点。残されたわずかな時間で同点ゴールを奪うべく、前田に代えてFW小川航基という最後のカードを切った。

「自分たちが1点を取りに行く交代で最後の交代を使うのか、もし失点した場合にどういうカードを切るのかというのは準備していたうえで、延長のほうが濃厚かなと思って試合は見ていた」。結果的に裏目に出た形となったが、1-1の均衡した展開で動きづらかったのも事実。大会前からシャドーのポジションでケガ人が相次いだ影響も重くのしかかった。

(取材・文 西山紘平)