イスラエル軍のドローンが撮影したシンワル氏とされる人物=イスラエル軍が公開した映像から

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 【エルサレム=福島利之】イスラエル軍が殺害したイスラム主義組織ハマスの最高幹部ヤヒヤ・シンワル氏(61)は、1987年に設立されたハマスの創設メンバーの一人だ。

 イスラエル軍が発見したのは偶然だった。

 軍によると、シンワル氏をガザの最南部ラファで見つけたのは、得意とする諜報(ちょうほう)活動の情報に基づく特殊作戦ではなく、歩兵と装甲部隊だった。戦車が16日、シンワル氏の逃げ込んだ建物を砲撃した。

 ドローン(無人機)から軍が撮影した48秒の「最期の時」とされる映像では、シンワル氏とみられる人物は破壊された建物の2階奥のソファに座っていた。粉じんまみれでドローンに向かって棒を投げ、映像はそこで切れた。近くからは防弾チョッキや銃、4万シェケル(約161万円)分の紙幣が見つかったという。

 シンワル氏は、イスラエル軍の兵士を殺害したとして88年に終身刑を言い渡されたが、2011年の兵士との人質交換で釈放された。最高幹部イスマイル・ハニヤ氏が7月末に訪問先のイランで殺害されたことを受け、8月に後任に選出されていた。

 イスラエルの獄中でシンワル氏と同房で、同時に釈放されたハマス政治局員ホサム・バドラン氏(58)は9月、本紙の取材に「シンワル氏はパレスチナの大義を体現する現実的な指導者だ」と主張した。だが、ガザでの戦闘で4万2000人以上の殺害を招いたとの批判は住民の間でもくすぶる。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相はシンワル氏について、「自身はライオンだと言ったが、実際は暗いトンネルに隠れ、パニックになりながら逃げる中で殺害された」とビデオ声明で述べた。