とちぎテレビ

太平洋戦争の終戦から15日で79年になります。

戦争を体験した人たちの高齢化が進み、当時を知る人が年々減り続ける中、記憶の継承が課題になっています。

こうした中、記憶を語り継いでいこうと宇都宮市の高校生たちが演劇を通して戦争の悲惨さを訴えました。

7月に宇都宮市の文化会館で開かれた市内の高校の演劇部による発表会です。

会場で作新学院高校の演劇部が演じたのは長野県の教員、郷原玲さんの脚本「話半分」です。

太平洋戦争末期、「いつも話を半分しか聞いていない」ような性格の電話交換手・ミドリと兵士として戦地に行ったシゲルとの電話を通した交流を中心に描かれています。

戦争をテーマにした脚本を演じると決めたのは生徒たち自身でした。

アメリカ兵などを演じた田中颯輝さん「部員たちでこの脚本を選んだ」

顧問の高梨 辰也先生「普段は私が選んでいる失われていくものに手を伸ばす姿勢が嬉しかった」

ミドリを演じた齋藤花梨さん「死人に口なし?生きている人に聞く耳がないだけ」

ミドリの片方の耳は聞こえず、代わりに死者の声が聞こえることが物語の終盤で明かされます。

齋藤花梨さん「死者の声が聞けるという普通ではありえない人の表現を頑張った。調べたことを伝えられるように演じた」

過酷な戦地で常に「死」と向き合い続けるシゲルを演じた伊藤壮良さん「戦争を知る人が減って記憶が薄れている。語り継ぐという気持ちで頑張った」

会場に訪れた人たちは、生徒たちの熱演に惜しみない拍手を送りました。

観客に戦争の恐ろしさ、悲しさを伝えたい。

当時の人々の生活により近づけるため、衣装の一部は戦時中や戦後の頃、実際に着られていたものを使いました。

この衣装は太平洋戦争末期に旧岩舟村、現在の栃木市岩舟町に集団疎開した児童と地元住民の交流を描いた市民参加ミュージカルに顧問の高梨辰也先生が出演していた縁で借りることができたといいます。

ここまで力を入れた理由は高校生の自分たちが演じることに意味があるからだと部長の青木紅蝶さんは話します。

青木さん「自分たちと同じような年の子がたくさん犠牲になったことを伝えたい」

演劇を通して戦争と向き合うため、太平洋戦争について改めて学んだり、当時の日本の生活や文化を調べたりと、部員一人一人が「話半分」の舞台とは直接関係ない部分まで理解を深めました。

生徒たちは県内各地の演劇部に所属する中学生に対し演劇の指導をする講習会でもこの「話半分」を演じました。

この作品のメッセージを最大限に表現するため、演じ方や舞台装置にどのような工夫をしたか…

中学生たちも、演劇の技術とともに戦争に対する思いを感じ取ったようでした。

戦争の体験を語り継げる人が減り続ける中、高校生が当時の暮らしを学び、感じて戦争の悲惨さを伝える……。

終戦から79年。戦争を知らない世代に平和のバトンが受け継がれています。