岸田首相、最後の戦没者追悼式 式辞で消えた「積極的平和主義」
79回目の終戦の日にあたる2024年8月15日、東京・北の丸公園の日本武道館で政府主催の全国戦没者追悼式が行われた。
岸田文雄首相は8月14日、9月に行われる自民党総裁選に出馬しないことを表明したばかりで、首相としては最後の式典参列になった。
例年、岸田氏が天皇陛下の「おことば」に先だって述べてきた式辞の内容は、多くを菅義偉前首相、安倍晋三元首相のものを踏襲してきた。今回は、3年目にして安倍氏が提唱した「積極的平和主義」という言葉が姿を消し、「法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序」というフレーズが登場した。
天皇陛下「おことば」、引き続き「深い反省」
天皇陛下の「おことば」は、23年に4年ぶりに「新型コロナ」の文言が消え、19年の「コロナ前」とほぼ同じ文言に戻った。24年も同様の内容を踏襲。引き続き「深い反省」の文言も盛り込まれた。
岸田氏の式辞で、比較的大きな変化があったのが終盤だ。23年は
「戦争の惨禍を二度と繰り返さない。この決然たる誓いを今後も貫いてまいります。未だ争いが絶えることのない世界にあって、我が国は、積極的平和主義の旗の下、国際社会と手を携え、世界が直面する様々な課題の解決に、全力で取り組んでまいります。今を生きる世代、そして、これからの世代のために、国の未来を切り拓いてまいります」
などと、安倍政権から続く「積極的平和主義」の文言が盛り込まれていた。
これに対して24年は、次のように「法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序」「人間の尊厳」の2つのキーワードが強調された。
「『人間の尊厳』を中心に据えながら」
「戦争の惨禍を二度と繰り返さない。戦後79年が経ちますが、歳月がいかに流れても、この決然たる誓いを、世代を超えて継承し、貫いてまいります。未だ悲惨な争いが絶えることのない世界にあって、我が国は、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化を進め、『人間の尊厳』を中心に据えながら、世界が直面する様々な課題の解決に、全力で取り組み、国の未来を切り拓いてまいります」
式典には天皇皇后両陛下、岸田氏、97歳から3歳までの遺族らが参列し、日中戦争と第2次世界大戦で犠牲になった約310万人を追悼した。
(J-CASTニュース編集委員 兼 副編集長 工藤博司)