AI 画像に飽きた消費者を魅了。スキンケアブランドが低予算手作り撮影でPR成功

記事のポイント
ノクターナル・スキンケアは、AI時代にあえて「手作り感」のある低予算クリエイティブを打ち出している。
約1万5000円未満で制作した「サクラシーズン」キャンペーンは、過去最高の注文数と新規顧客獲得を記録した。
創業者自身によるDIY感のある撮影や舞台裏感が、高予算広告以上の共感とエンゲージメントを生んでいる。
2024年にローンチしたノクターナル・スキンケア(Nocturnal Skincare)の共同創業者兼クリエイティブディレクターのダニエル・キヨイ氏は、同ブランドのクリエイティブに対する考え方について、AIっぽいビジュアルが氾濫する時代にあえて「手作り(handmade)」に見えることをめざしていると語る。
100ドル未満で作った「サクラシーズン」
最近のDIYキャンペーンの例として、2026年の春にノクターナルが行ったキャンペーンがある。キヨイ氏は同ブランドの「サクラシーズン(Sakura Season)」キャンペーンを100ドル(約1万5000円)未満で撮影した。
ノクターナル・スキンケアのブランディングは、日本のミニマリズムと北欧の機能性を融合させた「ジャパンディ(Japandi)」というコンセプトを軸にしている。現在販売している主力製品は1つで、「ポーラーナイト・リニューアル(Polar Night Renewal)」というアンチエイジング美容液だ。ノクターナルによれば、これは体の夜間の概日リズムに合わせて働くよう設計されているという。
サクラシーズンキャンペーンは、創業者たちの日本と北欧のルーツを反映しているだけでなく、限られた予算でシーズンキャンペーンを作り上げるために必要なすべての作業を創業者自身が担った好例でもある。このキャンペーンは、話題となった日本風のノットバッグ(knot bag)の購入者に同ブランドの美容液をプレゼントするというプロモーションとともに展開された。
AIに頼らず「手作り感」を追求
キヨイ氏は、競争の激しいカテゴリーの新興ブランドとして、生成AIへの反発が勢いを増すなか、コンテンツ制作において「手作りの見た目と質感」を打ち出すことがとりわけ重要だと述べた。
また、このキャンペーンの費用は、主にオーガニックコンテンツに頼り、広告をほとんど出さないという、ノクターナルスキンケアのマーケティング支出に対する全体的なアプローチとも一致している。
しかしAIを使わなくても、少しの創意工夫で高品質なビジュアルを生み出すことは可能だとキヨイ氏は語った。
「もちろん、日本に行ってそこでコンテンツを撮影できたら最高だったが、うちは小さなブランドなのでそれはできなかった」と彼は述べた。その旅には数千ドル(約数十万円)の費用と長い移動時間がかかっただろう。
「だから、次善の場所として、ロサンゼルスのハンティントン・ガーデン(Huntington Gardens)に行ったんだ」。
キヨイ氏が、数多くのブランドのビューティーキャンペーンを手がけてきた経歴を生かせたことも役立っている。タルト・コスメティクス(Tarte Cosmetics)の元クリエイティブディレクターであるキヨイ氏は、自身のインディービューティーブランドのインキュベーター、マジック・ダスク(Magic Dusk)も運営している。
キヨイ氏は、ロサンゼルスにとどまりながらも、キャンペーンが本物の日本庭園を舞台にしているかのように見え、感じられるようにしたかったと述べた。そこで彼は庭を歩き回りながら生の映像を撮影し、そのなかにはノクターナル・スキンケアの製品を前景に配したものも含まれていた。
「スタジオで桜の花を少し飾って、それで終わりにするようなものにはしたくなかった」と彼は語った。
撮影予算のもっとも大きな部分を占めたのは、キヨイ氏のハンティントン・ガーデンの入場チケットで、34ドル(約5100円)だった。
あとから製品を別撮りするため、キヨイ氏はさらに25ドル(約3750円)で桜の花といくつかの画材を購入した。残りのコストは、追加撮影にかかった時間と労力だった。
「文字どおり、キッチンカウンターにシームレスペーパーを1枚広げて、そこで撮影した。それから、見出しを日本の墨で手書きして、デジタルでスキャンした」とキヨイ氏は述べた。
新規顧客82%、過去最高の注文数
ノクターナルは現在、主に自社のD2Cサイトを通じて販売されており、ノードストローム(Nordstrom)のマーケットプレイスでも取り扱われている。同ブランドは最近、Amazonでも販売を開始した。
キヨイ氏によれば、サクラシーズンセール期間中に購入した顧客の約82%、つまり10人中8人がノクターナルにとって新規顧客であり、これは同ブランドにとってこれまでで最大の単一イベントでの新規顧客獲得を意味する。
同社はまた、単日の注文数でも記録を更新し、2025年のブラックフライデー・サイバーマンデーを65%上回った。サクラシーズンセールは、ブランド史上あらゆるプロモーションイベントのなかで最高の注文数を生み出した。
サクラシーズンキャンペーンはまた、最初の7日間にソーシャルプラットフォーム全体で19万人近くにリーチした。しかし、おそらくもっとも重要だったのは、購入後のエンゲージメントだとキヨイ氏は述べた。
キヨイ氏によれば、現在も継続中であるノクターナルの購入後フォローメール(全4通のステップメール)は、サクラセールの顧客のあいだで平均開封率50%近くを記録しており、これは業界ベンチマークの約2倍だという。
キヨイ氏は、実際の売上を後押ししたキャンペーンのもうひとつの要素は、46ドル(約6900円)のジャパンディバッグを宣伝し、それに美容液を無料で付けたことだと述べた。この日本風のバッグデザインは同ブランドにとって思いがけないヒットとなり、2024年後半にキヨイ氏が投稿したノットデザインのバズった動画を受けて、要望が多かったため再販された。
「(美容液を)無料で渡すのは間違いなく長期的な賭けだった」とキヨイ氏は述べた。そのセールからすぐにブランドが利益を得られる保証はなかったからだ。しかし1カ月後、ノクターナルはすでに、それらの新規顧客の一部が戻ってきて、美容液のサブスクリプションを開始する様子を目にしている。
キヨイ氏は、このバッグ付きギフトの試みは、日本や北欧にインスパイアされたアイテムをさらに発売するというノクターナルの計画の一環だと述べた。同ブランドは、東京の家族が手作りするネイルブラシを販売している。
低予算クリエイティブが映える理由
限られたリソースしか持たない小規模ブランドとして、ノクターナル・スキンケアのクリエイティブ撮影への取り組みは、このカテゴリーの多くの企業が直面する現実を反映している。
クリエイティブエージェンシーのVMLでチーフストラテジーオフィサーを務めるミシェル・バウマン氏は、会話を生み出すキャンペーンこそが、騒がしいソーシャルメディアプラットフォーム上で際立つ傾向があると述べた。
「消費者が本物らしさと共感性を強く求めていることはわかっている」とバウマン氏は述べた。彼女によれば、消費者は創業者の歩みを追いかけるなかで、自分もそのブランドのストーリーの一部であるように感じたいと思うことも多いという。だからこそ、生々しい舞台裏のビジュアルは、洗練された高予算の写真撮影よりも多くのエンゲージメントを引き出せるのだ。
キヨイ氏は、サクラシーズンキャンペーンは、予算に優しいマーケティングクリエイティブに対するノクターナルの長期的な取り組みを試すものだったと述べた。今後予定されているミッドサマー(Midsommar)キャンペーンでは、スウェーデンにルーツを持つ共同創業者のケイティ・ハッサン氏が、北欧をテーマにした撮影を主導する予定だ。
キヨイ氏はさらに、限られた資金とロケーションにもかかわらず、この春のキャンペーンが反響を呼んだのは、洗練されていながらもDIY感のある質感のためだと考えていると付け加えた。
「オーダーメイドのようでありながらローファイな感じになった。それは、私がiPhoneで撮影したことがわかるからだ」と彼は述べた。
[原文:How Nocturnal Skincare created a spring campaign for under $100]
Gabriela Barkho(翻訳、編集:藏西隆介)
