23日、ロシア中部カザンで、BRICS首脳会議の写真撮影に臨む(手前左から)インドのモディ首相、プーチン露大統領、中国の習近平国家主席=AP

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 【カザン(ロシア中部)=東慶一郎、浅野友美】ロシアや中国、インドなどで構成するBRICSは23日、首脳会議の全体会合を開いた。

 議長国ロシアのプーチン大統領はBRICSの国際社会での重要性を強調し、加盟国の首脳らはBRICS内で13か国が加盟する「パートナー国」の新設を確認した。欧米諸国への「対抗軸」にBRICSを位置づける姿勢を明確に打ち出した。

 会合で採択された首脳宣言「カザン宣言」では、経済制裁について「違法で一方的な措置による破壊的な影響を深く懸念する」と明記し、ロシアやイランなどへの制裁を続ける米欧をけん制した。ウクライナ情勢では、対話と外交による紛争の平和的解決を目的とする「仲介の提案に感謝する」とし、中国やブラジルの和平案を評価した。

 「BRICSのダイナミックな発展、影響力の高まりを目撃している。我々は膨大な潜在力を持っている」

 プーチン氏は「拡大BRICS」が経済力や人口などで先進7か国(G7)を圧倒していると自信を見せた。ロシアには米国やG7こそ「世界で孤立している」と発信する狙いがある。

 BRICSは5か国体制だったが、1月にイラン、エジプト、アラブ首長国連邦(UAE)、エチオピアが加盟した。首脳会議は9か国体制になってから初めて。23日の会合は、体調不良でオンライン参加したブラジルのルラ・ダシルバ大統領を除く8首脳が対面で参加した。

 プーチン氏は会合で、途上国などに資金援助を行う新たな組織の設立や、食料価格の安定に資する穀物取引所の創設を提唱した。いずれも新興・途上国「グローバル・サウス」に対する支援の一環と言える。

 中国の習近平(シージンピン)国家主席も会合で、中国が先行する再生可能エネルギーなどの分野で加盟国に協力する意向を示した。国営新華社通信によると、ウクライナ問題について、ブラジルとグローバル・サウスの意見を集約していると強調し、「一刻も早く緊張緩和に取り組む必要がある」と呼びかけた。

 「パートナー国」について、ロシアのユーリー・ウシャコフ大統領補佐官は、首脳らが13か国の加盟で合意したと明らかにした。CNNブラジルの報道によると、13か国はトルコ、インドネシア、アルジェリア、ベラルーシ、キューバ、ボリビア、マレーシア、ウズベキスタン、カザフスタン、タイ、ベトナム、ナイジェリア、ウガンダだという。

 「パートナー国」創設は、1月に続く再拡大を意味するが、意思決定を困難にするとの指摘も多い。イランの1月の加盟で組織の「反米色」は強まった。マスード・ペゼシュキアン大統領は23日の会合で「世界の多数の国は米国が武器としてドルを使用していることに不満を抱いている」と米国を非難し、米欧の経済制裁に一致して対処する必要があると訴えた。

 一方、インドやブラジル、中東諸国などは経済や貿易など実利優先の側面が強く、加盟国が二つのグループに分かれてきたとの分析もある。グローバル・サウスには、米国と良好な関係を持ちつつ、BRICSの利点を見いだして接近を図る国も多い。

 ロシアはサウジアラビアがBRICSに加盟していると訴えてきたが、サウジは認めていない。ムハンマド・ビン・サルマン皇太子は今回、ロシアの招待を受けず欠席した。米国との関係も強いサウジが反米色の強い枠組みへの参加を控えた面もあるとみられる。