「アジア人には無理」...その言葉のウラで「日本人」が《9秒台》の記録を更新し続けられる納得の「事実」

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近年注目が集まっているアントレプレナーシップ。「起業家精神」と訳され、高い創造意欲とリスクを恐れぬ姿勢を特徴とするこの考え方は、起業を志す人々のみならず、刻一刻と変化する現代社会を生きるすべてのビジネスパーソンにとって有益な道標である。

本連載では、米国の起業家教育ナンバーワン大学で現在も教鞭をとる著者が思考と経験を綴った『バブソン大学で教えている世界一のアントレプレナーシップ』(山川恭弘著)より抜粋して、ビジネスパーソンに”必携”の思考法をお届けする。

『バブソン大学で教えている世界一のアントレプレナーシップ』連載第52回

『なんと「CRMが江戸時代には確立」…現代でも通用する「富山の薬売り」の《驚きのマーケティング術》』より続く

全て手塚治虫が描いている

小説、演劇、映画、漫画など、物語を語るジャンルはたくさんありますが、悲劇、喜劇、あるいは恋愛もの、復讐もの、戦争もの、ピカレスク……ありとあらゆる物語の類型は、シェイクスピアの中にすべて出揃っているそうです。現代の物語はその類型を変形させたり、組み合わせたりしているに過ぎないのです。

だから、その後につくられたものがだめだということではありません。シェイクスピアを学ぶことで、物語の真髄を学ぶことができる。だからこそ「自分は何を物語るのか」を考えることができるのです。

ある漫画家は「誰も描いたことがないジャンルの漫画を描こう」と考えたそうです。そしてあっという間に絶望します。「すべて手塚治虫が描いている」と。何百冊にも及ぶ『手塚治虫漫画全集』にはヒット作から失敗作まで、あらゆる手塚漫画が収められていますが、それをすべて読むと、現在の漫画のほとんどのジャンルは網羅されているそうです。

過去から進化し、より良いものを生み出す

西洋音楽は理論的に、12個の音の組み合わせでできています。その組み合わせにはリズムが変わったとしても限界があるというのです。だから西洋音楽はもう限界だ、ということではありません。過去のありとあらゆる先人の音楽を学び、そこから「もうないのか」と考え尽くすことも一つです。また過去のものからインスパイアされて、より良いものに改良していくことも重要な音楽家の仕事です。

シェイクスピアも手塚治虫も同じです。「もう書き尽くされている」からおしまいなのではなく、後進は、より高い次元からスタートできると考えるべきです。

スポーツも同じで、陸上競技の記録はますます向上しています。1980年代は100mで10秒の壁を破った選手はほんの数人しかいませんでした。いまでは、毎年のように9秒台の記録が出ています。アジア人には無理だとも言われていましたが、すでに何人もの日本人が10秒の壁を破っています。

人間の体が変わったのではありません。先人が積み重ねてきた経験、トレーニング理論、医学が相まって、記録が向上しているのです。

プロ野球選手も、体のケアの方法、トレーニング方法は進化しています。かつては30歳を超えるプロ選手は少数派でしたが、いまでは30代なかばの選手は珍しくなく、40代の選手さえいるのです。これはこれまでのトレーニング理論の蓄積、体のケア技術の蓄積から、常に新しいものが、より良いものが生み出されているからだと言えるでしょう。

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