ただ、一品メニューを作るのに、調理スタッフの手間や負担がかかっては意味がない。原価率をうまく低減させても、その分、人件費がかかっては利益が出ない。

 飲食店では、FLコスト(原価+人件費)を60%以内に抑制することが重要になっている。食材の共通化や半加工品をうまく活用し、手間を省きながら簡単に提供できるように仕組化しないといけない。追加品目数を増やし、メニューの魅力度を向上させながら、原価と人件費を低下させているようだ。

◆コロワイド傘下のレインズが展開する温野菜

  焼肉食べ放題「牛角」としゃぶしゃぶ食べ放題「温野菜」を展開するレインズ・インターナショナル。親会社のコロワイドは外食1位を目指し、多業態戦略をM&Aを通じて積極的に展開する勢いある外食企業である。

 牛角は店舗数825店舗を展開する世界最大の焼肉チェーンだ。だから、しゃぶしゃぶ食べ放題店を多店舗展開できる基盤と食肉関係の調達力に強みがある。温野菜は現在217店舗(2024年9月時点)で店舗数は業界2位であり、焼肉食べ放題は1位、しゃぶしゃぶ食べ放題は2位と共に店舗数上位である。

 現在、レインズは売上970億円、コロワイドグループの中でも売上構成比40.2%、店舗数(約1400店舗)、店舗構成比53%超とグループのコアとなる事業会社だ(2024年3月時点)。

 コロワイドは、カテゴリーごとに多業態を展開し、同じ業態でも価格帯ごとに複数のブランドを運営し、リスク低減と収益機会の多様化によるリターンの最大化を目指している。

 日常から非日常の食事、若年層からご年配の方といった幅広い客層にフルカバーできるよう適切なブランドポートフォリオの管理を徹底。M&Aの積極活用と人的資本の強化で、いずれは外食売上1位を実現できるよう体制の整備に注力中だ。

 その中でも、焼肉としゃぶしゃぶを展開するレインズにかかる期待は大きい。そのしゃぶしゃぶ食べ放題の温野菜は、日々進化しており、今年の忘年会シーズンに向けてより充実させている。

 メニューは、お肉・国産野菜・逸品料理など 60種類以上がおかわり自由となっており、お肉に強みがあるだけでなく、祖業は居酒屋だから逸品メニューにも自信があって、しかも食べ放題というのが差別的優位性があるとのことだ。

 選べるだしも7種類あって訴求ポイントだ。コースの種類と価格(税別表示)は、温野菜コース(3,480円)がメインで、三元豚コース(3,180円)、タンしゃぶ(3,780円)、黒毛和牛(4,980円)、霜降り黒毛和牛コース(5,980円)となっている。

 全コース共通の食べ放題コースとして、前菜(7種類)、逸品料理(6種類)、サラダ(3種類)、麺飯類(8種類)、国産野菜(16種類)、鍋肴(8種類)、デザートは9種類の中から1つ選ぶことになっている。アルコール飲み放題プランも1,480円(税別)とリーズナブルだ。

◆低価格路線のしゃぶ葉は若者世代や節約志向の人々に人気

 一方、すかいらーくグループのしゃぶ葉は低価格でヤングファミリーや若者を中心に人気を集めている。現在は295店(2024年9月時点)と、グループ内でも著しく店舗数を増やしており、経営資源の配分度合いを高めていることが分かる。

 あれだけ安く食べ放題プランができるのは、やはりすかいらーく約3100店のスケールメリットとグローバルネットワークを活かし、効率的で安定的な調達を実現できているからだ。

 今年1月に279店舗だったが、9月には295店舗と16店舗も新規出店している。グループ内の店舗数の増減を見ても、ガストは17店舗減らしており、しゃぶ葉に力を入れているのが分かる。グループ内のカニバリゼーションを解消し、成長業態の再配置でグループ全体の最適化を目指しているようだ。