53歳でスペインに単身留学し、現在はジョージアに滞在中のRitaさん(56歳)。海外で暮らすようになって、日本にいた頃には「当たり前」だと思っていた家族との距離感や時間の使い方への価値観が、近頃は少しだけ変化したのだそう。Ritaさんが感じた海外ならではの家族や老後、時間への向き合い方について教えてもらいました。

日本と違う「家族」の距離感

日本の家族は、子どもは自立したら、親は自分で自分の生活を守る。それが成熟した社会の1つの形だと感じていました。

【写真】街中で手をつないで歩く夫婦

でも、私が過ごしたスペインでもジョージアでも、そして各国から集まる留学生仲間の話を聞いても、家族との時間は日常の中心にあることがほとんどでした。

週末は親戚や祖父母を交えて大勢で食事をするのが当たり前。大人になってもクリスマスを家族と過ごすのはごく自然なこと。3世代+親戚が集まるにぎやかなテーブルは、「家族は離れて、お互い自立して暮らすもの」という価値観とは、まったく違った温度を感じるものでした。

ただ、若い世代の人たちのなかには「ちょっと大変に感じる…」と、こっそり話してくれた子もいました。近い関係ゆえの気疲れや遠慮もあるのだと思います。でもその距離感さえも、「家族がいる」という安心感の1つなんだと、私は外から見ていて思いました。

海外の「老後」は共同体の結びつきが強い?

日本では老後に向けて「自立」と「迷惑をかけないこと」がしばしば強調されます。それは大切な考えですが、どこか孤立しやすい側面もあるように感じていました。

一方で海外では、年齢を重ねても、家族や共同体のなかで役割をもち続けているように見えます。

祖父母は孫を迎え、孫は祖父母を頼る。その循環のなかで、年齢は重さではなく、豊かさとして存在しているように思えます。

「時間の余白」が暮らしを豊かにする

日本にいた頃は、「時間をどう効率よく使うか」に追われることが多かった自分がいました。

でも海外での暮らしは、時間との距離をほどよく保つことの心地よさを教えてくれました。待つ時間、座る時間、だれかと話すまでの間の時間。そんな余白が、結果として日々を豊かにしてくれます。

もちろん「のんびり=いい」という単純な計算だけではありませんが、それでも「急がなくてもいい瞬間がある」という感覚を知ってしまうと、忙しい日常も、もう少しゆったりした目で見られるようになりました。

国や文化によって形が違っても、どこか共通するのは「人として生きる時間の質」。

家族も老後も時間も、「もっと自然な形で存在していいもの」と感じるようになりました。

どの考えがいい悪いではなく、見えなかったものが見えてきた今、自分にとってなにが心地よいかを受け入れる余裕をもてた。そんな気がしています。