下請法逃れ 新手の中小企業いじめ許すな
大企業による中小企業いじめが後を絶たず、新手の手法まで広がっている。
政府は、下請法の抜け穴を防ぐ方策を徹底してもらいたい。
公正取引委員会と中小企業庁の有識者会議は、大企業が中小企業に資本金を増額させ、下請法の適用を逃れる手法が横行しているとして対策の検討を始めた。年内にも報告書をまとめるという。
下請法は、大手企業との取引で立場の弱い中小企業を保護するものだ。大手に対し、買いたたきや、発注後の代金を減額することなどを禁じている。
長引く物価高で、中小企業は取引価格への転嫁に苦しんでおり、賃上げの余力も乏しい。政府は日本経済の成長のために、下請法違反に対する監視を強めている。そうした中で、脱法的なやり方が相次いでいるのは看過できない。
下請法の適用については、発注側の資本金が3億円以下〜1000万円超の場合、下請け企業は、1000万円以下といった基準がある。このため、中小企業の資本金の額を操作し、1000万円を超えれば適用の対象外になる。
実際に、発注側企業が、取引先に増資を要求し、資本金を1000万円から1200万円へと変えさせた事例が報告されている。断ると取引を打ち切られるとの中小側の不安につけ込むものだ。
中小企業側に増資させるのではなく、大企業が減資を行って、「中小企業」扱いとなる例も相次いでいる。さらには資本金の小さい子会社を作り、その子会社と下請け企業が取引する形をとって適用を逃れるケースがあるという。
政府は、下請法逃れを防ぐために効果的な新基準を検討するべきだ。従来の資本金に加えて、従業員数や売上高といった基準を設けることが考えられよう。
日本は今、人件費などを抑えて割安な製品を販売する「コストカット型経済」から、賃金も投資も増える「成長型経済」へと転換していくべき局面にある。
国内雇用の7割を占める中小企業に高い賃上げを広げることが日本経済の活性化には不可欠だ。
それにもかかわらず、近年も大手自動車メーカーによる下請法違反などが続発している。金型を無償で保管させたり、事前に決めた納入代金を一方的に引き下げたりする下請けいじめは、成長を阻む根深い問題で嘆かわしい。
大企業の経営者は、中小企業とともに発展するべきだという法律の精神を思い起こし、自らの責務を改めて自覚してほしい。