とちぎテレビ

17世紀のイギリスでは絵本は「大人の読み物」でした。その後、子ども向けが作られるようになり、「美しく楽しい絵本」が数多く生み出されていきます。栃木県宇都宮市でそんな絵本の歴史を紹介する企画展が開かれています。

色鮮やかに描かれた挿絵の数々。うつのみや妖精ミュージアムで開かれている「イギリス妖精絵本の歴史展」です。

17世紀から19世紀にかけて作られた「チャップブック」と呼ばれるポケットサイズの絵本は大人向け、中でも庶民向けで、木版画の挿絵を入れることで見栄え良く読みやすくしたものです。物語以外にも旅行記や道徳を説くものなど、バラエティに富んでいます。

絵本が子ども向けになるのは19世紀に入って本が普及し、産業革命で地方から都会に人が出てくるようになってからで、美しく楽しい「トイ・ブック」が人気を集めていきます。当時はカラー木版で表紙や扉絵などをデザインする「ブックデザイナー」が登場。この時期活躍したリチャード・ドイルは「シャーロック・ホームズ」の小説で知られるコナン・ドイルのおじで、今でいう人気のイラストレーターでした。大人からも愛される作品が生まれ絵本や挿絵の地位が向上した時代です。

その後、イギリスでは本当に美しいもので生活空間を飾る「アーツ&クラフツ運動」が起き、絵本もその影響を受けていきます。そして19世紀から20世紀にかけてはカラー印刷が導入され、「挿絵黄金期」が到来。シェイクスピアの「夏の夜の夢」などロマンチックな妖精画も描かれ、見る人を空想の世界にいざなってくれます。この企画展は無料で9月1日まで開かれています。