[本田泰人の眼]課題だらけのアイスランド戦。なぜ背後を狙わないのか。上田綺世が孤立したのは周りの責任だ
鎌田はパレスでカップ戦のタイトルを手にし、一発勝負のトーナメント戦における強さを証明してきた。そして彼には、ピッチ全体の状況を瞬時に把握し、ゲームをコントロールできるサッカー頭脳がある。
いわゆる“パレス流の5−2−3”は、オリバー・グラスナー監督がチームに導入した、高度に洗練されたプレッシングとゾーンディフェンスが強み。単に自陣に引いて守る5バックではなく、計算されたゾーンでスペースを消し、連動したハイプレスで相手の自由を奪い取る。
そのためには中盤のバランスが鍵になる。ただ、チームの心臓である遠藤航のコンディションは、今回のアイスランド戦を見ていても、動きのスピードが足りず、正直かなり不安に映った。オランダ戦までにどこまで上げられるか。
今回の26人の中に「守備のスペシャリスト」と言えるボランチは、遠藤と佐野海舟くらいしかいない。田中碧は、頑張ってはいるけれど守備職人とまでは言い難い。
遠藤が下がって、瀬古歩夢がボランチでプレーしてアピールしていたけれど、オランダを相手に中盤をどう回すかは、かなりの不安が残る。だからこそ、ボランチにディフェンス力のある板倉を上げるか、あるいは瀬古をそのままボランチに据えるような、そんな泥臭い5−2−3が、オランダ戦のような本番ではリアルに必要になってくるし、今回の26人はおそらくそれができるように、センターバックの頭数を揃えているようにも感じられるね。
本大会では厳しい戦いが予想されるなかで、僕が注目したいのは、塩貝健人だ。
代表ではまだ、そこまで多くプレーしていない。でも、途中出場だったアイスランド戦を見て、ワールドカップのメンバーに選ばれた理由がよく分かった。短い出場時間でも、「俺は戦うんだ」「俺がやってやるんだ」という姿勢を全面に出して、泥臭く必死にスプリントを繰り返していた。
どんなに相手に阻まれようが、愚直に前へ行く。プレー面での結果は出ていなくても、あのピッチに立った時の「戦う姿勢」という点においては、今の代表メンバーの中で間違いなく、彼が最も強く感じさせてくれたよ。
かつての岡崎慎司を激しくしたようなタイプだね。主力組は、綺麗にボールを回すことばかりに固執せず、塩貝のこういう泥臭い姿勢をもう一度、見習うべきだ。
ワールドカップでは15〜16人の世界基準の主力と、彼らを支える泥臭いバックアップメンバーが一つになって“5−2−3の逃げ切り”が完成する。本番では、綺麗さではなく泥臭さが勝敗を分ける。落選したメンバーのためにも、選ばれた人間は自覚を持って、もう一度ネジを締め直し、オランダとの初戦に向かってほしい。
▼アイスランド戦の採点
スタメン)
GK 鈴木彩艶/6.0
DF 冨安健洋/6.5
DF 吉田麻也/6.0
DF 板倉 滉/6.0
MF 遠藤 航/5.5
MF 田中 碧/6.0
MF 堂安 律/6.0
MF 中村敬斗/6.5
MF 久保建英/6.5
MF 伊東純也/6.0
FW 上田綺世/6.0
途中出場)
DF 伊藤洋輝/6.0
DF 長友佑都/5.0
DF 瀬古歩夢/6.0
DF 菅原由勢/6.0
FW 小川航基/6.0
FW 後藤啓介/6.0
FW 塩貝健人/6.0
DF 渡辺 剛/6.0
GK 早川友基/−
DF 谷口彰悟/−
MF 佐野海舟/−
監督)
森保 一/6.0
【著者プロフィール】
本田泰人(ほんだ・やすと)/1969年6月25日生まれ、福岡県出身。帝京高―本田技研―鹿島。日本代表29試合・1得点。J1通算328試合・4得点。現役時代は鹿島のキャプテンを務め、強烈なリーダーシップとハードなプレースタイルで“常勝軍団”の礎を築く。2000年の三冠など多くのタイトル獲得に貢献した。2006年の引退後は、解説者や指導者として幅広く活動中。スポーツ振興団体『FOOT FIELD JAPAN』代表。
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