この記事をまとめると

■香港ではタクシーのサービス向上へ向けた新制度を導入

■日本のタクシーにおいてもドライバー評価制度を取り入れたほうがメリットが多い

■海外ではタクシードライバーの評価制度が広く浸透している

香港ではタクシードライバーの品質向上に動き出した

 香港では2024年9月22日より、タクシーサービス向上のため、日本での交通違反点数制度のようなものをタクシーサービスで導入開始した。メーター料金以上の金銭要求、乗車拒否、迂回走行など11の違反行為を設定し、それぞれの悪質性に照らして10、5、2と点数が設けられ、2年で累計10点以上となると自費での研修受講が義務付けられる。仮にこの受講を無視した場合は日本円で10万円相当の罰金と1カ月の懲役が科されるとのこと。

 制度導入後1カ月経過のタイミングで地元メディアがその効果を検証するため、街頭インタビューを行っていたが、そこではたしかにこの制度導入により、乗務員のサービス姿勢に変化(いい方向)が出ていると語られていた。

 同じ報道では、タクシーの業界団体が車内カメラ設置に難色を示しているとも報じていたので、タクシーサービス向上への取り組みは、日本の大手や準大手タクシー事業者よりはやや遅れているように思われる。筆者は香港に行ったことはないが、ここまで踏み込まないとタクシーサービスの改善が見られないと行政当局が判断するほど、香港ではまだタクシーは構えて乗る公共交通機関なのかもしれない。

 日本のタクシーは、東京をはじめ都市部で利用している限りは、全体的にサービスレベルが高いといえるが、そこは労働集約型産業で多くの運転士が運行に従事しているので、まだまだサービスレベルの個体差というものが存在する。これを全国規模で見れば、とくに女性にとってタクシーはいまだに勇気をもって利用する乗り物となっていることは否定できないだろう。

サービス向上にはドライバーのランクわけも有効か

 香港の制度は、交通違反の点数制度同様に守らない者へのペナルティ的な色合いが目立つが、日本では加点していく、つまりポイントの高い運転士を評価していくことを目的にポイント制度を導入するのはアリかもしれない。現状でスマホアプリによるタクシー配車マッチングサービスを利用してタクシーを降りると、項目は少ないが運転士を評価してほしいというメッセージがスマホに送られてきて、チップを払うこともできる。実際、すでに優良運転士評価制度なども導入されているのだが、その評価に利用者をもっと積極的に参加させてみてはどうだろうか。

 インドネシアやタイ、インドなど筆者が訪れた国々ではすでにライドシェアサービス大手や地元大手タクシー会社が、スマホアプリによる配車マッチングサービスを導入している。そしてそれに伴い、利用者による乗務員への評価も実施されている。いずれの国でも導入前後で乗務員の接客姿勢に大きな変化が出ており、いまでは便利に使えるようになった。より広範に乗務員評価制度を導入することは、サービス向上にかなり効果的なのである。

 これをスマホだけではなく、いまどきのタクシーは助手席ヘッドレストに後席に座った乗客向けにタブレット端末のようなものが多く設置され、クレジットカード決済などがそのタブレットでできる場合がある。そのタブレットにて5段階評価などになっている画面タッチをするだけで、運転士の評価ができる機能を付加すればより広範な運転士の評価が可能となるだろう。

 そしてスコアの高い運転士にはおいしい仕事が優先的に割り振られるようにしていけば、運転士、利用者ともにWIN-WINなものになると考えている。

 たとえば航空会社のマイレージ制度のように、獲得ポイントによって「標準」、「シルバー」、「ゴールド」、「プラチナ」、「ダイヤモンド」と運転士のステータスが上がるようにして、ステータスがアップするごとに、よりおいしい仕事が得られるようになるとか、営収(営業収入)における運転士の取り分比率が上がっていくなど、特典を設けてみるのもいいかもしれない。

 もちろん、事故のない安心・安全な運行や交通違反の有無なども評価対象に入れるのは当たり前の話である。

 今後は外国人運転士も本格導入されるのではないかとされる日本のタクシー業界。多様化が、利用する側だけではなく実際に車両を運転する運転士側でも進めば、価値観の異なる多様な人が運行業務に携わることになるのだから、より客観的な視点でのサービス向上を目指さないと、今の世界的にも評価の高い日本のタクシーの未来に暗雲が垂れ込めるかもしれない。