受動喫煙「悪くない」記事で 週刊現代がポストに噛み付く
「受動喫煙は子供の発がん率下げるはウソだった!」。そんな刺激的な見出しを掲げ、「週刊現代」が「週刊ポスト」に噛み付いた。問題となったのは「週刊ポスト」2006年11月17日号の「受動喫煙は子供の発がん率を低下させる」という特集。記事の狙いは行き過ぎた禁煙・分煙ブームに一石を投じるというものだったが、日本禁煙学会が「週刊ポスト」に厳重抗議するなど騒動になっている。
「週刊ポスト」の記事は「定説『健康に悪影響は嘘!?』」という見出しで始まり、世界保健機関(WHO)付属機関の国際がん研究機関(IARC)とカリフォルニア州立大学の研究チームが調査した「大規模疫学調査結果」の二つのデータを使い、岐阜大学医学部高岡健助教授の解説を基に書き進められている。それらの統計結果から、「成人同士の受動喫煙の影響はなく、肺がんの発がん率を高めない」。そればかりか、「両親がヘビースモーカーの場合でも、子供時代の受動喫煙は肺がんの発がん率を低下させる」という驚くべきことがわかったのだという。
日本禁煙学会も「週刊ポスト」に厳重抗議
IARCの研究は1988年から1994年までの7年間をかけ、欧州7ヶ国で650人の肺がん患者と1542人の健常者を比較したものだという。また州立大学の研究はカリフォルニア在住の配偶者が喫煙者だが、自分は全く喫煙しない35,561人を抽出し、1960年から1988年の39年間にわたって追跡調査したもの。
高岡助教授は、「(これら研究結果を)公表しなかったのはWHOにとって都合の悪いデータだったからだと思われます」「こうしたデータを議論の俎上に上げないまま、禁煙政策を推し進める風潮には反対です」と誌面でコメントしている。
「週刊現代」は06年12月9日号で、「週刊ポストを一読して、なんだこのデタラメな記事は、と驚きました」という日本禁煙学会理事のコメントを記事の冒頭に掲載し、「とんでもない誤報」と「週刊ポスト」に噛み付いた。日本禁煙学会も「週刊ポスト」に厳重抗議し、謝罪と責任者の処分、取材過程の公表と訂正記事の掲載を求め、徹底的に戦う、とコメントしている。
いったい「週刊ポスト」の記事のどこが「誤報」なのか。「調査は実在し、ポストが指摘するような数値は出ています」との日本禁煙学会側のコメントもある。しかし、(1)IARCの調査対象人数が650と少なく、この程度だと実態と逆の結果が出ることがあり、これがそうしたケース(2)これまでの他のデータは、受動喫煙は害がある、が大部分(3)カリフォルニアの大規模疫学調査結果は「ウサン臭い」と批判された有名なデータであり、しかも受動喫煙が起こす病気で一番多いのは肺がんではなく心筋梗塞――が「誤報」の根拠だという。
「喫煙について様々な議論があるのが当然」
さらに、ポストに掲載されているデータは高岡助教授がコメントしたような「隠蔽」されたものではない、と説明する。
確かに、受動喫煙は体に悪いが私達のこれまでの「常識」。ましてや子供の肺がん率を低下させるなどというのは信じられない。「週刊現代」が、「週刊ポスト」に見解を求めたところ、「客観的なデータを紹介したものであり、日本禁煙協会から『事実誤認』と指摘されるような性質のものではありません」と回答したことが誌面に載っている。
それでは、一方の主役である高岡助教授は、何を考えこのデータを紹介したのか。高岡助教授はこれまで「週刊現代」を含め多くのマスコミに「ノーコメント」を貫いているが、J-CASTニュースにはコメントを寄せてくれた。高岡助教授の専門は児童青年精神医学、精神病理学などで、雑誌「精神医療」(批評社)の編集委員でもある。
「世の中は禁煙へと一方的に流れています。私はそんな社会風潮に疑問を持っていて、むしろ喫煙についての様々な議論がたくさんあるのが当然と考えています。だから、こうした風潮に一石を投じたいと。それでデータを紹介したわけなんです」。
ところで、「高岡先生はタバコを吸うんですか?」とJ-CASTニュースが質問すると、
「私はタバコを吸いますが…いや、今回のことは決して私的な感情でやっているのではなく、あくまで客観的にデータを出して、客観的にまっとうな議論をしてもらおうということなんです」
と答えた。高岡助教授はタバコの害に関する自分の見解、研究をまとめた本の執筆を始める予定だ。