お年寄りの『自立』には家族の協力が不可欠…親が介護施設で快適に過ごすために子どもができること

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2015年に厚生労働省が出した統計によれば、日本人が亡くなった場所は病院、自宅の次に、「介護施設」が多くなっている。治療に特化した病院でもなく、住み慣れた自宅でもない「介護施設」で亡くなるとはどういうことなのか。

介護アドバイザーとして活躍し、介護施設で看・介護部長も務める筆者が、終末期の入居者や家族の実例を交えながら介護施設の舞台裏を語る『生活支援の場のターミナルケア 介護施設で死ぬということ』(郄口光子著)より、介護施設の実態に迫っていこう。

『生活支援の場のターミナルケア 介護施設で死ぬということ』連載第15回

『「“基準”に合致したら、一切の医療的行為を停止します」…“先進的”介護施設が設定した『死のライン』』より続く

勘違いしてはいけない介護における「自立」

第6回で、親が高齢で体が不自由になると、「子どもは親に守られ育てられていた立場から、親の老いと自立を守る立場に変わらざるを得ない」と書きました。

一般に「自立」という言葉からは、生活行為のあらゆることが自分ひとりでできる状態をイメージすることが多いと思いますが、介護の現場で言われる自立は、それとは少し意味が違います。

お年寄りにとって、自分ひとりでできること・できないことを明確にし、できないことに対しては、きちんと援助を求められる環境にあること。どんな援助を受けるかを選ぶことができること。受けた援助に対しては、「ありがとう」「おかげさま」といった健全な感謝の気持ちを表すことができること。

以上の3点が可能な状態が、介護現場で大切にしている自立で、これを支えるのが自立支援です。

私たち介護職員にできる自立支援は、そのお年寄りは何ができないかを明確にすること。できないことをカバーするためにどういう介護方法があるか、その介護を受けるにはどうすればいいか、といったことについて情報提供をすること。

また、現在受けている介護に不都合が出てきて介護内容を変更してほしい場合、お年寄りは、なかなか自分からは言い出せません。それに対して「意に添わない介護を無理して受けるのは、介護する側にとってもつらいことになります。だから、いやなことはいやと言っていいんですよ」と助言することも、大切な自立支援のひとつです。

親の自立を助けるために子供ができること

では次に、子どもが親の自立を守るためには、具体的にどうしたらいいのでしょうか。それは、介護を受けるための情報を収集し、どんな介護を受けるかを親と一緒に選ぶこと。親が自分の意思を表現できない場合は、親になり代わって選ぶことです。

また、不都合があれば介護内容の変更や改善を申し出ることや、介護してくれる相手に対し、親になり代わって感謝の気持ちを伝えること、つまりは、選んだ介護がより豊かなものになるように配慮すること。これも、親の自立を守ることにつながります。

それは、一方的に職員を責めたり、必要以上にへりくだって持ち上げたりすることとは違います。よりよい介護を受けるために、要望があれば明確に伝え、希望に適った介護が受けられたときには、感謝の気持ちを素直に言葉にすることです。職員にとって、家族からのこうした言葉は、その人の介護を続ける励みになります。その積み重ねが、職員と家族との信頼関係を築いていきます。

介護職員としてお年寄りの自立を支援すること、子どもとして親の自立を守ることの根底には、両者の信頼関係が不可欠なのです。

「“基準”に合致したら、一切の医療的行為を停止します」…“先進的”介護施設が設定した『死のライン』