27歳女性が「上場企業の新社長」に就任…華々しいスタートも、波乱の予感が
しかし、これだけで立て直しを図るのは難しいでしょう。
◆しきりにタイムセールを行っているが…
2024年8月期第3四半期累計の売上高は22億6100万円。従業員の給与、店舗運営などに必要な業務委託費、地代家賃が12億円。原価とこれらの経費だけで赤字になってしまいます。他にも広告宣伝費や減価償却費がかかるため、実際の経費負担はもっと重いのです。
すなわち、ANAPは売上高を大幅に引き上げることができない限り、大幅な退店や人員整理を進めなければ黒字化を果たすのが難しいのです。
これはブランド力の低下以外の何物でもありません。安売りをしなければ、売れない状態に陥っているのです。何らかの大ヒット商品を企画しない限り、増収には期待できないでしょう。
◆様々な思惑がある中でリーダーシップを発揮できるか?
退店や人員整理は、投資ファンドのように大半の株式を取得し、非上場化した上で陣頭指揮を執るのであれば、スムーズに進めることができます。しかし、創業者の家郄利康氏は社長から外れるといっても、2024年2月末時点では15.8%の株式を保有する筆頭株主。会社への支配力は依然として強く、一定の配慮が必要でしょう。しかも、今回は上場を維持したまま立て直しを図らなければなりません。
ANAPの取締役として新たに就任するのは、若月氏とネットプライスの会長を務める立川光昭氏、その他3名です。経歴を見る限り、若月氏以外は立川光昭氏と関係が近い人物。役員体制はネットプライス色が強く出ていると言えるでしょう。
クリエイティブ担当として若月氏と共同で会社を経営していた山村藍琳氏が参画するものの、役職は執行役員。アパレル担当や専務執行役員、事業再生担当もすべて執行役員です。経営に関する意志決定に入ることができません。
27歳の若月氏が、経営難易度の高い会社の立て直しをいかにして図るのか。その手腕に注目が集まります。
<TEXT/不破聡>
【不破聡】
フリーライター。大企業から中小企業まで幅広く経営支援を行った経験を活かし、経済や金融に関連する記事を執筆中。得意領域は外食、ホテル、映画・ゲームなどエンターテインメント業界