TVアニメ『ハズレ枠の【状態異常スキル】で最強になった俺がすべてを蹂躙するまで』のOP主題歌「Hazure」を担当する超学生に、楽曲へ込めた想いを聞く

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Web小説投稿サイト「小説家になろう」から誕生した“なろう小説”のひとつであるノベル「ハズレ枠の【状態異常スキル】で最強になった俺がすべてを蹂躙するまで」(以下:ハズレ枠)が、2024年7月からTBSほかにてTVアニメ化。そのOP主題歌「Hazure」を担当しているのが、ベネチアンマスクがトレードマークとなっている超学生だ。

物語は、ある日突然クラスメイトたちが異世界に召喚され、主人公の灯河が最低ランクのE級勇者として廃棄遺跡に放逐されるところから始まる。その後、灯河は「ハズレ枠」と称される「状態異常スキル」を駆使して最強へと成り上がっていく。今回は、辻村有記とTHE ORAL CIGARETTESの山中拓也が制作したOP主題歌「Hazure」の魅力や、アニメ「ハズレ枠」の世界観について、超学生にじっくりと話をうかがった。

INTERVIEW & TEXT BY 小町碧音

なろう小説もボカロと変わらないところがある

――最近の超学生さんについて、おうかがいしたいです。前回、TVアニメ「カワイスギクライシス」のOP主題歌「スペースキャットビッグバン」をリリースされてから、どのような日々を過ごされていましたか?

超学生 昨年はライブがあったので、準備や本番の周辺では投稿できないことが多く、月によってはまるまる1か月投稿ができない時もありました。今年はその反動もあって、とにかくたくさん投稿しようと思っています。毎週1本のペースでYouTubeに動画を投稿するようにしていて、その結果、家にいる時間が段違いに増えたのが大きな変化ですね。

――超学生さんのトピックとして、今年5月6日に「超学生の腕そのもの握手会」を開催されたことがあります。今話題の新しい握手会ですね。

超学生 はい、実は3年くらい前から生配信で「腕だけの握手会をやってみたい」とずっと言っていて。でも当然、そんなの簡単にできるわけがなくて(笑)。それが最近、EP『MAR6LE』の特典として何かイベントをやらないかという話がレーベルからあり、試しに「腕だけの握手会をやりたい」と言って、形になりました。それだけのことです。

――やってみたいと思った理由は何だったのですか?

超学生 本当に特に理由はないんですよね。強いて言うなら、「なんでこんなことするんだろう」って思ってもらえたら、それが狙いというか(笑)。配信でもそんなことばかり言ってるので。例えば、グッズも手をそのまま印刷したハンカチとか、最近だと指がアクスタになったりしてますけど、それも特に理由はなくて。

――そういう不思議なものに惹かれてしまうのですね(笑)。

超学生 仲良くしてくれているインターネット活動者の友人が、「なんだ、これ」って言いながらグッズを買ってくれたのは、面白かったですね。あと、普段はそんなに話をしない上司からも「これは何?」って聞かれて、「超学生の指です」って説明できたのが面白かったという反響もありました。変なグッズがなぜか一番売れるのが超学生なので、引き続きそういうものを出していきたいなって改めて思いました。

――それにしても、腕だけとなるとできることも限られる?

超学生 全然そんなことはなくて、むしろ普通の握手会よりいろんなことができるんですよ。サインも書けるし、恋人つなぎもできるし、動画も撮れるし。特殊な手法で僕からもしっかりみんなのことが見えていたので、言葉は発せない代わりに、見せてくれるものに対して応えることができました。かなり、いろんなやりとりが腕を通じてできた握手会だったと思います。なので、「腕しかなくて喋れないから意味ないじゃん」という意見を目にすると、「しめしめ」と内心、思っています。僕たちしか知らないやりとりがいっぱいあるのに、と(笑)。

非日常感を味わったMV撮影

――今回、OPテーマを担当されているTVアニメ「ハズレ枠の【状態異常スキル】で最強になった俺がすべてを蹂躙するまで」は、Web小説投稿サイト「小説家になろう」から誕生した作品と聞いています。「小説家になろう」で生まれた作品を“なろう小説”と言い、なかでも多く投稿されているのは異世界系とのことです。もともと異世界が舞台の作品にご興味はありましたか?

超学生 普段から意識して読もうとはしていなかったですね。でも、改めて思い出すと意外と読んでいるかもしれないと気づきました。例えば、なろう小説出身で有名な「転スラ(転生したらスライムだった件)」とか、最近だとなろう小説ではなく他の異世界ものとも少し違いますが、「ダンジョン飯」。あれも異世界ものですが、戦いをするわけではなくてちょっと特殊な感じです。他にも「ドラゴン、家を買う。」もいわゆるスタンダードな異世界ものとは違うかもしれないんですけど、意外と無意識に好んで読んでいたのかもしれないなと思いました。

――「ハズレ枠」も異世界ものと言いつつ、特殊な部分もある気がします。

超学生 そうですね。僕の認識だと多かったのは、冴えないモブみたいな人生を送っていた主人公が交通事故とか何らかの理由で亡くなって、異世界で若干違う自分に生まれ変わって、亡くなる前の記憶をもとに無双するイメージでした。そのイメージがあったので、「ハズレ枠」を読んだ時に、「こういうのもあるんだ」とちょっと新鮮な気持ちになりました。今回は、全員が急にそのままの姿で異世界に転移させられて、それぞれの持つスキルを駆使して戦うという設定です。その後、なろう小説のことを調べていくと、最近はこういう展開も多いと知って。なろう小説もトレンドがあって、時代とともに移行していくのは面白いなと思いました。友人と「ボカロ曲とかと一緒で、流行っているものが1個ドンってあると、それを避けて新しいものに移行していくんですよ」と話していました。例えば、「転スラ」が流行ると、似た展開の作品が登場した時に「これ転スラみたいだね」と言われるのを作家さんたちは避けたいんですよね。これってボカロや歌ってみた、イラストレーターなど、どこでも同じで、トレンドがどんどん移行していくんだなとすごく感じました。

――その逆もありますよね。

超学生 もちろんです。例えば、僕が歌ってみたを始めた10年前ぐらいは、J-POPに寄せた作風が多かったんです。4年前ぐらいには、どろどろしたダークな闇系の曲が流行っていました。でも最近は、ちょっと可愛い曲が流行っています。例えば、HoneyWorksさんの作るキラキラとした青春ソングや、女の子っぽい曲ですね。2021年にはKAMITSUBAKI STUDIO所属のVシンガー・花譜さんの声をもとにした音楽的同位体”可不”が登場し、昨年4月には重音テトの新しい音源「Synthesizer V AI 重音テト」が出てきたこともあり、ふわっとした可愛い曲が流行った印象です。最近のメガヒット曲「メズマライザー」は重音テトと初音ミクの曲ですし、「オーバーライド」も重音テトの曲です。これらから、重音テトを中心とした可愛い曲ブームへの移行を感じることができますね。

――さすが、しっかりボカロのトレンドをおさえていますね。OP主題歌「Hazure」は、主人公の灯河視点の楽曲になっています。辻村有記さんとTHE ORAL CIGARETTESの山中拓也(Vo/G)さんが制作されていますが、このお二人の印象はいかがですか?

超学生 THE ORAL CIGARETTESの山中さんの曲は今まであまり聴いてこなかったので、最初はどうなるんだろうと思っていました。ただ、僕の中の印象としては、メロディーラインがすごく独特で、耳に残るなと思っていました。今回、辻村さんのメロディーに山中さんのメロディーが合わさったサビ周辺で、「これぞ、THE ORAL CIGARETTESのメロディーだ」と感じました。かなり個性が入っていて、すごく嬉しかったです。光栄だなと思いました。辻村さんに関しては、前回僕のオリジナル曲「Fake Parade」でご一緒したんですけど、1曲通してずっとノれる特徴があるなと思っていました。どこを聴いてもずっとサビのような疾走感があるのが特徴です。今回もその要素がふんだんに入っていて、すごく嬉しかったです。そこに山中さんのパワーも加わって、サビではさらにもう一段階爆発する感じがあって。AメロやBメロで左右からいろんなセリフが入っていたり、Bメロで面白いことをしているのは辻村さんのセンスだなと思いました。このお二人に作っていただけたのは、すごく良かったと思います。

――レコーディングはどのように進めていったのですか。

超学生 前回の「Fake Parade」のレコーディングでは辻村さんに立ち会っていただいたんですけど、今回は自宅Recでしたね。辻村さんの直接的なアドバイスはなく、楽曲から辻村さんの声を聴きながら録っていくだけだったので、すごく難しかったです。でも、前回ご一緒した経験が、生きたんじゃないかと思っています。

――楽曲はもちろん、制作されたMVも「ハズレ枠」の世界観に寄り添った不気味さと見応えのある仕上がりでした。どのようなことを提案されたのでしょうか。

超学生 僕からは、「カジノ+異世界」みたいなテーマと衣装の提案をしました。特に、2人の着ぐるみに関しては不気味に見えてほしいと提案しましたね。一般的に着ぐるみは可愛いと思われがちですが、カジノと組み合わせることで、かなり異質な存在に見せたかったんです。

――カジノが浮かんだ理由は?

超学生 正直、曲調が大きいですね。辻村さんたちの音の雰囲気からカジノでディーラーをやっている絵が浮かびました。それに、アニメのタイトルが「ハズレ枠の」ですし、楽曲タイトルも「Hazure」なので、ギャンブル性のあるカジノのイメージが合うなと思いました。

――なるほど。MVでは、生々しさや強さを表現されていましたが、演技してみていかがでしたか?

超学生 カジノでめちゃくちゃ負けて終わっている人を演じる指示があったんです。でも、僕はギャンブルもしないし、失敗した時に大騒ぎすることもない。なので、全く自分とは違う人物を演じる感じが、すごく新鮮で楽しかったです。

――ダークな世界観の中で見事に一人二役演じられていましたね。

超学生 主人公の性格的に、不満や抑圧された想いを感情的に叫ぶ感じにしたかったんです。でも、アニメを見ていただくとわかる通り、アニメの主人公の灯河は過去やトラウマ的な部分が大きいんです。自分の中で考えていることや野望など、内側の要素も大事に歌いたかったので、その二つをうまく混ぜながら意識してレコーディングしました。

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超学生の状態異常スキルとは?

――「ハズレ枠」は、主人公の内面的な部分が、超学生さんの隠した部分(ベネチアンマスクをまとっている)と共通しているように感じました。

超学生 うーん、結構逆な性格な気はしています(笑)。召喚される前の灯河には共通点も少し感じますね。僕も思っていることがあっても、なるべく周りに溶け込んで「俺は壁です」みたいに振る舞うことはありますし。ただ、召喚された後の灯河の残虐性が剥き出しになっていく感じは、僕にはあまりない部分。大きな野望とかも別にないので、そこは真逆かなと思います。環境が変わったことで自分の中のものを爆発的に変えられるのは、ちょっと面白いですよね。

――灯河が本来の自分を剥き出しにしたように、超学生さんにもこれまでで大きく気持ちが変わったタイミングはありましたか?

超学生 ぬるっとやってきちゃいましたからね(笑)。強いて言うなら、中学生の時にバスケ部で部長をやっていて、大会になると自分の性格とか関係なく、チームを引っ張ったり鼓舞しないといけない場面がありました。しっかり言わないといけない部分もあったので、普段の自分とは違う自分を出すという経験はそれぐらいですね。今の活動とは全然関係ないかもしれないですけど、それぐらいしか思い当たりません。多分、灯河のように内側に何かを持っていて、それを出せていない状態から殻を破って本来の自分が出てくるというのが彼のパターンだと思うんです。僕は、お酒をいっぱい飲んでも変わらないと言われることがあって、20代入りたての頃に先輩の歌い手に「それは限界を超えてないからだよ」と言われたことがありました。それでいつもより多めに飲んでみたのですが、ちょっと眠くなるだけで変わらなくて(笑)。お酒で人が変わる時って、リミッターが外れて本来の自分が出てくると言われますよね。なので僕は、根本的に内側にそういう強いものがいないんだろうなって思っています。

――とは言え、そんな超学生さんが夢中になれるものもありますよね。

超学生 逆に、普段のSNSとか配信ではめっちゃ頑張っている感じかもしれないです(笑)。僕の場合、素のままでいるとX(Twitter)も告知だけになるし、配信も「今日はご飯食べに行きました!」とかのシンプルな内容になるので、やっぱり活動自体はブーストをかけて頑張っていると言えますね。

――覚醒している状態が超学生さんだと。そう考えると面白いですね。灯河が取得したスキルは、「ハズレ枠」と称される「状態異常スキル」でした。超学生さんは、持ってはいるものの、全く役に立っていないスキルをお持ちですか?

超学生 僕、明晰夢が見られるんです。

――「自分は今夢を見ている」と自覚しながら見る夢のことですね。

超学生 そうです。夢の中で自由に動ける夢を見ることができるんです。明晰夢を見られる人の中には、好きにいろんなものを生み出せる人もいるみたいですけど、僕の場合は、普段の夢と同じようにいろんなことが起きている中で自覚して動くことができるだけなんです。悪夢と呼ばれるような変な気持ち悪い夢もありますし、明晰夢を見るためには一回金縛りに入らないといけない。そもそも明晰夢を見ている時って脳が休まっているわけでもないので、わざわざ自分からやろうとは思わないですね。普通は「舌がこういうふうに動かせる」とか「瞼がこうできる」みたいな話が出てくると思うんですけど、日常にまで至らない、ただ夢の中だけで生かせるスキルという感じです。

――ある意味で、役に立つ場面が極小に限られる最強スキルですね(笑)。覚醒した自分とは少しニュアンスが異なりますが、超学生さん自身が本来の自分になれる時はどのような時でしょうか。

超学生 もはや「本来の自分とは?」っていうぐらい、人生の半分以上が超学生なので難しいですけど、実家にいる時かなと思います。先日、父と一緒にフィルムコンサートに行ったんです。映画を流しながらBGMをオーケストラが演奏してくれるコンサートです。家族と話している時とか、実家にいる時が一番何も考えていないかもしれないですね。僕の家は、制作部屋そのものなので、家に一人でいる時は、常に超学生でいることになります。割と気楽に活動しているほうだと思いますけど、その中でもさらに何も考えていないとなると、実家かなと思います。

――最後に、「ハズレ枠」の視聴者さんにメッセージをお願いします。

超学生 このアニメをご覧になっている方は、異世界舞台作品のファンの方か、声優さん・主題歌を聴いてくださったファンの方が多いと思います。何らかの人物のファンでこの作品を見てくれた方には、ぜひ原作も読んでほしいです。なろう小説は無料で読めるというのがとんでもないことですから、ぜひ読んでいただきたいです。アニメとは違う部分もたくさん書かれているので、一つのファンコンテンツとして楽しめると思います。異世界作品が好きで見てくれた方は、楽曲のアニメではカットされてしまっている部分の歌詞や音などにも注目してほしいです。例えば、「Hazure」楽曲の2番には山中さん、辻村さん、そして僕の個性がたっぷり入っていて、みんなが大暴れしている面白い部分が詰まっています。興味があれば、ぜひフルで聴いていただけたらと思います。

●楽曲情報
超学生
「Hazure」
歌:超学生
作詞・作曲:辻村有記/ 山中拓也(THE ORAL CIGARETTES) 編曲:辻村有記
配信中

配信リンクはこちら
https://lnk.to/Hazure

●作品情報
TVアニメ『ハズレ枠の【状態異常スキル】で最強になった俺がすべてを蹂躙するまで』
2024年7月4日毎週木曜日24時59分よりTBSほかにて放送中

関連リンク

TVアニメ『ハズレ枠の【状態異常スキル】で最強になった俺がすべてを蹂躙するまで』公式サイト
https://hazurewaku-anime.com

超学生オフィシャルサイト
https://chogakusei.com/