ANDREA CHÉNIER / Jonas Kaufmann as Andrea Chénier

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英国はロンドンのコヴェント・ガーデン、ロイヤル・オペラ・ハウス(ROH)で上演された、ロイヤル・オペラ、ロイヤル・バレエ団による世界最高峰のオペラとバレエを全8作品<バレエ4作品/オペラ4作品>、特別映像を交えてスクリーンで体験できる人気シリーズが「英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン2023/24」だ。ライブでの観劇の魅力とは一味違う、映画館の大スクリーンと迫力ある音響で、日本にいながらにして最高峰のオペラとバレエの公演を堪能できる。

2024年9月20日(金)からは、シーズンのラストを飾るロイヤル・オペラ『アンドレア・シェニエ』が、TOHOシネマズ日本橋ほか全国で1週間限定公開される。激しい情熱を品格と美に昇華させた圧巻のプログラムである。以下、オペラ評論家、香原斗志氏の解説と共に本作の見どころに迫る。

【動画】The Royal Opera: Andrea Chénier trailer


 

2002年の就任から音楽監督を務めたアントニオ・パッパーノが本拠地ロンドンで音楽監督として最後に指揮をしたのが《アンドレア・シェニエ》。フランス革命をはさんだ激動の時代を舞台に、実在した詩人アンドレア・シェニエを中心に、伯爵令嬢マッダレーナ、彼女の家の従僕ジェラールらの運命が、革命の前後で劇的に変わっていく様を描いている。

ANDREA CHÉNIER (C) ROH 2019. Photograph by Catherine Ashmore

ANDREA CHÉNIER (C) ROH 2019. Photograph by Catherine Ashmore

「アントニオ・パッパーノが退任前の最後の上演にこの作品を選んだのは、とても納得がいく。そしてパッパーノの手腕により、激しい情熱は品格と美に昇華させられた」と香原氏が語るように、運命に翻弄される彼らの愛と嫉妬と死を情熱的に描く物語は、スピーディな展開とともに、変化に富む音楽は雄弁な管弦楽に支えられ、人物の情熱はそのまま旋律となって聴く人の心を揺さぶる。

ANDREA CHÉNIER (c) ROH. Photographed by Bill Cooper

2015年に初演されたデイヴィッド・マクヴィカー演出舞台の再演となる本作は、読み替えも時代の移行もなく、第1幕はフランス革命前後、第2幕から第4幕はその5年後として描かれる。香原氏は見どころとして「歴史の細部が大切にされ、その結果、洗練された舞台装置や衣裳は簡略化や抽象化されることなく、細部まで徹底して作り込まれてごまかしがない。しかも、どの場面も人物の動きをふくめ映画のように作り込まれている」と本作の徹底された舞台の作り込みについて熱を込めてコメントしている。

ANDREA CHÉNIER (c) ROH. Photographed by Bill Cooper

そして歌手たちの高度な歌唱力にも注目いただきたい。《アンドレア・シェニエ》は残酷な暴力などの描写を多用し、音楽的には声楽技巧を排した直接的な感情表現に重きを置くことを特徴とする「ヴェリズモ・オペラ」に属した作品。一般に「ヴェリズモ・オペラ」は、歌手たちが声を張り上げて感情を表し、激しい情熱はいわゆる「泣き」を入れて表現するというイメージが強いが、本作について香原氏は「このオペラにみなぎる情熱は、剥き出しの感情としてではなく、すぐれた歌手たちの高度なテクニックを前提にした、ニュアンスたっぷりの洗練された歌唱として表現される。それはパッパーノの徹底した指示もあってのことだろう。その結果、声は雄弁で細やかな管弦楽と見事に一体化する」とこの舞台ならではの表現に賛辞を送っている。名歌手たちの磨き抜かれたパフォーマンス、そして洗練された完璧な音楽によって作り上げられた《アンドレア・シェニエ》。至高のオペラ体験をぜひ劇場でご堪能いただきたい。

ANDREA CHÉNIER (C) ROH 2019. Photograph by Catherine Ashmore

ANDREA CHÉNIER (c) ROH. Photographed by Bill Cooper

※香原斗志(オペラ評論家)による『アンドレア・シェニエ』解説全文は下記URLにて閲覧可能です。