《夏休み1か月あって年収900万円!?》日本で一番ホワイトな職場で“天国”とウワサの大学職員…「休みは多いし、精神的プレッシャーはありませんが…」それでも離職する人の言い分とは

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7月下旬に入り、学生たちは長い夏休みに入り始めた。学生の長期休みの中でも夏休みがダントツで長いのが大学生。約2か月間もある大学がほとんどだ。ところで、この休みの期間に職員たちはいったい何をしているのだろうか。

「市民や議員の相手がないだけで天国」という公務員からの転職した人の声も…

「1番ホワイトな職業は間違いなく私立大学職員」

大学には講義やゼミを受け持つ教授たち教員とは別に、事務作業などで生徒や教授たちをサポートする職員たちがいる。実は、この“大学職員”という仕事が、国内でもトップクラスに“超ホワイト”な職場ではないかとSNSで話題になっている。

今年2月も、〈1番ホワイトな職業は間違いなく私立大学職員です。夏休みは2カ月、冬休みも3週間、春休みも1カ月ほど休め、年収も27~8歳で550万らしい。死ぬほど羨ましい〉というポストがXで180万以上のインプレッションを稼ぐ万バズを記録。真偽は定かではないものの、多くの注目を集めた。

そこで、実際に大学職員をしている人に話を聞いてみることにした。取材に答えてくれたのは、SNSで大学職員に関する情報を発信していて、自身も大学職員の「暇な大学職員(@univadm)」さんだ。

まず、そもそも大学職員は普段、どんな仕事をしているのだろうか。

「私は学生支援部門に勤務していて、学生に関する支援系業務を幅広く担っています。例えば、4月には大学サークルの登録受付をして、夏には部活動の合宿日程の管理や保険加入状況の確認、秋には学校祭の実行委員との打ち合わせと周辺地域や行政との調整、冬以降は春に始まるサークル・部活動の新入生歓迎企画の調整など、学生と関わることが多い部門ですね。

特にサークル関連の仕事は、サークルの組織率がコロナ以降かなり下がっている中でも、あえてサークル活動をやろうとしているポジティブな学生たちが相手になります。なので彼らとの仕事は、民間企業や公務員の客先対応のような堅苦しい側面はありません。ただ、最近ではサークル団体のSNS炎上や飲酒・喫煙の通報(合宿先であるホテルからの苦情)など、ちょっと困ったものもありますが……」(暇な大学職員さん、以下同)

今や55%を超えるという日本の大学進学率だが、この中で何人の学生が大学職員の仕事を把握しているだろうか。大学職員は、縁の下の力持ちとして、大学生のことをサポートしてくれていたのだ。しかし今回、聞きたいことはやはり、その“超ホワイト”な勤務形態。果たして、ネット上でウワサされていることは事実なのだろうか。まずは年間の休日数だ。

夏休みが25日もある職場も…!

「土曜出勤もあるので、年間休日が〇〇日とカッチリと決まっている訳ではありません。ただ、だいたい平均すると年間休日が120~125日程度+有給休暇という感じになります。営業職ではないのでグループのノルマなどもありませんから、有給休暇は各自が好きに取得しています。

ただ周囲を見ると、平均取得率は60~70%程度でしょうか。学園本部などに働くことが大好きな働きマンがいるので、そのような人を含めた平均は法人全体で50%ぐらいになると聞いたことがあります。NTT系のように100%の消化が基本線というようになってほしいです」

なんと、意外にも休日数自体は、平均的な日本企業とあまり変わらないようだ。学生のように長期の夏休みや春休みがあるというウワサは嘘だったのだろうか。

 「大学の繁忙期は1~4月がピークとされていることが多く、休みの過ごし方は夏と春でかなり異なります。まず春は、4月の入学者対応に向けた準備があるので、学生たちが春休みであっても、職員たちに長期の休みがあるということはなく、カレンダー通りです。12月~2月の冬休み期間も、年内入試や一般入試がありますから、その時期も長期休みはありません。

一方で、夏休みは繁忙期でもないので、長期の休みがあります。例えば、東洋大学は夏休みが25日、明治学院大学は21日、東京女子大学は16連休など、大学の中途採用サイトにも日数が書いてあったりします。

周囲の大学職員を見ているとイメージとして、土曜日出勤のある大学はその分夏休みが長め、完全週休二日制の大学だと2週間ぐらいはある印象でしょうか。

ただ、国立大学などは少ないようで、土日+3日程度とも聞きますね。つまり、大学職員といっても大学によってかなり異なり、夏休みの長さはピンキリと考えていただくのがよいかと思います」

 超ホワイトな大学職員から離職する人とは…

どうやら、大学生と同じだけ休みがあるというのはさすがに誇張のようだ。しかし、社会人という立場でありながら、“夏休み”があるのはやはり魅力的。これだけでも、唯一無二のホワイトな職場と言えそうだ。

さらに年収は、30歳くらいで650万円、30代後半で900万円になることもあり、基本的には年功序列で上がっていくシステムだという。給与面だけ見ても、平均よりかなり高く、やはりホワイトとしか言えない大学職員。いったい、どんな人が働いているのだろうか。

「前職が金融機関など、数字が厳格な職場だった人も多く、そういった人たちは、『ノルマや目標がなくてこんなにも精神的にプレッシャーがない職場があるのか!』と感動していますね。月末だから数字どうしようとか、1Q終わったから明日は2Qのスタートダッシュ的な、ずっと走らされている感覚は確かに皆無です。

また、関わる層も『大学教員』という高学歴の環境でトレーニングを受けてきた人たちですから、接しやすいです。当初は大学教授は変な人が多いと思っていましたが、最近の若手教員などはコミュ力が高くて優秀で、素晴らしい人材の確率が高いのでやりやすいです。公務員から転職してきた同僚は、市民や議員の相手がないだけで天国と言っていました」

話だけを聞くと、本当に誇張抜きでパーフェクトなホワイト職と感じる大学職員。しかしそれでも、離職してしまう人はいる。その理由として挙げられるのが、“やりがい”だ。これを期待して職に就くと、離れてしまうケースがあるという。

「学生は元気ですし、一緒になにかイベントをやるとなったとき、それが成功するとやりがいになります。

ただ、大学における事務職員の決定権はそれほど広くないですし、基本的には前例踏襲主義の縦割り官僚組織なので、民間企業のビッグプロジェクト的なやりがいなどはないと思っておいたほうがいいと常々思っています。

また、やりがいからは外れますが、官僚組織にありがちな消極的権限争い(部門間での仕事の押し付け合い)も頻発しているので、学生と関わるような部門であればフレッシュさを感じてやりがいを感じると思いますが、関わらない部門では内向きな仕事がほぼ100%なので、やりがいは正直無いと思いますね。

なので、休みの多さや精神的プレッシャーのなさなどに価値を見出したほうが長続きします」

“やりがい”を仕事に求めるか求めないかで、大学職員という仕事への見方が大きく変わっていきそうだ。それでもワークライフバランスが求められる今のご時世では、大学職員になりたい人は今後、激増していくかもしれない……。

取材・文/集英社オンライン編集部