◇韓江氏「非常に驚き光栄…作家たちの努力がインスピレーションを与えてくれた」

ノーベル賞終身委員長のマッツ・マルム氏は記者会見で、「歴史のトラウマと向き合い、人間の命の脆さを浮き彫りにした強烈な詩的散文を高く評価した」と説明した。韓江氏はマルム氏との電話で「いつもと同じように過ごした後、ちょうど息子と夕食を終えたところ」と明らかにした。その後、ノーベル委員会とのインタビューでは「非常に驚き、光栄に思う」とし、幼少期から自身に影響を与えた作家たちの「すべての努力と力が私にインスピレーションを与えてくれた」と話した。

ノーベル文学賞は1901年から今年まで合計117回授与され、受賞者は121人となっている。韓江氏は女性作家としては歴代18人目のノーベル文学賞受賞者となった。アジア国籍の作家が受賞したのは、2012年中国作家の莫言氏以降12年ぶりだ。アジア人女性としては初のノーベル文学賞受賞という記録を立てた。

ノーベル文学賞受賞者には賞金1100万クローナ(約1億5725万円)とメダル、証書が授与される。授賞式はアルフレッド・ノーベルの命日である12月10日にスウェーデン・ストックホルム(生理学・医学賞・物理学・化学・文学・経済学の各賞)とノルウェー・オスロ(平和賞)で開かれる。

韓江氏の父親は小説『掲諦掲諦 波羅掲諦』『秋史』(それぞれ原題)などの小説で広く知られている韓国文壇の巨匠、小説家の韓勝源(ハン・スンウォン)氏(85)だ。韓勝源氏と韓江氏は韓国最高文学賞に挙げられる李箱文学賞を父娘2代が受賞する記録を立てた。父親の韓勝源氏はある言論とのインタビューで「娘の韓江は伝統思想に土台を置き、最近感覚を発散している作家」とし「あるときは韓江が書いた文章を見て驚き、嫉妬心に突き動かされたりもする」と語っていた。韓勝源氏は娘のノーベル文学賞受賞の一報を聞いた直後、知人に「(娘を)抱き締めて喜びのダンスを踊りたい」とし「祝福を受けたこと」と漏らしていたという。

兄の韓東林(ハン・ドンリム)氏は小説集『幽霊』(原題)などを発表した小説家で、弟の韓江仁(ハン・ガンイン)氏もソウル芸術大文芸創作科を卒業して小説を書く一方、漫画も描く作家として活動している。韓江氏は1970年11月光州にある線路横の借家で生まれた。2005年李箱文学賞受賞後に書いた『文学的自叙伝』で、韓江氏は彼女を身ごもっていた母親が腸チフスにかかって薬を一掴み分飲みながら命がけで産んだとし、「私にとって命とは自ずから与えられたものではなかった」と書き残している。

韓江氏は2016年に開かれたある文学会で自身にとって小説を書くということは「人間とは何か」に対する答えを探求する過程だと語った。