一人で歩くバージンロードは寂しさもありましたが、参列者の方々が精一杯盛り上げてくれたので、最後まで笑顔で歩くことが出来、夫の体調不良を『あいつ大事な時になにやってんだよー!!』と愛のあるイジりで場を和ませてくれた夫の友人、職場の方々の声にも本当に救われました」

 挙式では堂々と歩くことで何とか頑張れたという奈津さんですが、披露宴は時間を持て余さないか、盛り上がらないのではないかと、内心不安だったようです。

◆夫の友人の粋な計らいに大感動

「不安な中での披露宴でしたが、入場のときの拍手がとてもあたたかく、私はそれだけで泣きそうになってしまいました。最初の挨拶も夫不在ということで私が直前に考えて読み上げましたがこの時は“可哀想だと思われたくない”という思いが強かった気がします。

歓談を長めに設けることで親族や友人、職場の方ともたくさんお話することができ、夫の友人の一人が『みんなスマホで祐樹の顔をアップにして写真に写してやろう!』と提案してくれ、写真撮影の際は、スマホ内の画像ですが夫も一緒にいるようなショットを撮りました」

 奈津さんは、初めてお会いした夫の友人が本当に優しくて感動した、と言っていました。

「私たちの式では友人の余興は予定していなかったのですが、歓談中に急に会場の照明が消え、夫の友人がサプライズで歌を歌ってくれたことに驚きました。後から聞いたのですが、体調が悪い中、夫が友人と式場になんとか連絡をとってくれて、シンガーソングライターをしている夫の友人が急遽歌を歌ってくれたようでした。カラオケ大会のようにワイワイとした雰囲気になり、続けて私の友人も歌ってくれ、最後には義父まで一曲披露してくれるという流れで、会場はとっても盛り上がりました。これは本当に予想外で心が温かくなりました」

◆式場スタッフの計らいに感涙

「参列者の皆さんの協力もあり、新郎不在となった式でも成り立たせることができて、安心してお見送りの時間になったとき、式場の方が即席で夫の等身大パネルを作ってくれていて、私の横にパネルを置いてお見送りさせていただきました。スタッフの方たちに『最後はご主人と一緒にお見送りをしましょう!』と言っていただいた瞬間、私は涙があふれて本当に感激しました。

直前に夫が体調不良となり、どん底の気持ちから始まった結婚式当日でしたが、式が終わるころにはみなさんの温かさでとても満たされた気持ちになったと同時に、夫も私も本当に良い人たちに恵まれているな、と感じました」

 無事に新郎不在の式を終えた奈津さんは、後日改めて旦那さんと写真撮影をしたそうです。異例の式になってしまったとはいえ、家族や友人への感謝の気持ちが大きくなったと、当時を思い出して語ってくれました。
<取材・文/鈴木風香>

【鈴木風香】
フリーライター・記者。ファッション・美容の専門学校を卒業後、アパレル企業にて勤務。息子2人の出産を経てライターとして活動を開始。ママ目線での情報をお届け。Instagram:@yuyz.mama