記事のポイント メンズウェア市場の二極化に対し、シチズンズは中価格帯の「クワイエット・ラグジュアリー」で勝負に出ている。 小売パートナーの需要と自社工場の柔軟性が、新たな製品展開の推進力になっている。 Z世代を狙うエイゴールディはカルチャー軸での訴求を重視し、ブランド認知拡大を狙っている。
カリフォルニアを拠点とするアフォーダブルラグジュアリーブランド、シチズンズ・オブ・ヒューマニティ(Citizens of Humanity)は、ハイエンドなウィメンズウェア市場で確固たる地位を築いてきた。しかし同社は、広範囲なメンズウェア市場において明確なギャップが存在すると見ており、それを埋めるべく本格的な展開を進めている。シチズンズ・オブ・ヒューマニティとさらに若い層向のけ姉妹ブランドであるエイゴールディ(Agolde)を統括するシチズンズ・オブ・ヒューマニティ・グループ(Citizens of Humanity Group)のCEO、エイミー・ウィリアムズ氏によれば、メンズファッション市場は極端に二極化しているという。一方には価格が4桁台に達するハイエンドのラグジュアリーブランドがあり、他方には品質も価格も低いファストファッションブランドがある。2024年には、米国の消費者の40%がファストファッションブランドで購入しており、ハイエンドブランドはさらに富裕層を狙って価格を引き上げている状況である。

クワイエット・ラグジュアリーで中間層狙う

シチズンズ・オブ・ヒューマニティのメンズラインはその中間層を狙っており、200〜300ドル(約3万2000〜4万8000円)の価格帯で、パーシヴァル(Percival)やメゾンキツネ(Maison Kitsune)といったブランドと競合する領域をめざしている。新たに拡張されたメンズウェアの製品はリネンやカシミヤなどの素材を用いた、洗練された「クワイエット・ラグジュアリー」スタイルが中心だ。一方、エイゴールディは、超バギーなジーンズなどZ世代に人気のシルエットで、より大胆でファッション性の高いデザインを打ち出している。ウィリアムズ氏は、将来的にはメンズ事業が同社の収益の約30%を占めることを期待している。同グループは、両ブランドでのメンズ顧客層の拡大に向けてそれぞれ異なる戦略を展開している。シチズンズ・オブ・ヒューマニティでは、メンズ事業は10年以上前から展開しているが、総売上高のわずか5%を占めるに過ぎず、既存の顧客との関係を深めることに注力している。「セルフリッジズ(Selfridges)のメンズ部門では、当社はすでにトップクラスの売上を誇っている」とウィリアムズ氏は述べる。これは限られた製品数での結果であり、「すでに存在する男性顧客にさらに多くの商品を購入してもらうことが鍵だ」という。

小売パートナーの後押しと市場成長を追い風に

ウィリアムズ氏によると、メンズラインの拡大が可能となったのは、ブルーミングデールズ(Bloomingdale’s)やホルト・レンフリュー(Holt Renfrew)といった小売パートナーからメンズ製品に対する強い需要が伝えられたことだったという。このような喚起とメンズウェア市場全体の成長が相まって、今回の投資のタイミングが決定された。シチズンズ・オブ・ヒューマニティでは、卸売チャネルが拡張メンズラインの主要販売経路となる予定であり、D2Cの比率は全体売上の約16%である。メンズラインのマーケティングでは、同社チームが「ファブリックストーリーズ(Fabric Stories)」と呼ぶキャンペーンに注力している。そこでは、実在の男性たちがシチズンズ製品の素材や品質について語っている。既存ファンを対象にしたキャンペーンには、スケーターでありアーティストでもあるスティーブ・オルソン氏が登場した事例もあり、コンテンツは合計で約30万人のフォロワーを抱える同社の複数のSNSアカウントに投稿された。
「シチズンズのメンズ対象マーケティングのメッセージは、品質、製法、製品、そして職人技が中心だ」とウィリアムズ氏は述べる。

Z世代とカルチャーを重視するエイゴールディ

一方、エイゴールディはメンズウェア市場でのポジションをまだ確立していない。メンズラインの立ち上げはわずか2年未満であり、ウィリアムズ氏とそのチームはその成長を小売パートナーの支援に頼っている。5月には、新色のインディゴカラーのメンズジーンズをミスターポーター(Mr Porter)で独占発売し、その後ほかの小売店や同ブランドの直販チャネルでも展開した。エイゴールディのマーケティングのフォーカスは、ウィリアムズ氏によると「ファッション、カルチャー、アート、音楽の最新動向」を反映することだという。パリ・メンズ・ファッションウィーク期間中には、同社がパリに新設したショールームで対面イベントを開催し、最新のメンズコレクションを発表した。成長するメンズウェア市場への進出を進めているのは、シチズンズとエイゴールディだけではない。サックス・グローバル(Saks Global)は6月、ラグジュアリー志向の若年男性層に「未開拓の可能性」があるとし、サックス・フィフス・アベニュー(Saks Fifth Avenue)とニーマン・マーカス(Neiman Marcus)で、その層をターゲットに大規模な投資を行っていると発表した。世界のメンズウェア市場は2030年までに9000億ドル(約144兆円)を超えると予測されている。シチズンズ・オブ・ヒューマニティは非上場企業であり売上高は非公開だが、2017年にプライベートエクイティ企業から買収し完全子会社化した際には売上が約1億ドル(約160億円)と推定されていた。ウィリアムズ氏によれば、その後は約2倍に成長しているという。

工場を自社保有し、柔軟な開発体制を構築

製品開発において、シチズンズはロサンゼルスとトルコに自社工場を持つ強みを活かしているとウィリアムズ氏は述べる。これにより、新カテゴリーへの展開を円滑に行うことができ、関税の影響も最小限に抑えられている。現時点では、トルコからの輸入に対する米政府の関税はもっとも低い水準に設定されている。ただし、メンズ向け製品の開発には、より幅広で大きいサイズ、厚めのウエストバンド、高密度の縫製に対応するために、機械の再設定が必要だった。「ポケットを大きくしたり、パンツの前立て部分にJステッチを加えたりといった新たな技術のために、自社の機械を再設定することができた」とウィリアムズ氏は語る。「アイデアには事欠かないが、それを実行できるかどうかは別問題だ。自社工場を持つことで、小ロット生産が可能となり、最小発注数に縛られることなく機動的に動くことができる」。両ブランドのデザインチームにはメンズウェアのデザイン経歴のある人材が含まれており、マーケティング部門の男性社員たちも、新製品の初期コンセプト段階でフィット感やポケット数といった細部について提言している。[原文:Inside Citizens of Humanity’s plan to build up its men’s business]Danny Parisi(翻訳・編集:ぬえよしこ)