「グランピング施設に特化した予約サイト『リゾートグランピングドットコム』は、年間取扱高が100億円を超えるなど、非常に集客力の高いサイトになっていて、クライアントの施設へ十分な送客ができていると感じています。加えて、企画段階では他社の真似できない“競争力のある施設”を提案しています。事業予算の見積もりが甘い場合は棟数を減らしてでも、チープに見えないクオリティの高い施設になるようなアドバイスを行っているんですね」

◆ホテルと違う“グランピング”なら成立する場所

 このようにリゾート事業に注力した結果、関西エリアのみならず関東圏や各地域の主要観光エリアにグランピング施設を続々とオープンさせていく。事業用地の取得に関しては、「ホテルは成立しないけど、グランピングなら成立する」場所を選定するように意識していると西垣さんは話す。

「当社の運営するアウラテラス茨城やグランドーム千葉富津などは、他の事業者が手を出さない物件を取得して建てた施設なんです。通常のホテルや旅館は、観光需要を捉えるために温泉地や避暑地に宿泊施設を建てます。一方でグランピング施設は若年層のグループ旅行が多く、自由な雰囲気でバーベキューを楽しんだりサウナでのんびりしたりするのが提供価値になっています。なので、グランピング施設は、都心部からアクセスしやすい立地に建てたほうが良いと言えるわけです」

◆コロナ前後でグランピングの定義が広がった

 コロナ禍では、アウトドアが脚光を浴びてキャンプブームが起こったが、グランピング需要についてはコロナ前後でどのように変わったのだろうか。西垣さんは「以前と比べてグランピングは多様化している」とし、次のように見解を述べる。

「コロナ前はグランピングという言葉を聞くと、テントを思い浮かべる人が多かったのですが、今ではドームテント型やコテージなど、建物の形状が多種多様になっています。ある種、グランピングが市民権を得たことで、コテージやヴィラよりもグランピングと打ち出した方が売れるんですよ。そういう意味では、グランピングという言葉の定義自体がすごく広がったと感じていますね」

◆グランピングは「サウナ」と「ペットツーリズム」

 さらに、グランピング施設のトレンドには、4つの傾向が考えられると西垣さんは続ける。

「まず1つ目は、秋や冬の集客コンテンツになるサウナ付きのグランピングです。やはりサウナのある施設のほうが、全体的に稼働率が高い傾向にあります。2つ目は、自然に囲まれながら大人数で寛ぎの時間を過ごせる貸し切りスタイルのグランピング施設です。

 そして3つ目はペットツーリズムで、ドッグラン付きのグランピングの人気がかなり高まっています。ペットと一緒にグランピングを楽しみつつも、愛犬の健康管理をするためにドッグランを走らせたいというニーズが顕在化していますね。4つ目は卒業旅行やバースデーといった若者のハレの日需要も生まれています」

 なかでも、ペットツーリズムは色々と変化しており、大型犬専用の大きなドッグランに興味を持つ人も多くなっているそうだ。そのほか大型犬は夏、小型犬は春や秋と、犬種によって繁忙期が異なるのもドッグランの特徴となっている。

◆“手の届く別荘”で海外需要の取り込み

 最後に今後の展望を西垣さんにうかがうと「新しい別荘所有システム」を構築し、より多くの人が多様なバケーションを楽しめるように会員制リゾート事業を強化していきたいと目標を掲げる。

「シェア別荘については、月200〜300件の問い合わせが来ていて、手応えを感じていますね。日本全体で地価や建築費の高騰するなか、今までにないシェアの形で“手の届く別荘”を提案していければと考えています。

 また、海外需要を取り込んでいく上では、ただ建物が立派なだけでは不十分だと思うんですよ。宿泊前後の時間の過ごし方や食事、独自企画のアクティビティなど、ソフトの部分も重要になってくるでしょう。他の事業者と連携しながら地域に根差した自然体験やコンテンツを創造し、日本のリゾート事業を盛り上げていきたい」

 アウトドアレジャーのひとつとして根付いたグランピングは、さらに進化を遂げていることが取材を通して見えてきた。非日常感を味わえる宿泊体験こそ、グランピングならではの楽しみであり、また行きたくなる“魅力”なのかもしれない。

<取材・文/古田島大介>

【古田島大介】
1986年生まれ。立教大卒。ビジネス、旅行、イベント、カルチャーなど興味関心の湧く分野を中心に執筆活動を行う。社会のA面B面、メジャーからアンダーまで足を運び、現場で知ることを大切にしている