(左から)熊谷彩春、渡辺碧斗

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2024年10月5日(土)~13日(日)に東京・サンシャイン劇場にて上演されるミュージカル『燃ゆる暗闇にて』。本作は、スペインの巨匠と言われる劇作家アントニオ・ブエロ・バリェホの傑作を、韓国ミュージカル界における名コンビ、演出のソン・ジョンワンと作曲・音楽監督のキム・ウニョンが新作ミュージカルとして作り上げた作品。今回の公演が、日本版として初上演となる。物語の舞台は、盲学校。人と人が起こす化学反応や対立・葛藤を繊細に描き、人間の普遍的なテーマに切り込んだ。閉ざされた学校の中で繰り広げられる、無垢な学生たちの繊細な心の動きや葛藤を、エモーショナルなロックテイストの音楽で彩る。

稽古がスタートしたばかりの9月某日、学園の中心人物・カルロス役を演じる渡辺碧斗と、ヒロインのホアナ役を務める熊谷彩春が、筑波大学附属視覚特別支援学校を訪問。授業を見学し、生徒たちと触れ合った。

この日、渡辺と熊谷は、英語、地学(理科)、技術(技術家庭科)、体育の授業を見学。同校の座学の授業では、言葉で表現して確認するが基本となる。点字教科書や拡大文字の教科書、点字器や点字タイプライターなど、生徒それぞれの使いやすい方法で文章を読み、必要ならばノートを取る。渡辺と熊谷は案内をしてくださった高等部の皆川あかり先生からの説明に真剣に耳を傾け、頷く姿が見られた。

視覚障害者にとって、触覚は非常に重要なもの。すべての授業で、さまざまなものを触って学ぶという。例えば、理科の授業では、蚕から糸を取り出すという授業も行なっているそうで、渡辺と熊谷は実際に使用されている蚕や木の葉を触らせてもらった。興味津々に触った二人は、そうした説明から授業の様子を思い描いていく。

また、技術の授業では箸を製作する生徒たちに渡辺と熊谷が「どんな箸を作っているんですか?」「好きな教科は?」と質問をして交流する場面も。ユーモアたっぷりに答えてくれる生徒たちと楽しい時間を過ごした。

授業見学後には、皆川先生との鼎談も実施し、渡辺と熊谷から学校生活や生徒同士の交友関係について疑問に思っていることを尋ねた。台本を読むだけでは分からなかった、実際の学校生活や寄宿舎での生活についてより深く知ることができる、貴重な時間となった。

学校見学を終えた渡辺と熊谷からコメントも到着。渡辺は「この作品を作っていく上で大きな力になると思います」と今回の見学の感想を語り、熊谷も「私も言葉に重みを置いてお芝居ができたらと思っています」と役作りに意欲を見せた。二人のコメントの全文は以下。

本公演では、鑑賞サポートとして、聴覚障害者向けに舞台手話通訳や字幕サポート、視覚障害者向けに舞台説明会、音声サポートも設けている。公演日により、サポート内容が異なるので、詳細は公式HPをチェック。

渡辺碧斗 コメント

学校に知らない人が来たら、警戒されてしまうのではないかと思っていたのですが、生徒の皆さんが、とても歓迎して受け入れてくださったのが印象的でした。皆さん、言葉の1つ1つがウィットに富んでいて、すごく社交的な方ばかり。僕自身はあまり人に頼れる方ではないのですが、この学校の生徒の皆さんは人としっかりコミュニケーションをとって、必要な時には人を頼ることもできる。そうすることで、より良い生活を送ることができるんだと、僕自身の価値観が大きく変わったことを感じました。今日、見学させていただいたことで、学校の雰囲気を知ることができ、この作品を作っていく上で大きな力になると思います。

熊谷彩春 コメント

校内は視覚障害の生徒の皆さんが過ごしやすいように工夫がされていますが、白杖なしでスイスイと動いている姿を見て衝撃を受けました。白杖をついて移動していると思っていたので、頭の中に地図があるとお伺いして、今後の私たちの役作りにもすごく生きてくるお話だなと思いましたし、実際にそうして移動している生徒さんたちの様子を生で拝見することができてとても勉強になりました。また、今日、生徒さんたちとお話をさせていただき、ただ日常会話として言葉をポンポンと話しているというよりは、1つ1つの言葉にしっかりとした意味があることを実感しました。しかも、一言一言がすごくウィットに富んでいるんです。私も言葉に重みを置いてお芝居ができたらと思っています。