自分のことで、いつまでも受け入れられずに悩んでしまうことはだれしもあるもの。ネガティブな感情ほど、人に相談するのがはばかられることも。ここでは、女性たちのさまざまな悩みに向き合ってきた産婦人科医・高尾美穂先生に、マイナスな感情とうまくつき合うためのヒントを教えていただきました。

周りと比べてネガティブになってしまう

お悩み「あの人の方が評価されている、給料が多い、あの人は結婚しているのに私は独身など、職場で周りと比べてネガティブな気持ちに。そうならないためになにを心がければいい?」

●自分自身による評価にも目を向けて

人と比べて自分が勝っていると感じるのが「優越感」、劣っていると感じるのは「劣等感」。どちらも人と比べること自体が、前向きではありません。なぜかというと、自分の軸が人にあり、人と比べることによって自分自身を保っている状態だからです。

私たちは社会において常に評価されながら過ごしている、これはたしかです。たとえば、昇進するかどうか、昇給するかどうか、ひとつひとつのお客さんとのコミュニケーションですら、今は口コミといった形で評価されたりもします。

では、私たちは周りからの評価をどう受け取ればいいのでしょうか。自分自身による評価と周りの評価とを見比べたときに、「自分が思っている評価に近い評価を、周りからも受けられているか」という点に、目を向ければいいのです。たとえば、お客さんとのコミュニケーションがイマイチだったと思うのであれば、イマイチな口コミをもらってもしょうがないなと受け取る。もし自分でよくできたと思った仕事に対して、上司からも同じ評価をいただけたのであれば、ちゃんと見てもらえているんだなと受け取る。ネガティブな気持ちをもってはいけないということではなく、私たちの素直な気持ちだからこそ、自分で受け止める。

そのうえで、さらにネガティブな感情を抱かないようにするには、周りと比べるのではなく、もし比べるのであれば、以前の自分と比べること。周りの芝生は青く見えますが、自分の庭の芝生を青くするのは自分以外にいない。ぜひ、いいなと思うような本を読んだり、映画を見たりして、自分の感情を豊かなものにしていってくださいね。

不安な気持ちを前向きにきり替えるには?

お悩み「私は不安傾向が強く心配性です。自分の意見を伝えるのが怖く、伝えたときは言うんじゃなかったと後悔。自信がなくマイナス思考な私に気持ちのきり替え方を教えてください」

●「新しいチャレンジ」と「自分の強み探し」を

人の反応を気にしてビクビクしながら過ごしておられるのではないかと思います。こうした生活は本当に疲れますよね。ご自身もおっしゃっていますが、自信がないというところがいちばんのポイントだと思います。自信をもてるとよいですよね。

自信をもつために私自身がどんなことを意識しているかというと、まず1つ目は「新しいことにチャレンジすること」です。普段していることはいずれできるようになります。たとえば、自転車に乗れなくてもずっと練習していれば乗れるようになりますよね。こうしてできるようになると慣れてしまい、できる喜びを感じなくなる。だから次なる新しいチャレンジに挑むのです。

もう1つ自信をもつために大事だと思うのは、「自分にとっての強みがなんなのかを自分なりに考えてみること」です。私自身の強みはなんだろうと考えると、継続力や知的好奇心の広さ、想像力だと自分では思っています。そこに実践力、やってみる行動力が重なって今に至っていると思います。こういった自分なりの強みを、できれば3つぐらいはイメージしてみるのがいいのではないでしょうか。

さらに、お友達やご家族に「私のいいところってなんだと思う?」と聞いてみるのもありだと思います。ご自身の強みを把握することでそれを自信ととらえられますし、幸福度も上がります。だんだんと不安な気持ちも落ち着いてくると思います。

モチベーションが続かないときは?

お悩み「目の前のことに追われて、心身が疲れ気味。仕事も家のことも、モチベーションが続きません。こんな生活をリフレッシュさせるなにかよい方法はないでしょうか」

●「非日常の時間」を年間計画に散ちりばめましょう

そもそもモチベーションをもたなくてもできる状況が望ましいですが、あえて言うなら少し先に楽しみな予定があると、その楽しみに向けてがんばれるのでおすすめです。2か月に1回くらい、自分の楽しみを用意しておくといいですね。行きたいな、したいなと思うことをイメージして、それをいつぐらいにしようかなとか、だれを誘おうかなとか考えるのは楽しいものです。

私は年の初めに年間スケジュールを立てています。学会を含め、お出かけの予定などを手帳に書き、前もって楽しみを散りばめておくんです。春であれば桜を見に行こうとか、この月は〇〇のライブに行こうとか、この頃は海やプールに行こうとか。こういった「非日常の時間」をぜひ年間計画に散りばめていただくとよいと思います。

とはいえ、時間を要するお出かけや旅行は、普通になんとなく生活していると、なかなか計画できないと思います。思いきらないとなかなか行けないですよね。私は先日、念願だった神有月の出雲へ行ってきました。これは1年間「この日にはほかの予定は絶対に入れない」と自分で決めて、どうにか行くことができたんですよね。

時間って自分の望みだけでは確保するのは難しいと思います。たとえば、お子さんの学校の予定が入るといったこともあるでしょうから。でも、自分でイメージしないかぎり実現することはないので、ぜひいろんな楽しみをこの先の1年にちりばめていただくといいかなと思います。そんな楽しみが、気がつかないうちに日常のモチベーションになるのではないでしょうか。