ビジネスパーソンとしての実行力(1) 自分にベクトルを向ければ、実行力は高まる/村上 和
多くのビジネスパーソンは、日々、ルーティンワークと呼ばれる同じような仕事を繰り返していますが、当然、新しい結果を得るためには、新しいことを行う必要があります。
そして、成長意欲があり、チャレンジ精神をもっている人は、新しい結果を出したい、これまでできなかった目標を達成したい、新たなビジネススキルを身につけたい、といった意欲のもと、さまざまなことにチャレンジを開始するわけです。その結果がどうであれ、自分自身の成長のために何かをやろうと考えることは素晴らしいことで、それだけでも「高い意欲を持っている」と高評価につながります。
しかし、残念なことに、「これをやりたい」と決めても、最後までやり遂げることができる人は、ごくわずかであることが現実です。やると決めたことが実行されるだけでも2割から3割と言われることもあり、ましてやその行動によって、目標が達成されたという例は本当に少ないことは、誰もが実感することだと思います。
例えば、TOEICの点数を900点まで伸ばしたいと思って参考書や問題集を購入しても、20ページまで進んだところでやめてしまう。課金型のAIトレーニングを試してみても、900点にたどり着くまで継続できない。有名な通信講座でも、最初に200人の申し込みがあったとしても、最後まで提出を続けるのは10人に満たないほどだそうです。
武道の世界でも同じです。極真空手の黒帯取得者は全体の5%未満で、脱落が最も多いのは緑帯だといいます。緑帯は上級者になるため、試合には(自分より下のクラスの)初級・中級がいません。格上の相手とばかり戦うことになります。結果、恐怖心が芽生え、試合を避けるようになり、稽古にも足が向かなくなります。組み手の稽古を1カ月しなければ、感覚は一気に鈍ってしまいますので、さらに足が遠のきます。そうして辞めてしまうのだそうです。
私個人の経験からもそう思います。私は営業の仕事をテレコール営業でスタートしたのですが、やる気はあっても、テレコールを毎日100本掛け続けられる人は私以外いませんでした。
実行意欲はあっても実行されない?
実行意欲とは、「頭がよくなりたい」と思うのと同じで、誰もが持っている欲です。ところが、資格の勉強を始めたり、新しい習い事に挑戦したり、ジムに入会したりと、最初の一歩を踏み出す人は多いものの、最後までやり切れる人はほんのわずかです。つまり、実行意欲と実行力とはまったく別物で、実行意欲があれば実行されるとは限りません。むしろ、過度な自信や自負心は、考え方を間違えると実行の邪魔になる場合もあります。
やる気を持って始める人は多いのに、実行し続けられる人はごく少数。この「実行意欲はあるのに継続できない」という事実は、あらゆる分野に共通しています。
誰もが実体験として「思うようにいかない」と思った経験があるはずです。これは、実際の成長は下図のようにS字型のカーブを描くからだとされており、その曲線がSの形に似ていることからシグモイド成長曲線と呼んでいます。

この図のように、成長は一直線ではありません。成長には時間がかかり、ほとんどの場合、停滞期があります。成長に向かっているのだけど、結果がついてこない、アウトプットが出にくいといった状況がしばらく続きます。
営業職でよく言われる「2年目のジンクス」もそのひとつといえます。最初の1年はなんでも素直に従い、謙虚さもあるので伸びるのですが、2年目になると謙虚さが薄れ、シグモイド曲線で表される停滞期に入ります。
ここで、いわゆる実行力が伴わない人は、人のせいにしてしまうわけです。ほとんどの人は、うまくいかない原因や目標達成できない理由を外に求めます。不景気だから、会社の仕組みが悪すぎる、投下予算が足りない、うちの会社では無理、こうした言い訳が山のように出てきます。これでは、自分の成長にはつながりません。自分が変わることを否定するわけですから、そこに成長も進歩もありません。
しかし、この停滞期に諦めずに踏ん張れば、停滞期を突き抜けることができます。それは単に耐えるだけでは抜け出すことはできません。脳をバージョンアップさせることが必要です。バージョンアップするというのは、環境や他人のせいにするのではなく、思考の矢印をすべて自分に向けることです。
「このままではうまくいかない。どうしたらいいだろう」と必死に考えることです。解決策は自分の中にしかありません。外に求めるのではなく、自分に向けるのです。
その結果、脳がバージョンアップし、急にコツを掴み始めます。うまくいかない原因は自分にあると考え、実行し続けた人だけがこの変化を経験できるのです。
原因を自分に向ければ、やるべきことも見えてきます。これまでやってきたこととは全く異なるやり方を選択することも可能でしょう。私は、本当の実行力とは、この真逆をやる力だと考えています。同じことを、同じようなトーンで、同じ回数やっていても、それは本当の実行力とはいいません。
次のコラムで詳しくお話しましょう。
