中国

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中国政府が12日、国債発行を「大幅に増やす」と発表した、とロイター通信が伝えた。低所得者への補助金支給や不動産市場支援、国有銀行の資本補充に充て、低迷する経済成長の回復を後押しするのが狙いとされる。中国での追加国債発行は通常、全国人民代表大会(全人代)による正式な承認が必要となる。

中国ではここ数カ月は各種経済指標が予想を下回り、エコノミストや投資家は、今年の政府の約5%の成長目標が達成されない可能性や長期的な構造的減速が起こる恐れへの懸念が少なからずあった。共産党の意思決定機関、中央政治局は9月の月例会合で経済の逆風に対する危機感を示しており、世界の金融市場では中国が打ち出す景気刺激策に関心が高まっていた。

上海と深センの株式市場に上場する有力企業300銘柄で構成するCS1300指数は、中央政治局の会合を受けて数日で25%急騰して2年ぶりの高値を付けたが、その後は政府の追加支出計画に関する詳細が明らかにならなかったため不安が強まり、下落していた。

ロイター通信によると、藍仏安財政相は12日の記者会見で、新たな経済てこ入れ策の規模には言及しなかった。同氏は「中国にはまだ債務を発行する余地が十分ある」と述べた上で、今年はさらなる「景気循環対策」を講じる予定だと表明した。

同氏はまた、政府は地方政府の債務問題の解決を支援すると言明。「年内に債務割当額や未使用資金を含めて支出できる資金がまだ2兆3000億元(約46兆円)ある」と付け加えた。

地方政府は不動産開発業者から未使用の土地を買い戻すことが許可される。中国は不動産市場の急速な冷え込みと消費者信頼感の低迷により強いデフレ圧力に直面しており、世界の貿易環境が緊迫する中で、輸出への過度の依存が露呈している。

ロイター通信は9月、中国が新たな経済刺激策の一環として今年約2兆元相当の特別国債を発行する計画だと報道。そのうち半分は地方政府の債務問題対応に充てられ、残り半分は家電製品やその他の商品の購入への補助金や2人以上の子どもがいる全世帯に子ども1人当たり月額約800元の手当を支給する資金に向けられる。

一方、米ブルームバーグ通信は経済を下支えするため、中国が主に新たな国債の発行を通じて大手国有銀行に最大1兆元の資本注入を検討していると報じた。

中国人民銀行(中央銀行)は9月下旬、住宅ローン金利の引き下げなど不動産部門を数年にわたる深刻な不況から脱却させるための措置を公表した。新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)以来、最も積極的な経済金融支援策だ。

こうした措置で中国株価は上昇したが、多くのアナリストは「消費の拡大や債務によるインフラ投資への過度の依存など、より根深い構造的問題にも政府がしっかりと取り組む必要がある」と指摘している。(編集/日向)