「3人で新しい生活をするんじゃなかったの…?」父親の不倫が原因で両親が離婚。その後、母親に捨てられ、過酷な人生を生きた姉妹の物語
親の離婚を体験する子どもは、決して少なくない。『親に捨てられた私と妹 不器用な人』(ひらたともみ/KADOKAWA)は、親の離婚により両親と離れて暮らすことになった姉妹の人生を描いた作品だ。
主人公・朋は、小学5年生の春に父親の不倫が原因の離婚で、母方の伯母の家に引っ越すことになった。妹の真由と一緒だったものの、母は一緒に暮らすことなく、すべての環境が変わって両親がいない家庭で生きることに。「離婚したけどこれからは3人で新生活!」と期待していた朋と真由の寂しさや苦しさを想像するだけで、胸が苦しくなってしまう。たとえ別々に暮らすことになっても、ふたりは両親を嫌いになったわけではなかったのだ。
こうして伯母の家で暮らしはじめるも、朋はさまざまな現実に打ちひしがれてしまう。気づかいのできる妹と比較され、両親がそろっているクラスメイトの話に傷つきながら、周囲の人から憐れまれないよう、たくさんのウソを吐いていた。
幸せになるために生まれてきたはずなのに、どうしてこんなにも辛い目に遭わなければならないのだろうか。無邪気に笑ってすごせない幼少期の朋を、心から抱き締めてあげたくなってくる。さらには、実母から伯母の養子になるか児童養護施設に入るかを迫られるのだ。その時に思い浮かんだのは父方の祖母。父にも母にも甘えられなかった朋が電話越しに唯一甘えられた存在だ。そして、小学校を卒業後、妹とふたり祖母の家に引っ越しをすることに。しかし、年金暮らしの祖母の家では生活に困窮することになってしまう。
本作では、こうしたリアルな人生が綴られていく。ファンタジーのようなざまぁ展開やスカッとなんて、現実には存在しないのだろう。家庭に恵まれなかった子どもたちの等身大の苦しみや葛藤に、どこまでも胸が痛くなる。
こうした不条理な環境へたくさんの恨みつらみをぶつけていいはずなのに、朋は足を踏み外すことなく生きていく。どこか歪んだ心を抱えながらも、真っ当に成長していく姿は、理不尽に負けずに生きる力を分けてくれるようだ。朋と真由の歩んだ人生を通して、1つの不器用な家族の物語を体験してみてもらいたい。
文=ネゴト / 押入れの人