和歌山県立博物館の公式Xから

写真拡大

著名な建築家の故・黒川紀章氏が手がけた和歌山県立博物館の階段手すりが、「使いづらそう」「別にエレベーターがあるのでは」などと議論を呼んでいる。

階段に沿って直線ではなく、同館が「にょろにょろ」と呼ぶ曲線の造りだからだ。利用者から「使いにくい」といった声は出ていないのか。同館の担当者に話を聞いた。

「紀の川や有田川、古座川などのかたちがトレース」

和歌山市内にある和歌山県立博物館は、1994年に隣接する県立近代美術館とともに、和歌山城の近くにオープンした。2007年に亡くなった黒川紀章氏が手がけたデザインで知られている。

階段の手すりなどは、博物館の公式サイトによると、フランスの数学者マンデルブローが導入した幾何学概念「フラクタル」に基づいている。図形の部分と全体が自己相似形になっていることを指し、海岸線や雲、山、樹木の枝分かれなどに見られる複雑な図形を表現しているという。

手すりについては、「その曲線は和歌山県内を流れる紀の川や有田川、古座川などのかたちがトレースされている」という。つまり、手すりと紀の川などの和歌山の自然が自己相似形ということだ。手すりのほか、ドアのハンドルやノブ、イス、展示室受付カウンターの天板などにもフラクタルな形が採用されたとしている。

このフラクタルデザインについて、県立博物館は25年5月5日、公式Xに写真をいくつか投稿して紹介した。

階段手すりは、そのうちの1つだ。写真を見ると、階段の下から見て左側に、ヘビのようにうねった形の手すりが続いている。投稿では、「山や川など和歌山の自然をあらわしたもの」だとし、「黒川紀章が、紀の川・有田川の地図を広げ、階段の段とうまくマッチする場所を見つけ再現した」と解説した。

手すりは、バリアフリーの立場などから、X上で議論を呼んだ。疑問や批判も多く、「デザインばかり重視した手すり」「手すりが使いにくいと危ない」「機能以外のデザインで遊んでほしくない」といった声が寄せられている。一方で、「エレベーターの方に誘導充実してたらまぁアリ」「時代性を無視して批判の声を挙げるのも違う」などと擁護する意見もあった。

「使いづらいといったご意見などはとくに承っておりません」

階段手すりは、すでに30年ぐらい使われているが、その間にあった利用者の反応について、和歌山県立博物館では5月12日、J-CASTニュースの取材にこう説明した。

「これまで直接、高齢者や障害者のかたから、使いづらいといったご意見などはとくに承っておりません。しかしながら、当館自体、オープンしてから30年以上経過しており、様々な点で改修・改善等が必要な部分もあると認識しています」

館内にはエレベーターが設置してあり、11月末から翌26年3月末まで臨時休館し、エレベーターの改修工事を予定していると説明した。

他のにょろにょろしたフラクタルデザインについても、「これまで直接、イスやドアの取っ手などで使いにくいといったご意見はとくに承っておりません」と回答した。

ネット上で話題になったことについて、どのように受け止めているのか聞くと、「今回、様々なご意見をいただき、参考にしながら、利用しやすい環境づくりを目指したいと考えております」と述べた。

(J-CASTニュース編集部 野口博之)